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16 神様からの授かりものユフィリナ

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

 祭りの翌朝、フィオナやエリザベス達と、

 楽し気に朝食をとるアルティスの姿があった。

 エリザベスは、まだ痩せ細ってはいるものの、

 肌の色は血色良く、すっかり体調を取り戻していた。

 エリザベスに呼ばれ、朝食を共にしているアルティス。

 アルティスの食べっぷりに、クスッと笑い、競う様にエリザベスも食べる。

 この分だと元の美しいエリザベスに戻るのに、そう時間は掛からないだろう。


 その朝食が終わると、アルティスの姿が消え、翌朝まで戻って来なかった。

 心配するフィオナ。

 アルティスがフィオナに何も告げず、一晩部屋を空ける事は、今まで無かった。


 翌日フィオナは、毎朝の日課の為、石階段を降りていた。

 王城の地下の聖なる泉で、平和の祈りを捧げるという、お勤めだ。

 リヴァルドに抱き抱えられて、エリザベスも一緒だ。


 ここ地下3層は、王家しか立ち入る事が許されない、王家だけの聖地。

 地下であるにもかかわらず、10mは有ろうかという高い天井。

 その天井の周りに並べられた、水晶に似た魔鉱石。

 それらが薄っすら青白く光って、

 幻想的な雰囲気を(かも)し出している場所だった。

 縦横100mは有ろうかという、広いホールの中央には、直径40m程の泉が有り、

 その中央には、薄っすらと光る岩の上から、噴水の様に水が湧き出ている。

 中心迄の石畳みを渡ると、そこには幼女の姿の水晶の像が、建っていた。

 幼き日のフィオナかと、見間違える程、良く似た顔をした、美しい水晶の像。

 その横に、昨日から姿が見えなかったアルティスが立っていた。

「何処に行ってたの?心配したわよ……此処(ここ)は私の家族しか入れない場所……

 ま、アルも、もう家族みたいなもんね……良いでしょ?お父様?」

「うむ。アルティスは、もう我が息子も同じ……ご先祖様もお許し下さるだろうよ」

「でもアル?何故この場所を知って……

 あ、そっか……水晶の少女ユッフィーって言ってたものね?

 貴方には全部、分かっていたのね」

「……フィナ、待たせたね?」

 その言葉の意味を理解出来たのは、フィオナだけ。

 何が何やら分からない、リヴァルドとエリザベスをよそに、

「本当に?……」

 そう(つぶや)くフィオナの頬に、一筋の涙が流れた。


 幼きアルティスが、行方不明になった、その2年後、

 王家では新しい命が誕生していた。

 生まれたのはフィオナそっくりな、とても可愛い女の子だった。

 皆んなに愛され、すくすく育つ王女、名はユフィリナ。

 名付けたのは、フィオナだった。

「この子はユフィリナ!」

 そう言って、譲らなかったらしい。

 前触れ無く誕生した子供だ。

 リヴァルドもエリザベスも、勿論、名前など考えてはいなかった。

「良い名前じゃないか?エリザベス」

「そうね、可愛い名前ね」

 その子の名前はユフィリナとなった。

 フィオナは片時も離れず、ユフィリナの面倒をみて可愛がった。

 それを見て、まるで母親じゃ無いかと、皆んなは笑った。


 当時、地上では異変が起きていた。

 ハルステイン王国の中央、王都より東200km、スノタールに有る大森林。

 そこには王国を見守る様に、そびえる世界樹の大輪。

 その葉は枯れつつあり、世界樹からの恵みが途絶えてしまう。

 一番影響を受けたのは、農作物だ。

 その上、更なる干ばつで大被害を受けたかと思えば、次は大洪水……


 地上には〝1200年厄災〝と呼ばれ、人々から恐れられている厄災があった。

 それは1200年毎にやって来ると言い伝えられている。

 1200年に一度、一ヶ月にも渡って天変地異が続くと言われていた。

 しかし、それは未だもう少し先のはず。

 何かが、おかしかった。


 しかしそれらの異変は、ユフィリナが誕生し、暫くすると収まっていく。

 王国では、ユフィリナが、神の祝福をもたらしてくれたと(ささや)かれていた。

 確かにユフィリナの誕生は謎めいていたのだ。


 エリザベスが朝起きると、おくるみを着た赤ちゃんを、胸に抱いていたと言う。

 厳重な王城で、さらに警備の厳しい王妃の間。

 誰も、忍び込める余地は無かった。

「だ、誰か〜〜!」

 呼び鈴をけたたましく鳴らすエリザベス。

 大事そうに赤ちゃんを抱くエリザベスを見た侍女長が、慌ててリヴァルドを呼びに行く。

「何故?赤ちゃんが……どこから来た?……どこの子だ?」

「何を言ってるの?貴方。この子をよく見て!フィオナの赤ちゃんの時に瓜二つよ!

 この子こそ、神様からの授かりもの……私たちの子に決まっているわ」

 誰もがエリザベスの、その言葉に納得せざるを得なかった。

「た、確かに……フィオナそっくりだ……目の色も髪の色までも……我らの子としか思えんな?」


 その日の内に、王国中に、王女誕生の発表がなされる。

 エリザベス懐妊の発表も無く、お腹が大きい等の噂さえ、無かったにも拘らずだ。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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