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第二話②

======



「よお、ポイズンガード。さっきぶりじゃあねえか。」


「勇者.....ジュン・パスタ・ホーリーエンジェル・ハセガワだったか?」


「ジュン・バスター・ホーリーガード・ハセガワだっ!


 そんな冗談言ってていいのかよ、今の状況わかってんだろうな?」



 全くその通りだ。

 勇者.....ハセガワは仲間を引き連れていた。


 一人は杖を持った魔導師。

 一人は盾を持った戦士

 一人は......ナイフを舐めてるような変人だ。


 やはり全員日本人の顔であった。

 ハセガワが殺さずに育てたようなとっておきなのだろう。


 ハセガワが30代前後に対し、他の仲間は20代だろうか?

 しかし、今まさに攻撃を仕掛けようとしているのはハセガワだけだ。


「...おい、仲間引き連れても戦うのはお前だけか?」


「竜の牢屋に入るんだ、バフ担当、守護担当くらい居たっていいだろう?」


 つまり、ハセガワをサポートする仲間たちってわけか.....。

 さっきからセリーナは瘴気を抑えているようなしぐさはないし、瘴気対策も万全ってわけかよ。


「そっちは....昔々のおとぎ話に出てくるような伝説の竜モドキと、何もできないカス一人か。ポイズンガード.....観念しろよ、そうすれば苦しませず殺してやる。」


「......じゃないです。」


 セリーナが呟く。近くにいる俺でも聞こえないくらい、かすかな声で。


「カスじゃないです!


 ブスジマさんは、私にここを抜け出そうって言ってくれました!

 たとえ戦えなくても、なにか出来るわけじゃなくても、私を動かしてくれました!」


「.....はっ!

 じゃあ、お前が戦うのか?女でも容赦しないぜ?」


「いえ......私の親友が戦います。」



========


 俺の視界が一気に暗転する。

 何も見えない、何も感じられない。虚無だ。



「主は、死ぬという警告すらも振り切る大馬鹿ものなのか?」



 この声は.....竜の牢屋に入って聞こえた、脳に直接聞こえた声だった。


「お前は、もしかして.....」


 俺の目の前に、負のオーラが、とてつもない恐怖と憎悪の塊のような、そんな何かが現れた。


「我は、ヴァストルート・ウィンガⅢ・ポイズンⅧ・ワイバーン

 セリーナのもう一つの姿であり、伝説の毒竜じゃ。」


「ヴァストルート......ワイバーンってことはドラゴンってことなのか?」


「だから、竜と言っているだろうに。

 主はこの場に呼び出された理由、わかるか?」


「.......瘴気の力を勝手に使うな?」


「ち・が・う!」


 俺に強風と負のオーラが飛んでくる。

 負のオーラはまだしも、強風はところどころにかすり傷を作った。


「.....じゃあ、竜の牢屋に勝手に入ってくんな?」


「それも違う!!」


「.....わかんねえよ。もったいぶらずに教えろ。」


「本当に、身に覚えがないのか?」


「浮気をすでに知ってるメンヘラ彼女みたいな発言だな。

 伝わらないだろうが、ツッコミはいらないぜ。」


「わけわからないこと言いおって.....

 主がセリーナにしたことを我は見ていたのだぞ?」


「抜け出そうって言ったことか?

 ヴァストルートさんにとってもいいことだろう、何が問題なんだ?」


「.......手を差し伸べただろうに。」


「ああ、そうだな。」


「手を、て、手を差し伸べたのだぞ!」


「だから、それが何だってんだよ。」


「......手を差し伸べることは、『最後まで慕い続ける』と同義なのだぞ?」


「は?」


 .....しまった。

 そうだ、そうだった。ここは異世界だ。

 前の世界での常識や文化が、こっちでは違う。当たり前じゃないか。いくら日本語がなぜか通じるからといって身振り手振りに意味があるかもしれなかっただろ。


 完全に気を抜いていた。

 漫画とかで見てて、こんなのご都合だぁとかコメ欄に書いていたじゃあないか。


「.....意味は、知らなかった。

 だが、だが!セリーナを助けたいと思っていることは本当だ。ここは手を組んで——」


「だまれぇ!」


 俺は圧倒的な気迫に押される。

 強風が服や髪の毛を切り裂いていく。


「助けたいだと?何も出来ないお前がか?」


「お、落ち着いてくれよ。

 確かに俺は何もできない。だがセリーナの傍に居ることはできる。

 手を差し伸べる意味はわからなかったが意味通りのことはする!」


「.....断言したな?」


「あ、ああ。」


「ふん、面白い。

 では契約を結ぼうではないか。」


「代償と見返りは.....?」


「まず、主はセリーナのために行動せい、そして魔王城に向かえ。」


「魔王城?どうしてだ?」


「魔王は、魔術の始祖と言われる。魔王であれば我とセリーナを引きはがすことが出来るかもしれぬ。」


「.....わかった。それに対しての見返りは?」


「我が、お主に手を貸そう。

 何も出来ぬ主でも、瘴気と我の力があればすこしはマシになるだろう。」


「もし契約を破ればどうなるんだ?」


「そのときは主に手を貸さなくなるだけよ。お主の『最後まで慕う』、どこまで続くか見ものじゃわい。」


「俺のこと舐めてるな?」


「ああ、口だけのクズだとな。セリーナも相応しい男はもっと他にいるだろうに....」


「....やってやるよ、契約で証明してやる。」


「ほう、では契約を結ぶ。我に近づけ。」


 俺は姿も形もわからない負のオーラに近づく。

 何も感じなかったはずなのにとても寒気がする。


「我、土のシシャに誓う、タイキ・ポイズンガードⅩ・ブスジマに力を貸すと。

 汝、水のシシャに誓え、セリーナ・ウィンガⅠ・ポイズンⅣ・ハーフドラゴンの為に尽くし、魔王城まで向かうと。」


「.....わ、我、水のシシャに誓う。」


「......よし、これで契約成立じゃ。」


「なんか効果とかあるのか?」


「ない、口問答だけじゃ。」


「おい、それじゃ———」


「それでは、セリーナらのもとへ戻ろうではないか。」


 俺の視界は暗転してたと思ったが、さらに暗転した。


=======


「お前の友だとぉ?抜かしたこと言ってんじゃ———」



 一瞬だった。ハセガワの仲間がばたっと倒れた。


 俺でもわかる瘴気の濃さだ。毒耐性が無ければあっさり死んでいるだろう。

 セリーナは....もうセリーナではなかった。腕に翼を持ち、体にはいたるところに鱗が生えている。


「さあ、セリーナに頼まれてしまっては契約云々でなくとも力を貸そうではないか。」


 声はセリーナであるが、人格は別物だ。

 瞬きの間もなくヴァストルートがハセガワの剣に食いかかる。

 

「おお、まじの竜じゃあねえか。とんでもねえな!」


「勇者、ホーリーガードがあっても我の瘴気を直に触れ続けると死ぬぞ?」


「何を...!こっちにはスキル、魔退治バスターがあるんだ。お前にとっても死に際だろうさっ!」


 ハセガワがヴァストルートの爪を弾き、剣を大きく振るう。


「....ウィンガ。」


 ヴァストルートがそうつぶやくと勇者が強風で吹きとばされる。


「主、抜け出すのが目的じゃろう?こんなやつの相手はしなくてもよかろう。」


「あ、ああ......これは俺がお前の背中に乗ればいいのか?」


「つべこべ言わず乗れ。あの勇者ももうじき起き上がる。」


「ま、待て......」


「そうだな、逃げよう。」


 俺はヴァストルートの背中にまたがり、身をかがめる。

 牢屋という狭き場所でもヴァストルートが飛ぶ姿はとても様になっていた。


「主、しっかり掴まれ。」


 ヴァストルートはどんどん加速し、風で壁すらぶち破る。

 伝説の毒竜、ヴァストルートの力には騎士も、魔術師も遠く及ばない。


 タイキ・ポイズンガード・ブスジマは王城からの脱出に成功したのだ。


 ここまで読んでくれてありがとうございます!


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