57話 他のダンジョン
勉強も進み、ひらがなを中心に学んでいく。
理紗は何のためにここに来たのか分からないくらいゲームに夢中だった。
「そうだ! お金が入ることだし、レオさんの欲しいものとか聞いておかないと」
「……俺の欲しいもの。当面の食糧と料理道具かな? 魔物の肉が余ってるんだ。それを調理したい」
「料理道具はここにも……」
「紬! レオが言ってるのは多分強力な魔物の素材。一般的な火力では調理出来ないよ」
「あっ……そっか。それならお金で手に入れるより特殊なダンジョンに潜った方が早いかも」
「ダンジョンで魔物に焼いてもらうのか?」
「そんなことしないよ。魔石が落ちない代わりにお肉がドロップするダンジョンがあるって前に説明したよね? そこのフロアボスがたまに料理器具を落とすの」
ずいぶんと面白そうなダンジョンだ。
個人的にはそっちの方が探索してみたい気もする。
ただ続く理紗の忠告に首を傾げる。
「でもレオが持っている素材を調理するとなったら、かなり深い階層を潜らないといけないかも」
「浅い階層でも料理用の魔道具は手に入るんだろ?」
「低階層のドロップ品は火力が弱いのよ。あなたの持っている肉だと火を通すのは厳しいかもしれないわ」
それは時間がかかりそうだ。
まずはまとまった料理を買い取って、アイテムボックスに放り込んでいくことが先決か。
「それまでにレオさんの住居問題もどうにかしないとね。レオさんがそのダンジョンに潜りたいってなったら東京から出ないと行けないから」
「それより先に条件武器の新しい法案をどうにかしないと。ギルドが抗議はしてくれてるけど、頭の固い連中が納得するとは思えないし……」
そういえば聖剣をどこかに預けなくてはいけないって話があったな。
ここから出て行ってダンジョンに潜るとなると、野宿する必要が出てくるのか。
そしてその後は紬と勉強を再開する。
先程までは理紗も時々口を挟んでいたが、こちらに話しかけてくる様子はない。
コントローラーの背面を指でカリカリとこすりながら、ぶつぶつ何かを言っている。
「どうした理紗。もう帰りたいのか?」
「そんなことはないけど……」
「ちょっと下に降りて飲み物買ってくるね。だからしばらくは休んでいていいよ」
紬が部屋から出ていってしまうと少しの沈黙が流れる。
「あのさ……レオはしばらく私たちと一緒にダンジョン に潜ってくれるんだよね?」
「そうだな。そっちの迷惑にならなければ、だけどな」
「違うわよ。選ぶのはあなた。私じゃない」
俺はその言葉の真意を分からずに困惑する。




