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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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98話 頑張れミミック! 負けるなミミック!



【ミミックってフロアボスになるんだな】

【同じ個体か?】

【同じだろ。勇者がもぎ取った形跡あんじゃん】

【トラウマ植え付けられてて草】

【ダンジョンの粋な計らい】


「えっと……どうしよっか?」


 小首を傾げて紬が聞く。

 聞いてる意味が分からないが……。


「あいつがフロアボスだろ? なら倒さないといけないんじゃないか?」


「……そうだね。少し気が動転してたよ」


 フロアボスを討伐しないと次の階層へは進めない。

 だとすればやることは一つ。単純なことだ。

 次も同じような探索型の洞穴らしく、攻略に時間がかかるので、今回は俺が討伐することになった。

 ミミックの元に歩いていくと、向こうも戦う気になったのか立ち上がる。

 ミミックの背丈は俺より一回りほど大きいが、枯れ木のような体は何の威圧感もなく、相手の力も先程までで大体把握していた。

 あまり警戒する必要もないだろう。


 俺がミミックの方へ歩いていくと、あちらも大きなトゲのような歯を剥き出しにしながら威嚇を始めた。

 ……俺ではなく理紗たちに向けて。


「おい! ちょっと待て! お前の相手はここにいるだろ」


 ミミックは俺のことを無視して、理紗たちに勝負を挑もうとしていた。

 呆気に取られた俺の横を、早足で通り抜けようとしていたため、慌てて腕を掴んで止める。


 ミミックの歩みは止まった。

 だがそれでもミミックは、俺と目を合わそうとせず、ギィギィと理紗たちに向けて威嚇の声を上げている。


 モンスターは見境なく人間を襲う。

 これはダンジョンにおける不変の真理だったはず。

 だが今の状況は何だ。

 近くにいるはずの俺を無視して、理紗に敵意を見せている。

 これはもしかすると……。


「まさかお前、俺に懐いて──」


「そんなわけないでしょ。殺せない化け物相手にするより、殺せる可能性のある相手と戦いたいってところかしらね」


【んなわけねーだろ】

【勇者お前、今日の探索の記憶ないのか?】

【自分の体引きちぎってくる相手に懐くわけないだろ】

【俺、今度ギルドで勇者宛てに道徳の教科書送るよ】

【三回は熟読しろよ】

【破天荒な勇者が好きだから今のままでいて】

【サファリパークの猛獣より何考えてるか分かんないもんな】



「でも舐められっぱなしは癪に障るわね」


「りっちゃんが戦うの?」


「紬は下がってて。私もこれくらいの相手は倒せるんだから。レオ、手を離してもいいわよ!」


 理紗の言葉に従い右手を離す。

 するとミミックは待ってましたとばかりに、大きな足音を鳴らしながら、理紗に突撃していった。


 理沙は動揺することなく、ミミックに向かって右手を伸ばす。


 《ネズミ花火》


 理紗から生み出した皿型の火球が、不規則な軌道を描きながらミミックに迫る。

 ミミックは大きく横にずれるも、理紗の生み出した魔法はその動きに合わせて追従し、四方を囲むようにして攻撃を仕掛けた。

 ミミックは避けきれないと悟ったのか、迫る魔法の一つを払いのけるように防御しようとするが、理紗の魔法は着弾と同時に爆発。

 ミミックの腕は大きく後ろに弾かれた。

 残る魔法も時間差でミミックの体に接触し、ミミックの体は炎の渦に包まれる。


【相変わらず綺麗だな。炎姫の魔法は】

【こんなに汎用性を持たせれるのって炎姫くらいだもんな】

【そういえばもう少しで夏祭りの季節だな。お前ら一緒に行く相手いるか?】

【これはダンジョン探索を見る配信です。関係ないことはあまり話さないようにしてください】

【黙ってお前は炎姫の応援しとけよ馬鹿野郎。行く相手なんかいねえよ】



 ミミックの手足は理紗の攻撃で焼け落ちている。

 虫の息のミミックだが、まだ戦闘の意思は残っていた。

 ミミックの膝と肘から下はない。

 欠損した手足で四つん這いになり、バッタのように跳躍。

 理紗の元に飛び込むも……。


 《打ち上げ花火》


 理紗の呟きの後、ミミックの真下に火の玉が生まれる。

 火の玉はそのままミミックの体を打ち抜いた。

 ミミックは抵抗しようと体をばたつかせるも、そのまま上に運ばれていき、天井付近で爆発を起こす。

 限界を迎えたのか、ミミックの体は落下中に魔石に変わり、落ちてくる魔石を理紗が両手で受け止めた。


【たまや〜】

【やっぱり強いな炎姫。一人でミミック瞬殺しやがった】

【ミミックのくせに魔石だけで、ドロップアイテムなしかよ】

【ミミックの風上にも置けないな】


 戦果は上々。

 無傷で倒してのけた理紗も紬と笑い合っている。

 扉に向かいながらあることに気がついた。


「……理紗、ミミックの体についている宝石は持ち帰れないんだったよな?」


「そうよ。それがどうしたの」


 亜空間から一つの宝石を取り出す。

 これは先程のミミックから拝借した宝石だが、理紗の言葉が真実なら、ミミックを倒した時点で消えているはずだった。


「一つ残らず残ってるぞ?」


【ダンジョンにお住まいのミミック様、お節介ではありますが、勇者には近づかないことをお勧めします】

【今後ミミックに出会う度にあの光景が繰り返されるのか……】

【収穫祭じゃ! 皆の者! 剥ぎ取れ!】

【ミミックの体を無理やり押さえつけんのなんて、勇者くらいしか出来ねえだろ】

【何か効果あるのかな?】


 理紗が頭を抱えている。

 しばらく考え抜いて出した結論は……。


「うん。この問題は鏡花さんに投げよう」


 満面の笑みで人になすりつけるのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 昔のドラクエ4コマに出てきたミミックさんを思い出したw 勇者が麻痺してその隙にもろはのつるぎ、なげきのたて、般若の面、ふこうのかぶとを装備させられた凶悪な見た目の勇者に即箱を閉じた奴。
[一言] きっと勇者以外に倒して貰おうとしたんだよ。゜(゜´Д`゜)゜。 また剥ぎ取られたくないから、、、
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