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13 呪い

神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。

 一糸纏わぬ姿になったエリザベスを、真剣な顔で見つめるアルティス。

「そうとう複雑な術式……だな?これって人には無理じゃね?魔族だったとしても……」

 アルティスが、何かを(つぶや)いている。

 呪術であろう、その不気味な文字が、見えていない周りには、

 何を言っているのか、さっぱり理解出来ない。

 そうアルティスは、呪術の文字を読み解いていたのだ。


 アルティスが、静かに目をつぶると、身体が薄ら光出す。

 ソフィアには見覚えのある姿だった。

 光が集まってきた右の手のひらを、エリザベスの胸にそっと置く。

 アルティスの(まと)った光の粒が、エリザベスに吸いこまれ、スッと消えていく。

 周りの皆んなは、エリザベスを見て、驚きに目を見開く。

 見た事もない怪しげな文字が、全身に浮かび上がったからだ。

 暫くすると、胸の文字から順に、光の粒がそれを侵食していく。

 怪しげな文字は綺麗に消えて無くなった。


「アルっ!それ呪いの術式?お母様の病状って、呪いだったの?」

「そ……だな。ヒナ達にも見えただろ?」

「でも……身体中……そんなに沢山の呪いの文字を……

 それもお母様に気付かれず植え付けるなんて……」

「例えば、入浴で側仕えが介助するふりをして?

 それとも、その後のオイルマッサージとか、スキンケアのフリして?

 まあそんな感じで気付かれない様に?」

 アルティスは少し下がると。

「そうなんでしょ?」

 と1人の侍女の肩を、ポンと叩いた。

 その侍女は突如、キツい目でアルティスを睨む。

 ”ブギャオ〜〜!“

 ……吐き気を誘発する様な、嫌な叫び声をあげ、姿を魔族に変えながら、アルティスに襲いかかった。

 しかしその時既に、その胸はアルティスのあの剣によって貫かれていた。

 侍女に化けていた魔族は、光の粒になって消えていく。

 皆んなの思考が追いつかないでいた。


「城の魔族は、皆んな片付けた筈なんだけどな?」

「あの子、昨日お休みだったので……」

 別の侍女が言う。

「なるほどね…… 昨日は、いなかったのね?

 他には……っと…… 気配は感じないな。それじゃあ俺は、戻るね?」

 後ろ向きで手を振り、部屋を出て行こうとするアルティス。何を急ぐ?


「ちょっ……アル!お母様を助けてくれるんじゃ?」

「え?ああ……それならもう大丈夫だよ。見てたでしょ?術はもう消せたよ?

 傷んだ所は全部回復させたから、もうすぐ目が醒めるんじゃないかな?

 オ・カ・ア様の寿命はまだまだ残ってるよ」

 リヴァルド王はオ・カ・ア様、の言葉に何も反応しなかった。

「ちえっ、つまんね〜の」

 そう言うアルティスだったが、その顔は嬉しそうに微笑んでいた。

 リヴァルド王は、嬉しさと……そして今までのあらゆる感情が渦巻き、

嗚咽(おえつ)を漏らし涙を流していた。

 フィオナを始め、そこに居た皆んなが、泣き崩れていた。


(それにしても、あの魔族、ちょっと普通じゃなかったな?昨日の騎士に化けてた魔族もだけど……)

 その頃アルティスはというと、ダイニングに戻り、一人食べかけていた食事を頬張っていた。

「アルティス様、それはもう冷めてしまっております。

 お作り直しておりますので、少しお待ち下さい」

「ふぉちもあべるし、こりもあべる〜」

「そっちも食べるし、これも食べる…… ですか?」

 この侍女、リスの言葉が分かるようだ。優秀である。

 (そしてもう一つ、そう、もう一つだな……)


「アルッ!」

 涙で目を腫らしたフィオナが食堂に入ってきた。

「アル!ありがとう!本当にありがとう!」

「当然の事をしたまでさ……なんてね、俺のしたい事をしただけだよ」

「でも……その……」

 涙で上手く喋れないフィオナ。

 そっと手をフィオナの頭に乗せ、優しく微笑むアルティス。

 フィオナの耳に口を近づけ、そっと言う。

「お嫁さんになりたくなった?」

 プッと吹き出すフィオナ。

「ブレないわね?アルは……

 あのね……重ね重ねで悪いんだけど……もう一つお願い……と言うか、

 聞いて欲しい話が有るの」

「水晶の少女ユッフィー……でしょ?」

 !!!フィオナの目が見開く。

「??あのまだ何も言ってないんだけど?」

「少し……もう少しだけ待って。あともう少しだけ時間が必要なんだ……」

 フィオナは涙でぐしゃぐしゃな顔で何度もうなづいた。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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