74話 魔法の絨毯の説明
次の階層への扉は既に開いていた。
確か次は二六階で、上層から中層へと変化する。
「配信始めるわよ。レオ、変なこと口走らないでよね」
「分かってる」
俺の部屋で鏡花を怒らせたあの一件以来、理紗は口を酸っぱくして言われている言葉に返答する。
ダンジョンから帰ってきた時に分かったが、理紗や紬は変な連中に男の存在を探られている。
間違った情報が出回ってしまうと、気が気では無いのだろう。
今回の配信は合同配信というもので、俺に送られたコメントが理紗や紬も見えるように設定されてある。
これはまだ文字を覚えきれていない俺への配慮だった。
理紗が自分のダンジョンカメラを操作すると、残り二人のカメラも起動して浮かび上がった。
【配信ありがと! こんな短時間で探索復帰するとは思わなかった】
【あれからずっとSNSのトレンド1位だよ勇者様】
【廃ゲーマーの炎姫がこの短期間で復帰だと……】
【勇者のあそこは勇者級って噂本当ですか?】
「今回は階層がリセットされる前に更新したかったの。変なコメントは排除するからそのつもりでコメントしてね」
先んじて理紗がダンジョンカメラに向けて声をかけている。
それに紬も続いた。
「レオさんのドロップアイテムの情報も少しは公開する予定。楽しみにしててね」
これは鏡花からの依頼だが、俺のためでもある。
今もギルドには数えきれないほどの電話がかかっているらしく、業を煮やした連中がギルドの周りに集まってきている。
だから、この情報を公開することによって、何がなんでも俺と接触しようとする迷惑な連中には、これで諦めてもらうようにと……。
【マジか! 新たな発見あったの?】
【どこかに売るのか?】
【ダンジョンアークが買取のために動いてるって話だけどそれと関係ある?】
【ギルドは何も声明出してないな】
「まずは今後の探索について話していこうか……。レオさん、絨毯出してくれる?」
紬のお願いに俺は三枚の魔法の絨毯を取り出す。
赤色の絨毯に理紗が乗り移り、黒色の絨毯に紬が乗り込む。
そして紫色の絨毯にはダンジョンカメラを乗せた。
【まさかの固定カメラ】
【動いた時にダンジョンカメラ落ちない?】
【勇者は徒歩?】
【前衛だから仕方ない】
【勇者のあそこは勇者級って噂本当ですか?】
【消されてやんの】
【変なコメントって自覚なかったのか……】
「魔法の絨毯に乗っている人は高速移動の反動を受けることは無いわ。この上って物理法則を無視しているみたいなのよね……」
理紗が自分が乗っている絨毯をポフポフ触りながら説明する。
これは色々なものを乗せて検証した結果、人以外も問題なく運べることが分かった。
……まあ前もって絨毯にお願いする必要があるが。
【ますます価値高まったな】
【これがあれば戦士の需要なくなるな】
【移動砲台の完成じゃん】
【売る予定は?】
【これを一つのパーティーが持つのは非常に勿体無い。海外にいくつか売り飛ばすべき】
【お前誰だよ】
「売る気はない、というよりも売っても意味がないのよね、この絨毯」
「これもギルドの認定では制約付きのマジックアイテムの一種みたいなの。所有者のレオさんが認める相手しか使えないんだよ」
【やっぱり制約があったか。強すぎるもんな】
【これは貴重な情報。こいつを手に入れるためには自分でサンダーバードを倒す必要があるってことか】
【それが本当ならな。嘘の可能性もある】
「疑っている人は、認めてない人が乗った時の映像を明日の夜、ギルドが公開するからそれを見て判断して」
【ありがてえ】
【勇者が認める相手って少し意味深】
【両手に花状態だからな】
【お父さんはそんなこと許しません】
【何人いんだよ炎姫たちの両親は】
初の総合評価1000越えを達成出来ました。
誤字報告も助かります。
報告次第すぐに訂正させてもらいますのでお気軽にお伝えください。




