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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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82話 屑魔石によるコーティング

 

「……なるほど。配信切って正解ね」


 紬の説明を聞き終えた理紗は俺にジト目を向ける。


「俺はただ質問に答えただけだぞ。それより配信切ってていいのか?」


「良いのよ。休憩中は配信を止めても問題ない。階層を移動したりすれば、自動で配信が再開されるようになってるから。それよりもあなたどうするの?」


「どうするって何がだ?」


「情報はお金になる。あなたの話が本当なら莫大なお金が手に入るわよ。どこかの企業に教えたらしばらく情報を独占されることになると思うけど……」


 理紗の言葉に少し悩む。

 こちらに来てから死を望まれることも、料理に毒を込められたことは一度たりともない。

 だからだろうか、地球にやって来る前には考えられない選択。

 お金は大事だ。それは間違いない。でも……。


「配信で言うよ。別にこれは俺がお金を払って手に入れた情報じゃないしな」


「……理由になってないわよ。魔道具の売却は拒んだのにこれは無償で渡すの?」


「理由を上げるとするなら……そうだな、エアリアルでは前衛は花形の職業なんだ。先陣を切って魔物と切り結ぶ。戦士の獲物はマシな武器を持ってないと格好がつかないだろ?」


 少なくとも俺が世話になった傭兵団ではそうだった。

 そんな俺の言葉を聞いて、理紗は嬉しそうに笑みを浮かべる。


「じゃあ公開するってことで良いんだよね? レオさんがいた世界のものが必要だったりしない?」


 心配そうな顔で聞いてくる紬に魔石を取り出して答える。


「これがあれば使える。魔力さえあれば誰でも出来るさ」


「屑魔石を使うんだ……。なら誰も知らないやり方だね」


「どうして分かる?」


 地下で見た鎧のように、独自に研究された発明もある。

 あれは魔石の魔力を使っている分、少し違うが効果は良く似ている。

 もしかしたら外国のどこかで発見されていて、秘匿されているだけの可能性もあった。


「屑魔石の値段はどの国でも変わらない。だから屑魔石って言われているんだよ。貿易で屑魔石を買い取るような国はないの」


 その言葉を聞いて理紗も追加で説明する。


「屑魔石は中層から手に入るから、入手するのに結構難易度があるのよ。持ち帰らない探索者もいるからあまり数は出回ってないの」


 利用価値があるのなら、欲しがるか……。


 紬の合図とともにダンジョンカメラからコメントが流れ始めた。


【配信切ってナニしてたの?】

【意味深な質問やめれ】

【そんなことお父さんが許しません】

【お父さん(無職童貞)】

【勇者に聞いてくれた?】


「不健全なコメントはブロックするよ。レオさんから説明があるから聞いてて」


 紬からの目配せで、もう一度二人に話した説明をダンジョンカメラに向けて話す。


「あらかじめ言っておくが、ダンジョン武具のような魔法のような力は付与することはできん」


【あんな力使えるダンジョン武具はほとんどないって】

【基準があのガントレットだと、普通のダンジョン武具拾ったら外れだと勘違いしそう】

【出来ないならもったいぶって言うな】

【分かる。他に何か出来るような言い方だもんね。勇者ってもしかしてプライド高い?】


 そこで気がついた。

 披露しようにも実践する武器がない。

 俺の亜空間の中にはドロップアイテムであるガントレットと聖剣以外、武器は入っていなかった。


「……紬、ナイフでも良いから何か持ってるか?」


「これ使って。予備武器として買った分が余ってるから」


 紬はショートソードを取り出してこちらに手渡す。

 ……質はあまり良くないな。

 紬にお礼を言ってダンジョンカメラに吸精種の魔石を見せる。


「俺が今からやるのは武器のコーティング。これをすることによって、武器自体が持ち主の魔力を吸い取って強化される」


【勇者ちゃん冗談がお下手】

【そんなこと出来るわけないだろ。出来るってんなら試しにやって、やり方を一から説明しやがれ】

【本当それだよ! 今から配信録画するから二分後に説明しやがれ】

【欲望ダダ漏れの奴いるな】


「やり方は簡単だ。この魔石に限界まで魔力を流し込む」


 吸精種の魔石は魔力を吸収するが、吸収量より放出量の方が大きいため、持っているだけでは溜まりきることはない。

 だからこちらから魔力を流し込んでやる必要がある。

 魔力を流すと魔石に変化が現れた。

 持ち上げて揺らすと、硬かった魔石が揺らす度に形を変える。


「さっきまでとの違い分かるか?」


【水風船みたい】

【吸精種の魔石って硬かったよな】

【偽物?】

【俺たちをからかってんだろどうせ。今から録画開始するからちょっと待ってください】


「それが限界まで魔力を溜めたってこと? そうなるんだ……」


「こうなればもう魔力を込める必要はないし、魔力が抜け落ちることもない」


 理紗の質問に答える。

 そして魔石の下にショートソードを持ってくると、魔石を握り潰す。

 液状化した魔石はショートソードに落ち、刃から持ち手まで満遍なく塗りこんでいった。


「こうすることで塗り込んだ武器は、所有者の魔力を吸い取って強度を高めることができる。持ち手まで塗らないと、剣を持った時に魔力を吸い取らないから少し気をつける必要があるけどな」


 己の力で武器に魔力を纏える者は、あえて刃先だけ塗り込んで相手の魔力を利用する者がいるが、それは説明しなくても良いだろう。

 これは自力で魔力を纏えない者が戦うための応急処置だ。



 こんな感じで良かったのか? 

 分かりやすい説明とは言えないが、やって見せたことによって手順は分かってくれたはず。

 問題は魔力操作が出来る者が少ないことだが、紬のようにすぐ覚えれる人も今後出てくるだろう。


【今のうちに屑魔石買い占めろ】

【フリマサイトに出てた屑魔石が続々と出品キャンセルになってる】

【みんな情報仕入れるの早いな】

【どれだけ強度が出るのか知りたいな】


 コメントがすごい速さで流れる。

 それを見て理紗が手を二回たたいた。


「とりあえず説明はこれまで! 探索を再開するわよ」



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