12 眠れる王妃
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
やっと、ひと息つき夕食中、またしてもアルティスが、食べるのを止めて、
ボ〜ッとリヴァルド王を見つめている。
「なっ……なんだ今度は? 又魔族か?いい加減気が休まらん……」
「考え事してる様に見えないかな〜?
あのさ、昨日からエリザベス様の姿を、一度も見てないな〜って思ってさ」
顔を曇らせるフィオナとリヴァルド王。
「お母様は原因不明の病気で寝こんでいるの。あらゆる手を尽くしているのだけれど……
ここ最近は衰弱が進み、いつ何が有っても不思議では無い、そう言われていて……
ついに、ここ1週間程、目を覚さなくなってしまったの……」
フィオナの少しだけピンクがかった、紫色の瞳が、涙に濡れる。
(うん少しは知ってたよ……時々、上から地上の様子を窺っていたからね。
でも、そこまで悪くなっているとは……)
「貴方なら助けられるのでは無いですか?アルティス様?」
不意に後ろから声が掛かる。透き通った綺麗な少女の声だ。
「あっ!おっぱい少女!」「ソフィア!」
おっぱい少女は、顔を赤らめ、おっぱいを両手で隠した。
「その話ほんと?アル、お母様を助ける事が出来るの?」
すがる様にアルティスを見つめるフィオナ。
フィオナは、この時まだアルティスが、
砦の騎士や、魔道士達の命を救ったであろう事を、知らなかった。
「絶対……とは言えないけど……見てみないと何とも……」
生まれた時に決まってしまう、人の寿命を変える事は、神でさえ簡単では無い。
寿命の範囲内で有れば、怪我であろうと何であろうと、
それがたとえ死者だったとしても生き返らせる事はそう難しく無い……
たとえ身体がバラバラになってしまっていても……だ。
魂を戻せる迄の、限られた時間ではあるのだが。
「お願い!お母様を助けて!
あとそれと、昨日犠牲になってしまった兵達を生き返せる事は出来ない?
貴方のお嫁にでも何でもなりますから!」
「…………ヤダ……」
「ヤダ?えっ何故?……」
「あっ……いやエリザベス様には、出来る限りの事はするよ?
でもそれを条件にヒナをお嫁さんに……ってのは何かヤダ……
嫌々お嫁に行きますって言ってるみたいで……納得いかない」
「だって昨日は、ヒナを俺にくれるのならば〜って、言ってたから……
別に、嫌々って訳じゃ……」
( 昨日言ってたのは、冗談だって分かってるはずなのに。随分動揺しているな)
「まあ、お嫁さんの事は一旦置いといて……とにかく一度見てみないと。
今直ぐエリザベス様に会わせて?一刻を争うかもしれないんでしょ?」
(そこまで悪くなっていたとはな……
未だもう1つ別にやらなければならない事が有るし……
帰った早々、色々あるな)
「あとそれと、騎士団はとっくに蘇生しているから、心配しなくても良いよ?」
「えっ?あの時のキラキラ綺麗に輝いていた光?
怪我人だけじゃ無く、亡くなった人達も蘇生を?」
「もう、とっくに、あの癒しの光で蘇生しているよ?
だいたい昨日死んで、そのままだったら、
流石に、もう時間が経ちすぎて、生き返らせる事は出来ないよ」
アルティスには、騎士団が笑顔で王都へ戻る姿が見えている様だ。
生き返っていると聞いて、胸を撫でおろすフィオナだった。
王妃の部屋の大きなベットに横たわり、眠りについている女性は、
アルティスの知る10年前の、美しいエリザベス王妃ではなかった。
衰弱し、痩せ衰えてしまっている。その顔は骸骨なのかと見間違える程だ。
皆んなには見えていない様だが、
顔や手、露出している部分から、呪術の不気味な文字が刻み込まれている。
アルティスだけには、それが見えていた。
「全身を確認したいから、服を脱がして。男の人達は一旦外に出ててくれる?」
「アルティス、お前何を……」
「ああ、オッサンは居ても良いのか?」
「いやいや、お前がダメだろ!エロガキ!不敬だろ!」
(あ〜うっさい、このオッサン!集中できん!)
「お父様!この様な姿になってしまっている、お母様の裸を、
いくら変態アルでも見たい訳ありません!何か理由が……」
(変態じゃね〜し!酷くね?ヒナ?)
喜んで良いのか?怒るべきなのか?
だがフィオナの言葉に、流石のリヴァルド王も黙るしかなかった。
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。