第一話②
「変なことするんじゃないぞ、俺も一般人を懲罰するようなことはしたくない。」
俺を取り押さえている騎士が喋った。
こいつのせいでさっきから肩外れかけているんだが慈悲の心があるようだから少し許してやろう。
「騎士さん、あなたは毒耐性で何が出来ると思います?」
「俺に聞くのかよ.....
そうだな、今からお前を放り込む竜の牢屋には古竜が住み着いている。そいつの吐き出す瘴気にお前のスキルが役立つかもな。スキルのレベル不足で死ぬかもしれないが。」
「え、明日殺すんじゃ?」
「お前が生意気言ったからこうなったんだろ。
まあ、牢屋の入り口でうずくまってれば死ぬことはないさ。お前は何としてでも生きたいようだがここは王城だ。騎士は俺らだけじゃないから大人しくしててくれよな。」
大人しくしろというが.....
そもそも明日殺されるなら何やったっていい無敵状態だ。俺は当然脱出するつもりだが牢屋で死ぬとは予想外である。この毒耐性ってやつがどこまで有用かなんだが.....
「なんせ竜だ。俺達でも見たことねえ。
噂じゃ人を大量に食い殺した悪魔のようなやつらしい。苦しみながら死にたくないんだったら余計な事をするなよ。」
「騎士として俺に言うこと合ってます?」
「.....間違っちゃいるが仕事を増やすなって話だ。
ほら、竜の牢屋に着いたぞ。」
その牢屋の入り口は、まるで地獄の門のようだった。
召喚された場所から地下奥深くもぐってきたが、この扉の前はなにか禍々しいなにかを感じる。ここまで松明に照らされてきた道だったが、ここは別格で魔法石のような光る結晶を使っている。おそらく竜の封印やらなにやらに関係するのだろう。
「じゃあ坊や、幸運を祈るぜ。」
俺はその扉の奥へ閉じ込められた......。
いや、勇者にあれだけつっかかってただでは済まないと思っていたがここまでとは。
竜の牢屋というだけあって壁は石積み、魔法陣みたいなのもところどころにある。これ、本当に出られるのだろうか?
いや、殺すときには開けなければならない。
ここで俺が勝手に死なない限りまだ方法はある。とりあえずこの牢屋に抜け道や見つからないような隠れるところを探そう。今はこの中で生き延びるんだ。
俺は牢屋の奥へ奥へ進んでいく。
進めば進むほど負のオーラは強くなり、足がすくむ。ずっと一本道だし、ところどころに変な文字が書いてあるし、ホラーゲーム並みの怖さだ。
......同時に、古竜というのがどれほどのものなのかも考えなければならない。
牢屋から抜け出していないとすればなにか拘束されているのだろうし、なかなか出れないようになっているはずだ。俺に危険がない可能性もある。
しかし、勇者がわざわざこの牢屋を選んだんだ。
瘴気云々とも言っていたしスキルのレベルを試したかったのかもしれないな。
生憎スキルは発動しているのかもわからないし実感もしてない。
本当に脱出できるのだろうか?
————これ以上この地に踏み入れるな————
脳に声が響く。
女の声だろうか?精霊とかの類か?だが、ここは竜の牢屋のはずじゃ......
「お前は誰だ!———」
自分の声が牢屋のなかで響く。
前も後ろも闇の中、奥に光が灯る。
————これ以上来たら、主が死ぬ————
「瘴気のことか?お前は、竜なのか?」
何も返ってこなくなった。
....とにかく進むしかない。体に異常があればすぐ引き返せばいい。これくらいしなければ脱出などできないだろう。
「俺は、今からお前のもとに向かう!止めたいなら姿を現せ!」
俺は一歩、一歩と光の方へ進んでいく。
近づけば近づくほど光は強く、激しくなる.....
「こ、これ以上来たらあなたが死んじゃう!」
そこにいたのは、半人半竜の少女であった。
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