95話 一人の探索
理紗の説明によると、枝分かれした道を進み扉を探す必要があるらしい。
この階層はランドマーク持ちを討伐することは必須で、この階層のランドマーク持ちを倒さなければ、次来た時に扉への位置がまたランダムに変わっていってしまうようだ。
「私と紬が以前ここを攻略するのに三日かかったわ」
「ランドマークの期限が切れるギリギリだったよね。最後はここに泊まり込んで探し出したんだよ」
ここのランドマークは更新しなければ三日で切れる。
他のダンジョンではその期限が変わることもあるそうだが、基本的にはそれが平均的な期限らしい。
紬がいるとはいっても、戦闘要員が一人だと手分けして探索することはできないだろう。
二人を鍛えるにしても、もう少し上の階層で留まりたい。
だから理紗の提案に了承し、それぞれ違う道を進むことになった。
入り口から見える道は二つに分かれている……が、そこからまた複数に分岐していくらしい。
なので、行き止まりまで進んだら引き返して別の道に進み直す。
当たりを引くまでその繰り返しらしい。
……あまり面白くはなさそうだ。
「敵は何が出てくるんだ?」
「スケルトンよ。体は脆くてある程度破壊したら消滅するわ。こっそりと迫られたら面倒だけど、あなたなら何ともないような相手でしょ?」
……スケルトンか。
素材となった人間によって強さに違いはあるが、理紗の言い方だと雑兵のようだ。
「じゃあ俺はこっちの道を行くから」
「見つからなくても一時間後に戻ってきましょう」
「レオさん、ダンジョンはあんまり壊さないようにしてね」
理紗と紬が魔法の絨毯に乗って入っていく。
別れ際の紬の言葉は、俺の心配ではなくダンジョンの心配だった。
俺の力を信用されているからだと思おう。
俺も一人でダンジョンカメラを引き連れて入っていく。
「今回は自動音声つけずに探索するから、もし扉を見つけたら理紗たちのほうにコメントしてくれ」
未知への探索。
人に襲われる心配もなく、敵の種類以外は特に何の前情報もない。
今はただ純粋に探索を楽しみたかった。
【りょ】
【炎姫はこの階層無双モードに入っているのでこちらの視点見ます】
【ここに出てくるスケルトンは魔法に弱いからな】
【勇者も大剣出さなくていいのか?】
【必要ねえんじゃね?】
小走りでしばらく駆けていくと、ようやく敵に出くわした。
見た目はまんま人の骨で、手には薄汚れた槍を持っている。
まずは相手の情報を把握しておこうか。
【消えた?】
【スケルトンの後ろにいる】
【速すぎんだろ】
どうやらこいつは魔力を読み取ってくるタイプではないらしい。
視界から俺を見失うと、ダンジョンカメラを壊そうと槍を振るうが、カメラは紫色の絨毯に乗せられており、その程度の攻撃では掠りもしない。
じゃあ次は耐久力を調べるか。
スケルトンに近寄り、手のひらを掴んでそのまま握り潰す。
手のひらは粉々に、持っていた槍は二つに引きちぎられて地面に落下した。
【勇者の握手会にやってきたお客さんの末路】
【……二回は参加出来るな】
【どれだけ握手してほしいんだよ】
【りんご握りつぶしてイキッていた自分が恥ずかしいよ】
粉々になった骨は再生することなく、スケルトンは残った左手で穂先がついている方の槍を拾い上げる。
そしてこちらに投擲するかのように振り上げるが、俺に頭を持ち逃げされたことにより、その身はバラバラと崩れ落ちた。
程なくしてスケルトンが発光し、魔石に戻る。
敵の性能は把握できたので、後はただ真っ直ぐに突っ切ることにする。
俺の勘を頼りに進んでいくと突き当たりの部屋に出てしまった。
「……ハズレか」
どこにも扉はなく、広々とした空間には真ん中にポツンと豪奢な宝箱らしきものが置かれている。
【どう見てもミミックです】
【低階層だから変身も上手くないな。手足見えてんじゃん】
【勇者ミミック開けるつもりじゃないよね?】
【そんなまさか……】
【そういえばミミックの説明はしてなかったな】
【フラグ立てんのやめろし】
「とりあえず中身の回収だけして戻るか」
金目のものが入っていればいいんだけどな。
お宝ゲットだぜ




