81話 ダンジョン武具
マッドドッグの魔石を回収すると、口を開く。
「投げた石が空中で崩壊したのを見えたか?」
「いや、全く」
無表情で紬が答える。
【中層の魔物は拳銃くらいじゃ貫通出来ないんですぜ旦那】
【あんなの人間相手に投げられたら防ぐことなんて不可能】
【目で追うどころか何も見えなかったもんな】
【こっち視点いつのまにかマッドドッグが穴だらけになってた】
【スローでもかすんでるってどれくらい速いんだよ】
「身体強化で体が強くなっても全ての武器が耐えれるわけじゃない。魔力を込めたところで限界があるんだ」
「……武器に魔力を込める。そんなこと出来たんだ」
エアリアルでは強力な魔物ほど武器を使わず、己の肉体や魔法を使って戦う。
その例に漏れず、鏡花も頑強な体を使って戦うタイプだった。
……これも知られてない情報なのか。
そうだとしたら前衛はかなりきついだろうな。
普通の武器だと、魔物の攻撃を防いだだけですぐに壊れるだろう。
「……本当にドロップ武具があって良かったな」
「ドロップ武具は頑丈だからね」
「何でドロップ武具が頑丈なのか分かるか?」
【ドロップ武具の性質は分かってないんだよな】
【勇者知ってるの?】
【未だ複製に成功してないし】
【鉄や骨で出来ているように見えても、強度が違いすぎるし後百年は分からないって言われてるね】
「え〜と、何でだろう?」
紬が足元に出ているコメントに目を通し、最後には首を傾ける。
俺が持ったダンジョン武具はあのガントレットだけだが、そこで感じた力……。
魔力による武具の保護が出来ないのにも関わらず、前衛がダンジョンに潜れているとするならば根本的な力は同じなのだろう。
「恐らくだがダンジョン武具は自然と所有者の魔力を吸い上げている。少なくとも俺が手にしたガントレットはそうだった。他の所有者もダンジョン武具を手にした奴は疲労が早かったりしないか?」
「聞いたことある、かも……」
紬は心当たりがあったようで、少し自信なさげに呟く。
【ホラ話じゃないよな?】
【実際にダンジョン武具持ちは、外で戦う時とダンジョン内で探索する時とでは、継戦能力に差がある】
【理由もそれらしい。これは色々検証が必要】
「そこでさっきの石の話に戻るんだが、物に魔力を纏わせる限界量ってのがあるんだ。魔力で石を限界まで保護したところで、身体強化で投げつけたらすぐに崩壊してしまう」
「武器も一緒ってことだよね?」
「そうだな。俺が全力で使える武器はあの聖……大剣くらいだ」
危ない、危ない。
聖剣という言葉は理紗にあまり使わない方がいいと言われていた。
宗教的な問題で聖剣という呼び名を使うと、面倒な輩に絡まれる可能性があると言う。
【勇者はドロップ武具の作り方知ってるんじゃね?】
【聖女、勇者に聞いてくれ。飴ちゃんあげるから】
【報酬軽すぎて笑う】
「カメラ一旦停止。……これでよし。レオさん……もしかしてダンジョン武具の作り方って知ってたりする?」
「知らんな。あんな付加効果をつけれるような奴は、あちらでも珍しい」
ドワーフやエルフなら出来るやつもいる、程度のものだろう。
「そっか。なら良かった──」
「だけど武器の保護だけならそんなに手間はかからない」
笑みを浮かべたままの紬が固まった。
しばらく経過して動き出した紬は、理紗の元まで走って行く。
「──どうしようりっちゃん!」
「待って! またレオが何かしたの?」
俺はただ紬の質問に答えただけなのに、何という言われようだ。
そして紬は先程の会話の説明を始めるのだった。
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話の流れ的にもう1話追加で投稿しました。




