第一話③
そこにいたのは、半人半竜の少女であった。
「お、お前は?」
「あなた....なんで?
これほどの瘴気を浴びたら死んでしまうはず.....」
「おい、人の質問に答えろよ、
俺は毒島大樹。お前の名は?」
「.....セリーナ。」
「セリーナ、お前は竜なのか?」
「....ううん、私は、人間だったわ。」
少女は声を途絶え途絶えにして話す。
まるで何百年も誰とも話したことがないように....
「人間だった....?」
「そう、私は、毒竜ヴァストルートを抑え込むための人柱になったの。」
「ってことは、なにか力を持ってたのか?」
「私は、自分と竜を混ぜ合わせることでヴァストルートの吐き出す瘴気を抑え込んだの。
でも、竜の瘴気はとても強くて、中和しても私の体に残り続けたままで....」
「それで、この牢屋に入れられたのか。」
「そう。竜の力はとても強いから何も食べなくても、何度死のうとしても、死ねなかった。
本当は私が消えてしまえばみんな安心して暮らせるのに.....」
セリーナが言うにはもともと貴族の令嬢だったが、領内で暴れる毒竜を抑えるためにスキル、中和を使ったのだという。しかし、その竜の持つ瘴気を抑えきれず、セリーナ自体を殺すことも出来なかったのでこの牢屋に封印されたという。
なんとなく状況は読めたが、ひどい話だ。
こんなにも健気に役目を果たして、この扱いはひどい。おそらく、竜の力とやらがジリ貧で消えるまで食事も水も与えずにこの場所に放置しているのだろう。
「ブスジマさん、あなたはどうして瘴気の影響を受けないの?」
「ああ、それか。
俺の持つ能力は毒耐性って言って毒とかの影響を受けないらしいんだが....瘴気ってやつも毒に近いのか?」
「いえ....瘴気は竜の持つ負のオーラです。オーラに触れれば触れるほど体は鈍くなっていき、最後には心臓すらも止めてしまいます。毒などの類ではないはずなのですが.....。」
「なんで敬語?」
「い、いえっ!人と話すのがとても久しぶりだったので....話し方も忘れてしまって。」
「俺には敬称もいらない、毒島でいい。」
「ですが.....とにかく私の話し相手になってくれるだけでも嬉しいんです。
そういえばブスジマさんはどうしてここに?」
「俺は....明日スキルを奪うためにとりあえずここに放り込んだらしい。」
「スキルを奪うってことは....」
「ああ、殺される。」
セリーナはとても悲しい顔をした。
きっと一番辛いのは彼女自身だろうに、どうしてそんな顔ができるのだろうか。
「心配するなって、なんとか切り抜けるから。
セリーナは....拘束されてるわけでもないよな。どうしてずっとここにいるんだ?」
「私は、外の世界に出てしまえば皆が瘴気にやられてしまいます。
だから私はここに居るのが一番いいんです.....。」
「生きたいとは思わないのか?」
「....はい。」
セリーナはとても苦しそうな顔で俺にそう言った。
納得してない、理不尽に押しつぶされてるって顔で。
「セリーナ、」
「はい?」
「お前全部顔に出てるじゃねえか。」
「えっ?」
「生きたいって思ってるだろ、本当は。」
「いえ、私は、私は......」
「一つ、さっきセリーナが言ってたことには間違ってることがある。」
「そんな......瘴気は人々を簡単に殺してしまいます!
私のせいで人が死ぬのは嫌なんですっ!」
「俺は死なない。」
「でもっ!.....でも.....」
「セリーナ、俺は簡単にこの王城から抜け出せると思ってない。
だけどセリーナが持つ力があれば、ここだって切り抜けられる。
俺と、ここを抜け出そう。」
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