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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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46話 話し合い

 

「ちょっとぐらい、いいじゃんか……減るもんじゃないんだし」


「静かにしてくださいね鏡花さん。こっちはチームでの話し合いに切り替えてもいいんですよ」


 数分後、ぶつぶつと愚痴をこぼす鏡花を連れて理紗が戻ってきた。

 何があったのだろう? と不思議に思うが、向かいにいた紬が大きく首を横に振っている。

 あまり聞かない方がいいようだ。

 戻ってきた理紗はこちらにも鋭い目を向ける。


「レオも何で跳ね除けないのよ。痴女に襲われるところだったのよ」


「残念でした〜。レオは殺気さえこめなければある程度無視してくれます〜。そんなのも分かんないようではせいさブヘっ──」


 舌を出しながら煽る鏡花に苛ついたのか理紗が机の上に置かれてあった雑巾を投げ込んだ。

 小さくガッツポーズをする紬。鏡花は備え付けの紙に唾を吐き出している。


「何すんだよ! 汚いの口に入っちゃったじゃんか!」


「汚くないですよ?」


 文句を言う鏡花に理紗がバッサリと切り捨てる。


「汚いって、変な臭いがした──」


「鏡花さん。知ってます? 使用後の雑巾は応接間に置いていくことは禁止されているんです。だからここにあるのは新品のものだけ。文句があるのなら清掃員に言っていただかないと……」


 私はここでバイトをしていたから分かるんです、と得意げに理紗は語る。

 だが理紗は雑巾を拾う時にわざわざ遠いものを手にした。

 ……つまりはそういうことだろう。

 鏡花は口をもごもごさせると諦めたようにため息を吐き、俺が座っているソファーに座る。

 それを見て理紗が声を上げた。


「あっちょっと!」


「じゃあ今回の探索の話をするか。ん? どうした? 何か文句でもあるのか?」


「……ないですよ」


 どこか勝ち誇った顔を浮かべる鏡花を見て、紬が苦笑する。



「師匠、そんなに威嚇してないで話を進めましょう。一応師匠もギルドの幹部なんだから暇じゃないでしょ?」


「いいんだよ。他の仕事は後回しにしてるから。今なら誰も文句言う奴なんていないよ」


「それもそっか……」


 鏡花の言葉に紬はどこか納得している。

 サボりすぎて諦められているのだろうか……。

 話に入っていけない俺は、鏡花が淹れてくれたお茶を飲みながら黙って聞くことにする。

 向かい側のソファーに座った理紗が口を開いた。


「鏡花さん、この件はどうなるんですか?」


「難しいところだね。ドロップ品の魔法の絨毯はいくつか買い取るべきなんじゃないかって話は出てるけど、いかんせんお金がね……」


「ギルドで買えない? 何の冗談ですか?」


「解析しようにも物が物だからね。失敗して台無しにするリスクは負えないんだと」


 ギルドの説明を受けた時に、新種の魔道具を解析して複製が出来ないか調べると言っていた。

 出来るだけ高値で買い取ってくれるらしいが、実際に解析して成果が出ているのはほんの一部らしい。


「一部の幹部は安値で買い叩こうとしてるみたいだけど、幹部会議でフルボッコにあってたから気にしなくてもいいよ。今後ギルドの名を騙ってドロップ品を掠め取ろうとしてる奴がいても、相手にする必要はない。レオも覚えてて」


「レオさんが心配だな。多分この中で一番ドロップ品の価値がわかってなさそうだから……」


「レオ! 誰かにドロップ品をくれって言われてもあげちゃ駄目よ。一人にあげてしまうとぞろぞろと他の連中もやってきちゃうから。変な人に言い寄られてない?」


 理紗が幼子に言い聞かせるように伝えてくるが、ただで物を譲ってあげるほど優しくはない。

 物乞いが、次の日には夜盗をしているような世界で生きて来たんだ。

 他人に対する思いやりは、ここにいる誰よりも希薄だと思っているが……。


「そういえばダンジョン党の誰かが魔法の絨毯を譲ってくれって言ってきたな……」


 そのことを告げると三人の目の色が変わる。


「何て言った? まさかタダであげるとは言ってないよな?」


「ここに来てまだ金を手に入れてないんだぞ。金になりそうな物をタダであげる余裕はないな」


 鏡花の質問に正直に答えると三人が安堵の息を吐く。


「その言い方なら向こうはお金で解決しようとはしてきてないのね? 馬鹿で助かったわ。下手な額を提示してきて、あなたが受けちゃったら面倒なことになってたから……」


 理紗には俺がどう見えているのだろうか? ドロップ品を売り払う前に相場を調べるくらいの知恵はあるつもりなんだが。


「レオさんはなんて言って断ったの? 結構しつこく食い下がってきた?」


「俺に話しかけてきた男は金持ちそうだったから、ドロップした魔物を教えてやった。欲しいのなら自分で取りに行けばいい」


 最悪自分で行かなくても、金で人を雇ってもいい。

 (まつりごと)をしている連中なら力も相応にあるはずだ。

 だが理紗たちは俺の言葉を聞いて、何ともいえない視線を送る。


「うん。よく分かったよ。これは結構時間かかりそうかな?」


「うちが手取り足取り教えるから心配ないよ」


「鏡花さんは忙しいですからね。私たちに任せてください」


「仕方ないだろう。俺はここに来たばっかりなんだ……」


 人を問題児のように言ってくる三人に反論するが、エアリアルにいたとしても俺の対人経験は多くない。

 尻窄みに小さくなっていく俺の言葉を理紗が否定した。


「多分勘違いしてると思うけど、あの魔法の絨毯はレアドロップ中のレアなの。あれを取りに行ける人なんて私は知らないわよ」



お読みいただきありがとうございます。


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