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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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44話 帰還

 

 目を開けると年配の男性がポカンと口を開けてこちらを凝視していた。

 確かここに来る時に世話になった門番の男性だ。

 名前は岩城だったか?


「こりゃたまげた。お前さん帰ってこれたのか……」


「何かまずかったのか?」


「いやいや、そんなことはない。よく帰ってきたな」


 岩城はそう言うと腰に巻いてあった小さなポーチから小さな紙を取り出し、こちらに差し出す。


 そこには手書きで何か書かれているようだが、俺には読めなかった。


「鏡花ちゃんから伝言だ。これを持ってギルドに向かって欲しいって話なんだが……今外に面倒な連中がいてな。変なのに絡まれたら無視して向かってくれ。ギルドへの道は覚えてるか?」


「大丈夫だ。それより面倒な連中とは一体なんだ? 盗賊の類か?」


「違う違う。マスコミの連中が情報を取るために張り込みをしてんのと、ダンジョン党の政治家が出張ってきてんだ」


 マスコミという言葉は聞いたことがないが、政治家と言うワードは鏡花の説明にあった。

 この国での政治を行うものの総称。

 特に悪者ではないはずだ。


「政治家がダンジョンに潜りにきたのか?」


「お前さんのドロップ品狙いさ。元々ダンジョン党は政府にダンジョン管理の権限を戻そうとしている集団だ。甘い汁だけ吸おうとしてるのが見え見えだから、ギルドも冷ややかな目を送ってる。だけど腐っても政治家だからな。気をつけるに越したことないぞ」


 ギルドに所属している者からはその集団は嫌われているらしい。

 岩城は眉間に皺を寄せて説明してくれる。

 ギルドまでの距離は歩いて五分弱。

 小走りで行けば十秒もかからないから、鬱陶しければ振り切ればいい。




 ダンジョンを出ると複数の集団がこちらに駆け寄ってきた。


「ダンジョン通信ギガネットに所属している記者の真鍋と申します。質問いいですか? 今回のデスマーチの件なんですが……」


「──ちょっと! こっちが先だよ。アルファネットの加藤です。北条理紗氏との熱愛疑惑に関して何かコメントいただけますか?」


「何だお前ら。揃いも揃って暇なのか?」


 矢継ぎ早に話しかけてくる男たち。

 熱愛疑惑と称して理紗や紬との関係を聞いてくる趣味の悪い者や、俺がデスパレードで出会った魔物の情報を聞いてくる連中。

 俺の世界では特殊な魔物の情報は金になったはずだが、この世界では違うのだろうか?

 一度ギルドで鏡花に確認してからにしようと、男たちに断りを入れるがしつこく付き纏ってくる。


 こっそり気絶させたらバレないか? と考えていた時だった。

 ダンジョンの中から岩城が出てきて声を張り上げる。


「疲れた英雄を質問責めにするのか? 後でギルド経由でクレーム入れるからそれぞれの所属を教えてくれ」


「僕たちの仕事を邪魔するな! 一介の門番に何の権限が……」


「──この人は今の今まで強力な魔物と戦い抜いてきたんだぞ。怪我を負っている可能性もある。そんな状態の人を引き止める権限があんたらにあるのか?」


 真鍋と名乗った男が反論するが、続く岩城の言葉に押し黙る。

 それにしても強力な魔物か……。

 異形の勇者以外は特段強力な魔物に覚えはない。

 もしかするとあの変わったゴブリンがそうだったのかも知れないが、毒殺してしまったせいで、力の底が見えなかった。

 最後の通信で、理紗は映像は届いていないと言っていたが、あれは嘘だったのかもしれん。


 岩城のお陰で記者が大人しくなり、俺はそのままギルドに向かって歩き出した。


 ギルドに向かっている途中に思い出す。

 ……理紗に帰ったと伝えなくてもいいのだろうか?


「やっと会えましたね。レオさん。私、ダンジョン党の岩橋と申す者です。ダンジョン党が打ち込んだコメントが役に立ったようで、私どもも、大変嬉しく思います」


 流石に自分の家があるのに二人で借りた宿に泊まっているとは思えない。

 鏡花が携帯と呼ばれる通信具を持っているから、そこから連絡してもらった方が早く伝わるだろう。


「あなたが行った英雄と呼ばれる所業に国民は歓喜の声をあげています。ですが、ここで私どもからもう一つお願いが……。あなたの手に入れたドロップアイテム。それを寄付してはいただけませんか? それがあれば数多くの探索者が救われる。そんな気がするのです!」


 ギルドに行っても鏡花はいるのだろうか?

 ああ見えて忙しい人だと理紗たちは言っていた。

 いない可能性も考慮しなければいけない。


 それにどこまで届いたのか分からないが、俺の弱音を理紗には聞かれている。

 少し面と向かって話すのは気恥ずかしいから鏡花から報告してくれた方が……。


「──私を無視しないでいただきたい!」


 高級そうな衣服を纏っている男が俺の肩を掴む。


「何だお前は? 俺は少し忙しいんだ。質問なら後にしてくれ」


 せっかく質問責めから抜け出してこれたのに、またぞろぞろと集まってこられたらいい迷惑だ。

 男は青筋を浮かべると舌打ちをする。


「聞いてなかった……まあいいでしょう。もう一度言わせてもらいます。あなたが持つ魔法の絨毯。それを私どもに譲っていただきたい。日本のために、いや……世界のために!」


 ……何を言ってるんだこいつは。


「ダンジョンに入って大きな鳥を仕留めたら手に入った。欲しかったらお前もそいつを倒すといい」


 タダで情報を教えてしまった、と少し後悔したが、巨大な鳥と戦った時はダンジョンカメラが壊れていなかった。

 あの時はコメントが流れていたし、この情報を知る人は何人かはいるはずだ。

 男は又聞きで知ったのか、情報が中途半端なのだろう。

 固まる男を置いて俺はギルドへと歩みを進めた。


お読みいただきありがとうございます。


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お気軽に応援の程、何卒よろしくお願いいたします。

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