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18 水晶の少女、ユフィリナ

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

 地下3層。その空間は、負のエネルギーで満たされており、

 禍々(まがまが)しい黒い瘴気が、泉の中心に向かって渦を巻いていた。


「な、何だこれは?この黒い霧の様な物は、まるで生きている様ではないか!?」

「今朝はいつも通りだったわよね?……こんな状態ではなかったでしょ?」

 皆んなに同意を求めるフィオナ。驚きを隠せない王家の面々。


「さて、それでは主の啓示をお話ししましょう……」

 禍々しい瘴気の(うごめ)く、この状況を目の当たりにしてなお、冷静な枢機卿。

「実はですな……この中に魔族がすり替わっている者がおるようです。

 ユフィリナ姫、此方へ」

 嫌がるユッフィーの手を取る枢機卿。


「何をしておる!ちょっと待て!」

 そう言うリヴァルド王の言葉を無視して、

 ユフィリナの手を掴み、泉の中心に向かう。

 体が金縛にあったかの様に、身動きが取れなくなる王家の3人。

 振り返り不気味な笑みを見せる枢機卿。

「さてさて、魔族がすり替わっていたのは?

 そう私だったのですよ〜クフフ……

 泉の元となる雪山の雪解け水に、()のお方が溜めておられた、

 負のエネルギーの瘴気を、流し込んでいたのですよ?」


 恐ろしさに泣き叫ぶユフィリナを、泉の湧く台に乗せ、姿を変える枢機卿。

 その変化(へんげ)した姿は魔族そのもの。

 しかし何処か気品すら感じる……上級の魔族で有ることが(うかが)える。

「さあ、嘆き苦しむのです」

 そう言うと、その目が怪しく光る。

 禍々しい黒い瘴気が、枢機卿の持つ紫と黒の混じり合う不気味な色をした球に吸い込まれる。

 その瞬間、激しい爆発が起こり、それはユフィリナに向かった。


 神界からそれを見守っていた、創造神達には、

 その時、何やら光る人影が、ユフィリナの前に現れた様に見えた。


 枢機卿に化けていた上級魔族は忽然と消えていた。

 いや、多分自分で起こした爆発に、自分までもが、跡形もなく吹き飛ばされたのだろう。

 それ程の大爆発だった。


 崩れ落ちる王家の3人。

 ユフィリナの体が粉々に弾け飛んだ……一瞬そう見えた……

 しかし爆炎が落ち着くと見えてくる。

 そこには石と化した、ユフィリナの体が残っていた。


 翌日、本物の枢機卿の遺体が、教会裏の森の中で発見される。

 1ヶ月程すると、神聖を取り戻した聖なる泉の水により、

 石像となったユッフィーの体は、

 徐々に透明になり、美しい水晶の像へと変わって行くのだった。


 何故あの魔族はユフィリナだけを狙ったのか?

 王家を狙っていたのなら、

 簡単に全員の命を奪う事が出来たはず。……謎が深まった。


「枢機卿に化けた魔族は多分何者かにに命じられての犯行だろう……

 裏に何者かがいる」

「アルティス、お前、この件、何処まで知っておるのだ?」

「創造神、そして俺にも謎な部分が多いい……」

「そうか……でも何故ユフィリナだけが、狙われなければならなかったのだろうか?」

「何者かは分からないけど、奴は負のエネルギーを集め、力を蓄えている様なんだ。

 あの禍々しい枢機卿の持っていた玉も、それで出来ていた。

 あの時じいちゃんが言ってたのは……」


 ************************


「あのことを知っていて?いや……そんな訳はないな……

 アルが地上から居なくなり、

 エーテルの恩恵が減り天変地異が続き、人々に負の感情が溢れ出した。

 あの子……ユフィリナ?じゃったかの……あの子が誕生し、それが(おさま)った……」

「神の祝福をもたらしてくれたって、言われてたんだっけ?

 フィオナに似た、あの子、神聖力……エーテルが宿ってたね……」

「うむ……奴等は、世の中が平穏になるのを阻止したかったんじゃろ……」


 ************************


「国民から、神の祝福をもたらす聖女の様に崇められてる

 ユッフィーに何かあれば、国民が悲しみに浸る。

 天変地異も、また始まる。

 それに……そんな事にでもなれば、

 王国の主要人物で有る貴方達が嘆き苦しみ、

 あまよくば国民に当たり、悪政により多くの負の感情が(あふ)れる……

 そう言うのを狙ったんじゃ無いかな?ま、憶測でしかないんだけど」

「そんな……酷い……」

 そう言うフィオナの頬を伝わる涙を、

 人差し指でそっと拭きながら、アルティスが言う。

「王家が、貴方達の様な人達で本当に良かった。

 辛かったろうに、貴方達は平静を保ち、誰に当たる事もしなかった。

 ここの国民は幸せだ。」

「いや、それは何だ……」

 普段、揶揄(からか)い事しか言わないアルティスに、

 そう言われて頭を掻くリヴァルド王。

「お前に褒められると、なんとも、こそばゆい……やめてくれ……ハハ……」


「さて、話はそこまでにして、そろそろユッフィーを……」

「そろそろって?ま、まさか?」

 目を見開くエリザベス。頷くアルティス。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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