第一話①タイキ・ポイズンガード・ブスジマ
召喚直後、俺は男に剣を付きつけられていた。
「オリヴィア、なぜ止める?今更だろ。」
男が隣に侍らせている女に話しかける。
状況が掴めない.....
まあ異世界召喚など言わずともわかるだろう。
あと少しで電車に引かれていた俺が異世界に召喚されて、魔王を倒せとか、災いを防げとか言うんだろうと思っていたが。
剣を突きつけるとは何事か。
足元に三角形の魔法陣があることから召喚したのはこの人たちで間違いないし侵入者だからとかってわけでもないだろう。
もしかして魔王による召喚の儀の際に殺しちゃえば勇者と戦わずに済む的な?
いやいや、この男はめっちゃ普通に人だし、どっちかというと勇者的な恰好をしている。
この男は......日本人だろうか?
隣にいるオリヴィアとか言う女は西洋風の顔立ちだが。そもそも言語が通じるし電車で引かれかけたところを謎の魔法陣で回復するような宗教団体に拾われたとか?
いや、わけわかんねえよ。どんな宗教だ。
異世界召喚ってことは間違いなさそうだが.......
「勇者様、ちょうどいまスキルを監理する魔導具が切れてしまいまして。
この方を殺されてもスキルを拾えないのです。」
「ッチ、そういうこと先に俺に言えよ。」
「申し訳ございません。」
二人で勝手に会話が進む。
どうやら男の方はまじで勇者らしい。
「あの......」
「ああん?どういう状況かって?」
男はどうやらこの手の質問には慣れているようだった。
「いや、異世界召喚ってことはわかってるんで、なんで剣を突きつけられてるのかを。」
勇者は調子が狂ったのだろうか、髪をかき上げて剣を鞘に戻す。
「まあいい、説明くらいしてやる。だがお前も名を名乗れ。あと死にかけた理由をな。」
「......毒島大樹、学生で、電車に引かれかけた。」
「電車か....懐かしいな。
俺はジュン・バスター・ホーリーガード・ハセガワ。勇者だ。」
「は?ジュン、なんだって?」
「ジュン・バスター・ホーリーガード・ハセガワだ!
この世界ではスキル名をミドルネームにするんだよっ!」
「なんか恥ずかしい名前だな。」
「ッチ、そうゆうお前は......オリヴィア、鑑定を頼む。」
「このお方は.....毒耐性ですね。
可もなく不可もなく、ありきたりですね。」
「ポ、ポイズンガードかよぉ!ギャハハハ!
お前の名前はこの世界ではタイキ・ポイズンガード・ブスジマだ!
可もなく不可もなくだってよ!」
「.....なんか癪だな。でもホーリーガードなんていうのよりましだ。」
「そんなこと言ってていいのかよ。お前これから殺されるんだぞ?」
「は?」
「説明してやる、お前は俺の“スキル狩り”のために召喚された。ようは召喚の時に付いてくるスキルを俺が奪おうってわけだ。」
「それと殺すことに何の関係が?」
「わかるだろ?スキルを奪うにはお前を殺すしかないんだよ。」
勇者は恰好に似合わない顔で下劣な笑みを浮かべていた。
異世界召喚されてすぐ死にかけるって.....いやありきたりだな。
召喚自体が殺すためっていうのは少し珍しいけど。
「やけに落ち着いた顔してんじゃねえか、普通取り乱すぜ。」
「俺を舐めないでくれ。むざむざ死ぬなんてありえない。なんとしても生きてやるさ。」
「毒耐性でかよっ!ギャハハハ!やってみろよ。
そんなお前は好待遇でご案内だ。.......竜の牢屋にこいつを放り込め。」
勇者の後ろから二人の騎士が出てきて、俺を取り押さえる。
俺は暴れるがどうとも動けない。
「親切に 教えてやる、殺すのは明日だ。せいぜいその毒耐性でできることでも考えておくんだな!」
そうして、俺は異世界召喚初日に牢に放り込まれた。
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