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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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41話 異形の勇者

 

 返せ、返せと子供のように要求してくる勇者と名乗った存在を前に、俺は何も出来ずにいた。

 奴の言葉が真実ならどちらにも所有権があるのは確かだ。


 両者とも聖剣の主であったのなら決めるのは俺じゃなく……。

 右手に握られている聖剣をちらりと見る。

 主を決めるのはこいつの権利。

 俺の一存で決めるわけにはいかない。

 そのはずだったんだが……。

 聖剣を掴もうとしてくる赤褐色の右手を、半ば無意識に左手で払う。

 これは危険を感じたからでも、奴の腐敗臭が嫌だったからではない。

 独占欲に似た何かに突き動かされた結果の愚行だった。


 手を払われた異形の勇者が不愉快そうに眉を寄せると、両手を前に差し出す。


『お前、じゃま、呑まれろ』


 不可思議な波動が俺の体を包んだ。

 警戒して後ろに飛び退こうとするが、奴の姿はどこにもなく……。





▲▲▲▲▲▲▲▲




「同族殺しの勇者だぞ」


「早く出てってくれないもんかねえ」


「どこかでのたれ死んでくれたら言うことないな」


 俺は何故かエアリアルに帰ってきていた。

 名も忘れた小さな村。

 そこの住人がこちらを蔑むような視線を送る。

 地球に来るまではこれが日常。

 他人から線を引いて、気にも留めないで生きてきた……はずだった。


 住民の視線が重くのしかかる。

 逃げるように振り返り、村の外に早足で歩いていると、複数人の子供が駆け寄ってきた。


「ねえ、お兄さん裏切り者の勇者なんだろ? おっとうが言ってた」


「ぼくのお母さんも言ってた。早く死んだ方がいいって」


 足が止まり、無邪気に語りかけてくる子供の言葉を瞠目して耐える。飽きてどこかに行くのを待っていたのだが。


「レオはいつ死ぬの? 迷惑だから地球まで付き纏わないでよ」


「……理紗?」


 聞き覚えのある声に動揺し、目を開けてしまう。

 声のした先に視線を巡らすも、そこには誰もいなかった。


 子供たちを振り切るように村の外に走り出す。

 頬をつたう雫。ぼやける視界を無視して足を動かす。

 ……今はただ、一人になりたかった。


 村の外に出ると、宝石を散りばめられた豪華な鎧を纏った一人の男が立っていた。

 男は俺に気がついたようでこちらに向かって歩いてくる。


「君が異端の勇者か。太陽の教会からの依頼でね、君の命をとりにきた。悪く思わないでくれよ」


 男はそう言うと大剣を取り出す。男の右手に握られた大剣を目にした瞬間、背筋が凍った。


「なんでお前がその武器を持ってる?」


 心にさざ波が立つ。現実を受け入れられない。

 男は大剣を掲げると口角を上げた。


「不思議なことを聞くんだな。今も昔もこれは僕のものだ。聖剣ネストは君の所有物じゃない」


 男は聖剣を手にこちらに突っ込んでくる。

 速さは避けられないほどではないし、身のこなしから感じ取れる男の技量も俺の遥か格下だろう。

 こんなところで死ぬわけにはいかない。

 頭ではそう思っているのに……一向に足が動いてくれなかった。


 迫る聖剣。どこか他人事のように見ていると、そんな俺のことを叱咤するように暴風が吹き荒れる。

 男は舌打ちを残してたまらず吹き飛ばされる。

 そして次の瞬間、脳内に身に覚えのない記憶が流れ込んできた。




お読みいただきありがとうございます。


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