48話 食糧提供
みんなを連れて地下にある訓練場まで来ていた。
一時的に他の利用を禁止しているため、自分たち以外はここにはいない。
そこで料理を取り出してはギルドに所属しているアイテムボックス持ちに手渡していく。
彼らは全身を覆うように奇妙な衣を纏っており、背中に酸素ボンベと呼ばれる呼吸を助ける道具を背負っている。
「これで五人目。レオさん、どれだけ持ってたの……」
「売ってくれないところも多かったからな。買えるところで買うようにしてた」
「あんなの食べるくらいだったら自分で料理すれば良かったじゃん」
「そうだな」
初めは紬の言う通り、魔物を焼いて食べていた。
単純な料理方法だが、それでもあのパンと比べると何倍もマシだ。
だがそれもいつからか出来なくなる。
強力な魔物は死しても頑丈で、調理するのに特別な火力がいる。
魔王軍に近づいていくにつれて、弱い魔物は自然と淘汰されていき、溜め込んでいた食料も底を尽きた。
俺に調理魔具を売ってくれるところはどこにもなかったため、料理は断念。
道中狩った魔物はほとんど料理と交換するようにしていた。
行く先々で毒入り料理を用意出来るのは少し不思議に思っていたが、彼らは太陽の教会の援助を受けていたのかもしれない。
「何か変なこと聞いちゃったかも。ごめんなさい」
「気にするな。料理出来なかったのは俺の都合だ」
申し訳なさそうに謝罪してくる紬に答える。
そして最後の料理を出し終わると、鏡花が口を開く。
「レオが取り出した料理、毒の強さはバラバラなのか?」
「ああ。多分な」
「多分って……よくそんな認識で生きてこれたね」
「俺にとっては全部、不味いだけの食料だ」
「じゃあ僕はそんなレオさんのために料理作ってくるね。何か注文ある?」
その言葉を聞いた紬が聞いてくる。
「食べられたらなんでもいい。腐っている材料を使っても腹を壊すことはないから、そんなに気にしないで結構だ」
「そんなことするわけないよ! 見ててよ。絶対美味しいって言わせるんだから!」
俺の言葉が紬の逆鱗に触れてしまったのか、頬を膨らまして宣言する。
そして外に出ていく紬を見届けると……。
「じゃあレオ、さっきの毒物──」
「──料理だ」
鏡花が失礼なことを言って来たので訂正する。
あれは毒が入っているだけのただの料理だ。
「……分かった。あの料理は後で返してほしいか? それなら少し時間がかかるんだけど……」
「この世界で普通に食糧が手に入るんだったらいらないな」
「それならばギルドの買取になるな。色々調べないといけないから見積もりには少し時間がかかる。レオは今まとまった金が欲しいんだよな?」
宿代は鏡花のお陰でしばらく浮いた。
「後は飯代を稼ぎたい。亜空間の中にある程度の食糧がないと不安なんだ」
いつ周りに裏切られてもいいように……。
亜空間にある食糧の山は少しだが心を楽にしてくれる。
理紗はそれを聞くと少し眉を寄せるが、何も言ってはこなかった。
「それなら今回のドロップ品出してみてよ。魔石くらいなら今すぐ買取出来ると思うんだ」
鏡花の言葉に従って、地面に今回の収穫を並べていった。
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