15 魔族も人族も何も変わらないよ?
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
「焼き串、う・ま〜〜〜!」
フィオナにお金を貰い、両手に抱え、
幸せそうに屋台の焼き串を、頬張っているアルティス。
「かわい……」
そんな事を呟きながら、頬を赤らめるフィオナだった。
でも結婚するなら、地上を離れていた10年分の常識教えなきゃダメね。
そう思うとフィオナの顔は更に赤くなっていく。
仲睦まじく2人で歩けたのはここまでだった。
2人を見つけ集まって来る民衆。
魔王軍討伐の感謝を伝える人々に囲まれ、身動きが取れなくなってしまった。
美しく聡明。それでいて気取らない。
平民にすら、気さくに接する性格もあって、
国中から愛されている王女……それがフィオナだった。
そして突如として出現した英雄、神の子アルティス。
その噂は瞬く間に王国中……いや外の国々にも、
そして魔族の大陸にまで流れていた。
そんな2人が、揃っていれば、民衆が集まってくるのは当然だろう。
花火が煌びやかに打ち上げられ、周りの皆んながそれに目を奪われた瞬間、
アルティスは、自分とフィオナに、猫耳と尻尾のアクセサリーを素早くつけ、
変装して逃げ出す。
いつの間に、こんなもの買ったんだろう?
そう言えば串焼きの屋台の横にアクセサリー屋が有った。
だがしかしそうは上手くいかない。
「姫様達、どちらへ?」
「「ニャッ!」」
変装はバレバレだった様だ。
仕方ない、皆んなで一緒に花火を見よう♡
「ねえ?お兄ちゃんが、魔族をやっつけてくれたの?」
小さな女の子が、アルティスを見上げながら話しかけてきた。
「そうよ。この英雄アルティス様が、魔王軍を撃退してくれたのよ?」
アルティスの代わりに、どこかのおばさんが答える。
「お兄ちゃん、すごく勇気が有るのね?あたしね、魔族が凄く怖いの……」
「大丈夫よ。あの、にっくき魔族達は、いつだって、この英雄様が、やっつけてくれるわよ!」
「え?憎い?皆んな魔族がそんなに憎いの?」
「それはそうですよ。魔族は人の敵ですから」
「敵?そんな事無いよ?魔族も人族も何も変わらないよ?
分かり合えば、良い友になれるのに……」
「まさか?冗談がきついですよ〜?」
「………………」
少し寂しそうな顔をするアルティスだった。
(まあ、攻め込まれたんだから仕方ない事なののかもしれないけど……
人族と魔族……なんにも変わらないんだけどな?
だからこそ俺、奴ら誰1人も殺してないんだけど……
それにしても、大賢者の結界のおかげでもあるけど、
人族と魔族……しばらく争いはなかったはず。
何故今になって突然攻め始めるんだ?何かが変だ)
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