47話 没収
理紗から説明を受ける。
下層に潜る探索者はダンジョンの配信義務はない。
だから仮にドロップした人がいても公表されてなければわからないようだ。
そして魔法の絨毯が市場に出たことはない……。
これは相当な額を期待できると胸を膨らませていたんだが、さっきの鏡花の言葉。
買い取りたくても、まともなところでは失敗した時のリスクがデカくて買い取ることは困難。
逆に声をあげる連中は買い叩こうとしている奴がほとんどなので、口車に乗せられないようにと、注意を受けた。
「うちらの誰かが常についてあげられたらいいんだけど」
「鏡花さんについて行ったら、面倒な連中に絡まれる頻度が増えるだけですよね?」
理紗の言葉に唇を噛み締めて悔しがる鏡花。
だが俺も先立つものは必要だ。
「鏡花、ガントレットを手に入れたんだが買わないか? この前武器が必要だと言ってたろ?」
俺の言葉を聞いて紬と理紗が頭を抱える。
その反対に鏡花は満面の笑みを浮かべると……。
「結納品?」
「師匠、話を聞いてた? レオさんは買うかって聞いたんだよ?」
「レオ、残念だけどあのドロップ武器は鏡花さんには支払いきれないと思うわ」
金が足りないか……。
「分割払いでもいいぞ。今日の宿代にも困ってるくらい金がないんだ」
だが俺の言葉に何故だか鏡花が待ったをかける。
「……そりゃ駄目だ。そんなこと許可したらギルドに示しがつかない。こんな適当やってるけどけどギルドの幹部やってるからね」
そう言う鏡花の表情は歯を食いしばり、拳を強く握っている。
彼女なりに我慢しているようだ。
「師匠! レオさんに宿のこと先に話した方がいいんじゃないかな? 今のままだと不安だろうから」
「そうだな。レオはしばらくギルドに泊まってくれ。部屋を一室用意してある」
「ここは高いんじゃないか?」
ギルドの幹部である鏡花が住んでいると言うことは宿代もそれなりにするのだろう。
しばらくは節約していきたいと考えていたから、首を縦に振ることはできなかった。
「もちろんしばらくは無料だよ。最低一か月はそこで過ごしていいし……うちの部屋に泊まるのならいっし──」
「政府が変な法案を通してきたの。話せば長くなるんだけど……」
鏡花の言葉を遮るようにして理紗が説明を始める。
どうやら俺は、政府に指定された機関に聖剣を預けないと宿に泊まることができないらしい。
聖剣を調べる人は戦闘能力を持たない、ただの研究者。
俺の予想だが十中八九、死人が出る。
俺も聖剣を他人に預ける真似はしたくないから残された道は、自分が住む土地と家を買うか、ギルドに住むこと。
今回の政府の法案は、ギルドへの強制力はないらしい。
政府とギルドの立場がどうとか難しそうなことを言っていたが、ほとんど理解できなかった。
「今の話……分かった?」
「大丈夫だ。問題ない」
「そう……じゃあそう言うことにしておくわ」
理紗の含みのある言い方はなんなんだろうか……。
変に聞くとボロが出そうだから黙っておく。
そして鏡花に改めてお願いすると快諾してくれたのだが……。
「すまん。レオ忘れてた。ギルドに泊まるのならレオの持ち物の中に、没収しとかないといけないものがあるんだけど……」
「そんなの聞いてないですよ鏡花さん! そんな条件後出しにするのは卑怯じゃないですか」
「さすがにドロップ品が交換条件だったら割に合わないよ」
二人が鏡花に詰め寄る。
「ドロップ品を没収するわけないだろ……。これに関して言えばギルドの決まり事のせいなんだけど……レオの料理を預かりたいんだ」
「あ!」
その言葉で二人は何かに気がついたようで動きが止まる。
「美味しくないぞ?」
「食べるんじゃない! 探索者が使う毒物って免許がいるんだよ。廃棄にも気を遣わないといけないからな」
確かに俺が持っている料理は大なり小なり毒が入っているが、あれも貴重な食料だ。
「今日食べる分くらいは残してもいいか?」
俺の言葉を聞いた紬がつかつかとこちらに歩いてきて、優しく肩を掴む。
「僕が作る手料理とレオさんが持ってる料理。どっちがいい?」
「紬の手料理」
「なら体に悪い食べ物はポイしましょうね」
柔らかく微笑んでいる紬は謎の圧力を放っていた。
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