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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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84話 土人形5キル達成

 

 複数の指示でも問題なく行動出来る。

 これはいい収穫だ。

 下手に行動を縛るより、土人形自身に判断してもらった方が上手くいくかもしれん。

 土人形が投げた槍はマッドドックの頭を貫通して地面に突き刺さり、マッドドックは魔石を残して消えていった。

 剣兵も己の意思で足元に刺さっている槍を抜き取り、怪我を負っていたマッドドックに投擲する。

 マッドドックは避けきることができずに、前足を地面に縫い止められた。

 甲高い悲鳴を上げるマッドドックに容赦なく土人形が迫る。

 マッドドックの左右に陣取った土人形は、左手に握られている盾を叩きつけた。


「及第点ってとこだな」


「中層のモンスターを狩れる人形って考えると十分なんだけどね」


 紬が苦笑いで答える。


【中々の活躍だな土人形。貴殿を余のライバルと認定しようぞ】

【使い捨ての駒をライバル認定すんなって、悲しくなるから】

【かっこいいよ土人形。あんたは俺の目標だよ】

【土人形に憧れを抱く人続出】

【それもこれも勇者より、土人形の方が強さに人間味があるんだよな】

【分かる。勇者の強さって意味わかんないもん】


 剣兵は持っている槍を槍兵に手渡して、自分が投げ飛ばした剣を取りに行く。

 ……剣と槍、どっちでもいいわけではなさそうだな。


 土兵は仕留めたマッドドックの魔石を無視して再び走り出した。

 魔石を回収しろって命令してた方が良かったが、流石に手持ちで運搬させるのは、戦闘に支障が出そうだ。

 土人形でも背負えるような鞄を用意した方がいいな。

 この階層はモンスターの習性ゆえに、大群を相手取るようなことはないが、階層が変わればそれもあり得る。

 そうなれば、いちいち魔石やドロップアイテムを拾っている暇などない。


 土人形はランドマーク持ちまで一直線に進む。

 もうランドマーク持ちの集団に接敵するまでに、邪魔が入ることはないだろう。

 ランドマーク持ちが土人形に気がついた。


 二匹のマッドドックの後ろに、隠れるようにしているランドマーク持ちは小柄で、さながら二匹の子供のようだ。

 だが油断してはいけない。

 ランドマーク持ちは同階層のモンスターより強く、知恵が回る。


 土人形がランドマーク持ちを守るマッドドックに斬りかかろうとした時、糸が切れたように動きを止めてしまった。

 後ろに続く槍兵も然り。


「レオ! 土人形が範囲外に出たみたい! 距離は一キロってところね」


 理紗が遠見の魔道具をいじりながら、詳細な情報を伝えてくれる。

 無抵抗の土人形はそのままマッドドックに押し倒された。

 二匹のマッドドックは腕を抑えながら首元に噛みついている。

 ランドマーク持ちはその様子を少し離れたところで見ていた。


【幸子! 立ち上がれ! お前はまだまだ戦える!】

【人形に名前つけんなよ】

【勇者、土人形に近づいてくれ! 幸子もそうしたらやる気出すから】

【誰だよ幸子と運子って名付けたやつ。後者はほぼ悪口じゃねえか】


「ランドマーク持ちは一緒に戦ったりしないのか。戦闘が開始したら逃げようとしてたぞ」


「それは潜る度に変わるね。同じ階層でも、好戦的だったり、臆病だったりして、いい個体に出会えるかは運なんだ」


 俺の質問に紬が答える。


「今の状態で土人形を動かしたら、ランドマーク持ち逃げちゃうと思うけど。私が仕留めてこようか?」


 理紗が魔法の絨毯を指差す。

 警戒心が強そうだし、立ち上がる時間で距離を離されるか。


 安全だと分かったのか、ここに来てランドマーク持ちも戦闘に参加する。

 二体の武器を口に咥えて遠くに投げると、土人形の腕に噛み付いた。

 四肢をもごうと必死に首を振っているが、土人形の腕が前後左右に振り回されるだけで土人形が負傷している気配はない。


【聖女、ズームにしてくれてありがとう】

【知ってるか? ランドマーク持ちのマッドドックは、皮鎧程度の防具だったらバリバリ噛み砕くんだぜ】

【あったなその事件。前衛だけのパーティーが勝負を挑んで返り討ちにあったやつだろ?】

【にしても土人形よく耐える……ってか効いてないのか?】

【天国のおじいちゃん。俺、生まれ変わったら土人形になるよ】



「もう一度召喚するの? 何でそんなに魔力を無駄遣いするのよ」


「何となくだ。気にするな」


 剣持ちの土人形を再び作り出した俺を見て、理紗は呆れ気味に声をかける。

 俺の命令で送り出したとはいえ、いいように弄ばれているところを見るのは少し忍びない。

 ……それが例え無傷だったとしてもだ。


 俺が新しく召喚したことによって、ランドマーク持ちが噛みついていた方の土人形が、ぼろぼろと崩れていった。

 土人形の最大召喚数は二体。

 それ以上召喚すると先に召喚していた方が土に還る。

 残された土人形にマッドドックが集中し、土人形の姿が隠れてしまう。


「せっかくの晴れ舞台だ。いいところを見せないとな」


 土人形の横腹を掴み、持ち上げた俺を見て理紗がほほを引き攣らせる。

 持ち上げた土人形をマッドドック目掛けて遠投した。


 剣持ちの土人形は、風を切るようにしてマッドドックの元まで到達し、マッドドックたちは土人形と共に粉々になって魔石に還った。

 投げられた後、両手を広げていたのはわざとか?

 そのお陰で全てのマッドドックを倒しきることができた。

 だが、これで……。


「見てみろ理紗。土人形がランドマーク持ちを倒したぞ」


「う、うん……良かった、わね」


 理紗が少し口籠もりながら俺の言葉を肯定する。

 これを見ている人たちにも、中々いいものを見せられたのではないだろうか。


【俺、生まれ変わったら土人形にだけはなりたくない】

【心変わり早くて草】

【あんなの見せられたら誰でもそうなる】


 残りの探索は検証することなく急ぎで終わらす。

 二回目の探索は特に何も起きることはなく、呆気なく終了した。



誤字報告感謝します。


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― 新着の感想 ―
人形としての晴れ舞台と言いつつ、投擲物として扱う勇者の感性に闇を見る
[一言] ???「土人形いっきまーーーす!!」
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