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21 火魔法?フィナにも出来るよ?

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

「あ、あの〜〜姫様?折角ですし〜?英雄君の魔法を見てみたいんですが〜」

 意地の悪そうな顔で、ニヤニヤしながら、そう言うのは、

 先程、詠唱しながら、火魔法を放っていた少年だ。


「アルティスのは、普通の魔法と少し違うし……そもそも時間が……」

「時間は気にしなくても、宜しいのですよ……」

 振り返ると、そこに学園長が立っていた。

「あっ!学園長!宜しいのですか?」

「ええ。私も彼の魔法を、見てみたいです」

「ですから、アルティスの魔法はちょっと……規格外ですし……」

 アルティスが、何か、やらかしそうで、フィオナは心配だった。


「うん?普通の魔法も使えるよ? 何をやったら良い?」

 少し悪意を感じる少年の言葉を、アルティスは、まるで意に介していない様だ。

「英雄君。さっき僕の火魔法を見て、驚いていた様だけど。

 君も、やってみてよ。出来るんでしょ?」

(うん、確かに驚いたよ?)

「火魔法?こう言うの?」

 無詠唱で、指先にスッと蝋燭程の火を出す。


「ぷぷっっ!何だい?その小っさな火は〜」

 無詠唱だった事にも気付かず、

 火の大きさだけに目が行き、生徒達の失笑が漏れる。


 そんな失笑を、気にもしないアルティスは、その火を指先でピンッと弾く。

 目では追えない程のスピードで、的に届くと……

 〝ド、ドッカ〜〜〜〜ン!!!〝

 小さな家なら、吹き飛ぶんじゃないかと言う程の爆発が起きる。

 的が有った場所には、10m程のクレーターが出来ていた。

 驚きの余り、(くち)をアングリ開け、言葉を失う生徒達。


「き、貴様、何か不正をしただろ!」

「貴様って貴方。アルティスは、白爵本人なのよ?

 爵位を継いてもいない、唯の貴族子息が、不敬ではなくて?少し口を慎みなさい」

「ぐっ……しかしこんなこと有り得ない……」


「アル、何?今のは?無詠唱だし……」

「ん?詠唱なんて必要ないよ?そんな事よりイメージと、マナのコントロール。

 そして素早く魔法を撃つ事が大事。

 フィナだって、魔族と戦ってた時、

 端折って〝ヒール〝としか言ってなかったじゃない?」

「……そうだったっけ?頭、真っ白になってたから、よく覚えてない……」

「イメージさえちゃんと出来れば、詠唱なんて必要無い。時間の無駄……

 それにさっきの魔法だけど……あれ普通の魔法だよ?

 皆んなと同じマナを使った火魔法」


「嘘だ!あんな威力……あんな小さな火で出せる訳ないだろ!インチキだ!」

「ん?これ? これは〜」

 指先に小さな炎を出す。それが次の瞬間1m程の火になる。

 そして又、少しずつ縮み、小さな炎に戻った。


「これは、お前達の言う所の土魔法?の要領で……

 さっきの火を、周りの空気と混ぜて……

 火が燃えるには、空気が必要だって知ってるよね?

 それらを混ぜて、小さく凝縮した物だよ。

 これを風魔法?で勢いよく的にぶつけると〜」

 〝ド、ドッカ〜〜〜〜ン!!!〝 

 またしても大きな爆発が起きる。


「も少し大きな火だと〜」

 空中に小さな家程の炎を出し、2〜3cm程に凝縮して空高く飛ばした。


 〝ドドドド!ドッカ〜〜〜〜〜〜ン!!!〝

 凄まじい威力の爆発が起こり、爆風で皆んなが、吹き飛ばされる。

 予測出来ていたフィオナだけが、アルティスにしがみつき、何とか無事の様だ。


「そんで〜更に大きな……」

「ちょ……待って待って待って〜」

 フィオナが叫ぶ。

「この辺一帯が、吹き飛ぶでしょ〜!」

「いや……空高〜く飛ばせば……」

「無理無理無理!止めて〜!」

「え〜 皆んなを、驚かせ様と思ったのに……」

「いやもう十分に驚いてるから…… 皆んな腰抜かしてるでしょ……」

「だって最初の位なら、誰でも出来る物だし……」

「出来る訳無いでしょ!」

「えっ?フィナにだって出来るよ?」

「いやいや、そもそも私、火魔法使えないから」

「ん?なんか皆んな勘違いしてるけど……

 そもそも属性とか分かりやすい様に、人が分類しただけで、皆んな(こだわ)り過ぎだよ?

 あの俺の魔法も、()えて言うとすれば火、そして土、風……

 それを複合させて、イメージしてるんだけど?」


「フィナ、人差し指を出して……

 それで俺の手の上の火を良〜く見て〜 頭に焼き付けて……

 体のマナを指先に集めて……いくよ?ハイ!!!」

 〝ポッ〝と小さな炎が、フィオナの指先に灯る。


「キャッ!出来た。何故なぜ何で?」

「目の前で見て、詳細なイメージが、出来たからだよ。詠唱も要らなかったでしょ?」

「でもイメージしたより小っさい……」

「マナがそれ程集まってないからだな…… マナのコントロール難しい?」

「う〜ん何となく、マナ?魔力の存在は分かるんだけど……」

「目に見えないから、マナのコントロールも出来ないか……

 そんじゃあ、可視化して見える様にしてあげるよ」


 アルティスは、フィオナの両手を、自分の両手でそっと掴む。

 するとキラキラ光るオーラーの様な物が見えてきた。

「見える?」 

 コクコクと頷くフィオナ。

「それがマナ。右回りに体中にゆっくりと移動させてみて?

 そうそう、そしたら、それを指先に集めて」

 フィオナの指先に、30cm程の炎が現れる。


「大きな爆発には、空気が必要だから……

 周りの空気と一緒にマナで包む……そうそんな感じ」

 炎を囲む様にフィオナのマナが1m程の球を描く。

「ギュ〜って圧縮するイメージ…… そう、上手い上手い」

「こ、これ以上は無理……かも?」

 力が入りすぎて、顔を真っ赤にしているフィオナ。

「うん。最初はこれくらいで十分。さあ今度は空気中に漂うマナを見える様にするよ」

 そう言って、そっと上を向くアルティス。漂うマナがフィオナにも少し見えて来る。


「フィナは、あれをコントロール出来るはずだよ。

 あれを使って風を起こす。それに乗せて炎を的にぶつける。 ハイッ!!!」

 アルティスは〝パンッ︎!!!〝

 手拍子を打ち、同時に大きな声で合図する。

 かなりのスピードで炎が飛び、的に当たった。

 〝ドッカ〜〜ン!!!〝

 アルティス程では無いが、見事な爆発が起きる。

「キャ〜キャ〜キャ〜」

 ピョンピョン飛び跳ね、喜ぶフィオナ。唖然とする生徒達。

「私が火魔法を使えるって……産まれてすぐに受ける、

 魔力の特性の判定って、意味あるのかしら?」

「向き不向きを、確認するには良いかもだけど、

 その子の可能性を潰しかねないから、どうなんだろうな?」


「あっ……ねえフィナ〜 この人、泡吹いて倒れてるぞ〜〜」

「あっ、学園長!大丈夫ですか〜?」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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