50話 つまみ食い
「まさかレオの味方認定が必要とはね。誤算だったよ」
鏡花が赤い絨毯の上に横になりながら呟く。
質問していくと、魔法の絨毯は鏡花のことを嫌っているわけではなく、乗せる資格がないだけなのが分かった。
試しに俺が鏡花を乗せることはできないか? と頼んだところ、拒絶されることなく普通に利用できるようになる。
「他の人に使えないのが分かって良かったんじゃないかな。売ってから分かったんじゃ後でクレーム入ってくるだろうから」
下手したら国家間での揉め事になり得ると理紗は語る。
俺も段々魔法の絨毯を気に入っていたため、内心ほっとする。
そして今度は魔法の絨毯の性能を見ていった。
訓練用の的を取り出し、赤い絨毯に乗った理紗が魔法を放つ。
理紗の感覚では三割増しの威力になっているらしい。
残り試したのは傷を癒す白の絨毯と、黒の絨毯。
白の絨毯の回復力は対象の生命力が高いほど効き目が悪くなる。
鏡花が自傷して乗ってみた時と、俺が絨毯に乗っていない時の回復力が大体同じ。
逆に俺が絨毯に乗っても回復力はほとんど変わらなかった。
そして残すは問題児の黒の絨毯。
試しに理紗に乗ってもらうと……。
「変わってないぞ、理紗」
「違う能力なのかな?」
二人の言葉を聞いて動揺する黒い絨毯。
理紗を運びながら何かをアピールしようとするが、こちらには伝わらない。
三人で話し合っていると、ギルドの関係者らしき女性が降りてきた。
「鏡花さん。お部屋の準備ができました」
「そうか! 分かった。ありがとう。ちょっとあんたに聞きたいんだけど、そっちから理紗のことはどう見える?」
「理紗ちゃんですか? どこにもいませんけど……」
不思議そうに答える女性。
冗談で言っているわけではなさそうだが……。
試しに理紗に絨毯の上から降りてもらうと、口を抑えて驚いている。
「理紗ちゃん……どこから出てきたの?」
「え〜と、ずっと座ってました」
その後何人かに見てもらうも結果は同じ。
誰も黒の絨毯に乗っている理紗を見つけることは出来なかった。
ある程度の索敵能力を持つ人には効果はないのだろう。
理紗と鏡花は元とはいえ、エアリアルの住人。
魔力の気配を探ることなど造作もない。
逆に魔力に疎い、戦士型の魔物には効果的な力のようだが……。
「あまり使い道がないな」
速さは紫に劣るし姿を隠蔽できない相手なら、ただの空飛ぶ絨毯にしかならない。
黒い絨毯は何を考えたのか、魔石が置かれてある場所に飛び込んだ。
黒い絨毯は紫の絨毯を連れてくると、同時に飛び出す。
それを見た理紗が疑問を浮かべる。
「あれ? 速さ一緒?」
「本当だ。手加減してんのかな?」
そして黒い絨毯は、どこか褒めて欲しそうにこちらに近寄ってきた。
後ろには競走をした紫の絨毯が隠れるようにしてついてきている。
やる気を出してなかった?
その可能性も確かにあるが、あの時は何度競走さしても結果は変わらなかった。
あの時と今、変わったものといえば……。
「おい……お前少しデカくなってないか?」
俺の言葉を聞いた黒の絨毯が逃げていく。
不審に思った理紗が、先程黒い絨毯が突っ込んでいった魔石が置いてある場所に近づいていくと……。
「レオ! 黒い魔石が無くなってる」
俺と鏡花は目を合わせると、事情を聞くために黒い絨毯を捕まえにいった。
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