表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/257

58話 理紗の忠告

 

 理紗がどこか俯きながら俺の言葉を否定する。

 だけど俺は彼女達のパーティーに入れさせてもらっている立場だ。

 彼女達は俺に助けられた借りがあると言ってくれているが、それを理由にして彼女たちをずっと縛ることはできない。

 孤立無援な俺とは違い、彼女達は他の友人も家族もこの世界にいるのだから。


「その顔では分かってないようだから、耳かっぽじってよく聞きなさい。この世界であなたの力は、あなた自身が想像している以上に強力で、他の人間の力はあなたが思い描いているより遥かに非力なの」


 私を含めてね、と小さく呟く。


「鏡花が理紗達には才能があると言ってただろ?」


「そうね。魔力の扱いだけを見れば世界でも上位の力がある。でも私たちは根本的に魔力量が未熟なの。その時も鏡花さんが言ってたでしょ?」


 ……魔力。確かに魔法使いにとっては死活問題だとは思うが、それこそダンジョンを潜っていると自然に強化されていくものだ。


「探索を続けていったらその程度の弱点なんてすぐ解決出来るだろ?」


「それは他の人にも言えるわ。あなたが誰と探索しようとしても、初めのうちは全員足手纏いにしかならない。私たちが潜っているダンジョンの仕様だと、同じ階層にいるだけであなた以外の仲間も自然に強くなっていってしまう。それなら別に私たちに固執する必要はないんじゃない?」


 何故か泣きそうな表情で語る理紗を前にして何も言えなかった。

 今の自分が仲間を増やすなんて選択肢があるはずもない。

 理紗達でさえ、いつ切り捨てられてもいいような心構えをしている状態だ。


「それは……分からん。俺は今のところ、ここから離れたいと思ったことがないからな」


「……有名になると色んな人が寄ってくるわよ」


「僕を罵ってくださいって奴か……確かに驚いた」


「なぁ! 聞いてたの?」


「あれだけ距離が近かったら聞こえん方がおかしい」


 理紗達とダンジョンに向かった時、変な連中に話しかけられていた。

 その男も発言後、近くにいた他の男性に連れて行かれていたから、二人に危険はなかったのだが、未成年の少女に話す内容としては中々に衝撃だったのを覚えている。


「あれは忘れて! あんな変態どものことじゃなくて、あんたに近づいて甘い蜜を吸おうとしてくる連中のことよ」


「ダンジョン党のような奴らのことだろ? しつこかったら二、三人半殺しに……しない。冗談だからそんな目で見るな」


 ジト目を向けられて謝罪する。

 理紗はそんな俺の言葉に大きくため息を吐いてこちらに手を差し出した。

 握られているのは理紗が持つ携帯と呼ばれる道具。


「それ、あなた用の携帯。これを常に持ってて。何あったら私に連絡するように……」


「いいのか? まだ一度も借金返せていないのに……」


「借金なんてすぐに返せるようになるんだから気にしなくていいわよ。それより電話だけでも使い方を説明するから覚えてね」


「──私の連絡先も入れてくれてある?」


 飲み物を買いに行った紬が部屋に戻ってくる。

 ニヤリと笑みを浮かべて自分の携帯を揺らしてみせる。


「紬と鏡花さんの連絡先は入れてある。だけど鏡花さんにレオの連絡先を教えちゃうと……」


「しつこくかかってきそうだね」


「でしょ? だからそこはレオの意見を聞いてからの方がいいかなって思って伝えてないの」


 どうする? と理紗が聞いてくる。

 電話とは遠くの人と連絡が取れるようになる道具だと教えてもらったが……。


「連絡が来て嫌な奴がいるのか?」


 それが悪口でないなら嫌う理由が分からん。

 俺に不都合でもあるのだろうか?


「……分かったわ。鏡花さんにも伝えとく。なるべく抑えてもらうようにするから」


「俺がダンジョンの外にいるならいつでも構わんぞ。暇してることの方が多いと思うからな」


 理紗はポカンと口を開けて俺を見つめると、紬の咳払いで頭を振り払う。

 その後、顔を赤らめた理紗に携帯の使い方を教わる。

 まだ二人の文字は分からないため二人の名前は絵文字で代用した。

 理紗は炎、紬は羽、鏡花は犬の絵文字で分けられていた。

 これならば一目で分かる。


「これで今日は終わりかな? 後は私たちがいない時のために、ギルドで食事を取れるように一緒に食べに行こうか」


「そうだね。レオさん、今日の勉強で何か気になっていることある?」


「勉強のことじゃないんだが、理紗が言っていたことで少し聞きたいことがある。魔法使いはモンスターの肉を食べることでも魔力を増やせるんだよな?」


 この世界の戦士は魔力を扱う感覚が分からない人がほとんどのため、魔素が宿った肉を食べても体に取り込むことが出来ない。

 だから高い魔素が宿っている肉は魔法使いの強化用に使われていると鏡花が言っていた。


「そうだけど、それがどうしたの? 今あなたは県外のダンジョンには行けないでしょ?」


「いや、肉はかなりの数持っているんだが……」


 虎の子の魔物の肉。

 これも彼女に食べられるのなら本望だろう。

 取り出した俺の体ほどの大きさの魔物の指を見て理紗が目を見開く。


「なんで私の体を持ってきてるのよ!」


 理沙の前世。魔王の指先を見た理紗が声を荒らげた。

お読みいただきありがとうございます。


面白いと思われた方、お手数おかけして申し訳ございませんが、ブックマーク、下の⭐︎にて評価していただけると作者のモチベに繋がります。


お気軽に応援の程、何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ