49話 魔石の見積もり
まずはモンスターの魔石を取り出す。二十五階層までの魔石は三人で分けるとして、大体一週間はいいものものを食べて暮らせるくらいの稼ぎのようだ。
これは鏡花の方からの意見なので、節約すればもうしばらくは持ちそうだ。
次に取り出したのはデスパレードで手に入れた魔石。
初めに戦った俺とそっくりの姿をした魔物と筋骨隆々のゴブリンの魔石は通常の赤色で、大きさは他のものと比べるとかなり大きい。
この二つは食糧に換算すると、安く見積もっても一年分は贅沢なご飯を食べて暮らせるほどに売れると言う。
「魔石の価値は供給が多すぎて年々下がってきてるんだよ。他の属性石と比べるとどうしても価値は落ちるんだ」
「いや、十分だ」
言いにくそうに鏡花が伝えてくるが、一匹の魔物を倒すだけで一年間ご飯を食べて行ける額を稼げる。
あちらの冒険者が聞いたら地団駄を踏んで羨ましがるだろう。
残りの魔石はゴーレムが落とした土色の魔石と、電気を放っていた巨大な鳥が落とした黄色い魔石、鱗粉を撒き散らしていた蛾の魔物の魔石は緑色だった。
この魔石の大きさは前者の魔石と比べると大きさには劣るが、その三倍の価値はあると言ってくれた。
たかが魔石でこんなに稼げるとは予想を遥かに超えていた。
そして最後に取り出した異形の勇者の魔石は、黒く染まっていた。
亜空間から取り出したその魔石を見た二人が驚きの声をあげる。
「そんな色の魔石は見たことない……」
「レオ、それは自前の魔石か? デスパレードで手に入ったものじゃないよな」
「最後に戦った……魔物が落としたものだ。その様子では本当に見えてなかったんだな」
鏡花の質問に嘘で返す。
勇者と名乗った魔物の存在。
正直に真実を伝えることが出来なかった。
金の心配はとりあえずなくなった。
後は検証のために魔法の絨毯を取り出す。
これは理紗も利用できるか確認するためだったんだが、鏡花も参加の意思を示した。
俺にしがみついてきて少し鬱陶しかったので許可を出したのだが、何故か鏡花は絨毯に乗ることが出来ずに落とされる。
優しく足を乗せても、急いで乗せても結果は変わらない。
尻餅をついて地面に落ちる鏡花に、理紗が同情の視線を送る。
「鏡花さん。引きこもりで少し太っちゃったんじゃないですか?」
「馬鹿なこと言うな! レオが乗れるのに私が体重制限かかるわけないだろ! 理紗とレオが乗れてうちが乗れない理由……。もしかするとこれかなあ……」
鏡花が自分の胸元に手を当てる。
そこには紬に負けず劣らずの豊満な胸が揺れていた。
「──そんなわけないでしょう! 何でバストで制限……私も人並み以上にはあります!」
「分かんないぞ。もし紬が乗れなかったらどうする?」
形勢逆転。何故か悔しがっている理紗を無視して俺は絨毯に近づくと声をかけた。
「鏡花を乗せるのは嫌なのか?」
鏡花を指差しながら聞いてみるが、魔法の絨毯には反応がない。
「理紗を乗せるのは問題ないんだな?」
理紗を指差しながら聞いてみると、今度は全ての絨毯が上に上がった。
以前のやりとりを覚えてくれているようだ。
質問を重ねていく。
数分後、地下訓練場には魔法の絨毯を乗りこなす鏡花の姿があった。
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