100 ボクはアルティス、人間ニャン♡
神の力を宿し生まれ、5歳の時、創造神により神界に保護され育てられる。神界で磨かれたその力は、既に神の域すらも超えているのではと、12柱の神々は囁く。
「なんか変だぞ?
地上にも魔神の気配がない……
どうなってんだ?」
「私も、全く気配を感じませんね」
「アルっ!!良かった無事だったのね?」
フィオナの声は、どこか震えていた。
だがアルティスは、それを“悪魔との戦い〟を、
案じての言葉だと思った。
だがフィオナのこの言葉は、
〝消えたアルティス〟への言葉だ。
「あっ、フィオナただいま。無事だよ。
とりあえず俺たちの完勝。犠牲者ゼロ。
思ってた以上の結果だよ」
「それはさっき貴方から聞いたじゃない……
その〝とりあえず〟ってどう言う事?」
「さっき俺から聞いた?何それ?変な事言うな?
俺は今戻ったばかりじゃない。
とりあえずってのは、
魔神が、魔界にも、この地上にも、
どこにも見当たらないんだよ?
もう、悪魔の軍隊は、
やつしか残っていないから、
何も出来ないとは思うけど……
じいちゃんとの約束もあって、
どうしても見つけなきゃならない」
「そうなんだ?肝心の魔神が、
どうなっているのか分からないのは、少し不安よね。
だから貴方は、消えた後、魔神を探しに行ってたの?」
「消えた後?誰が消えたって?
なんかさっきから、話が噛み合わないな?」
「貴方、薄くなって忽然と消えちゃったじゃない?
……あ、あれ?ほんとだ……この会話、なんか変よね?」
言葉が、かみ合わないーー
同じ時間を生きているはずなのに、
互いの記憶だけが、ずれている。
その時。
ーーアルティスよ。
話の最中にすまんが……少し話したい事が有る。
お前達の今の会話にも関係がある。
じゃからフィオナと一緒に神界に来てくれんか?
ーーあれ?じいちゃん?
俺も報告に行かなきゃって思ってたところだから……
フィオナも一緒?
ーーうむ、直ぐ来てくれ。
神界ーー
創造神が立って待っていた。
そして――その背後に……
どこか気まずそうに立つシャルの姿。
「どわ〜シャルおじさん?
何でここに……って……邪気が……消えてる?」
「……ごめんよ、アル。随分迷惑かけたみたいだね……」
「じいちゃんが、シャルおじさんを?」
「いや、そうではない。
これから話す事をよく聞くのじゃ………………」
――語られる真実。
時間が巻き戻された事実。
アルティスが“消えた〟理由。
「………………そんな事になってたのか……」
「私達地上のほぼ全員……
ほんとだったら死んでたって事ですか?
それをアルが?」
フィオナの声が震える。
「……あの時消えたのが、そのアルティス?
だからあんな寂しげな顔を?……」
「うむ……そう言う事じゃな……あの時のアルは、
もう二度と会えないと悟った顔をしておった
死んでいくような感覚になったんじゃろう……」
「確かに、自分が消えるって事は、
死んでいくのと変わらない気持ちになるかもな……」
創造神が静かに頷く。
「で、じゃ。このままだと、
心がモヤモヤしてスッキリせんじゃろ?
だから消えたアルティスの記憶を、
お前に同期させようと思うんじゃが?」
「そんな事できるの?」
「うむ。こうなるじゃろうと思ってな、
記憶を抜き出して保管しておいたのじゃ」
アルティスは笑った。
「じゃあ、やってよ。
消えた俺も……俺と一つになって生き返る……
てのも変だけど……ちゃんと“生きてた〟って事で」
光が、溶ける。
二つの記憶が重なり合う。
魔神を消滅させた瞬間ーー
フィオナに二度と会えないと悟った感覚ーー
胸を抉るような孤独ーー
全てが、戻る。
「……ああ。そういう事か」
ようやく、世界が一本につながった。
「じいちゃん。俺、間違った歴史を元に戻しただけだよ?」
「はいはい。それはもうよいと言っておるじゃろ?
わしとて、あのままじゃったら、
こうはしておれんかったじゃろうからな……」
「だよね?人生やり直しが出来たとしても、
100回やり直しても、100回同じ事をしたと思うよ。
誰にダメだと言われてもね」
「ねえ、アル?1つ聞きたいんだけど?」
「何?」
「貴方何で、そんな事したの?」
「……そんな事って……
こうしなかったらフィオナや皆んな死んでたんだよ?」
「ううん。私の聞きたい事は、
時間を戻したって事じゃなくて……」
「ん?何?」
「貴方、自由に時間を移動出来るのだから……
ちょちょいと戻って、簡単に阻止出来たんじゃない?」
「「……あ……………………」」
神々が一斉に黙る。
「創造神様、気付かなかったのですか?」
創造神は、目を逸らした。
ミリアがくすりと笑う。
「フィオナ、それだけ貴方がアルティスから、
愛されてるって事よ?」
「ミリア姉様、それは?……」
「我を忘れる程、気が動転してた……
それ程、愛されてるって事。
あの時のアルティスは、
感情を何処かに置き忘れた様に無表情で、
私でさえ、背筋が凍りつくほど怖かったわよ?
アルのあんな顔初めて見たわ」
「…………アル…………」
アルティスの胸に顔を埋めて、
涙を隠したフィオナだった。
「アルよ、それでなんじゃが……
此度の戦いは、異次元の神々にも、
ある程度伝わっておる様じゃ。
時間を操作したお前を、
危険視する神もおる様じゃから……
面倒な事にならんと良いのじゃがな……
何が起きるやもしれん。
念の為、用心しておくのじゃぞ」
「うん、そうなの?分かった」
戦いが終わり、落ち着きを取り戻した1ヶ月後……
異次元の神界。
百を超える神々が、アルティスを囲んでいた。
「なにか用?こんな所に呼び出して……
異次元の神々ってこんなにいたんだね?」
「時間を操作し、星を蘇らせるなど……
秩序を乱す存在だ」
「危険だ」
「排除すべきだ」
ざわめきが広がる。
アルティスは、やれやれと肩をすくめた。
「多勢で……、そんな怖い顔して、
威圧しているつもり?凄く感じ悪いよ?」
やれやれという感じで、口元は笑っている。
アルティスの行為を見逃すと、秩序が保たれない……
異次元の神々の中には、そう考える神が半数近くもいた。
神々が一歩、詰め寄る。
――その瞬間。
ズーン ズーン ズウォーン ズウォーン……
地響きの様な、低く威圧感のある音が響き渡る。
空間そのものが震えた。
「な、何だこの音は……!」
「違う……音じゃない……これは……」
それは圧。
圧倒的な神聖力。
指一本、動かせない。
呼吸すら重い。
「……何狼狽えてるの??」
アルティスは首を傾げた。
「これ、俺の鼓動だけど?」
ドクン。
宇宙が脈打つ。
「こんなのに怯えるの?
それでも神?」
静寂が包む。
完全なる格の差。
「何なのだ、その呆れるまでに強大なこの力は?
いったいお前は何者なのだ?」
アルティスは、ゆっくりと笑った。
「俺?
あんた達が生まれる遥か昔――
原初の創造神の神聖力を受け継ぐ者」
神々の沈黙。
絶対的な存在の宣言。
そして――
「あんた達……この俺のことを知らないの?…」
「………」「………」「………」「………」「………」「………」
にやりと口角を上げる。
「ボクはアルティス、人間ニャン♡」
〜end〜
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。
これにて、この物語は終了となります。最後までお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました。




