表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/257

40話 同類

 

 敵が現れる気配がないので部屋を見回ることにした。

 壁に嵌め込まれている絵は大体が魔物と戦っている時のものが多かったが、中には女性を横抱きにしていたり、金銀財宝を手にしていたりと随分と順風満帆な生活を送っていたようだ。

 これを見て男のモチーフが自分ではないことが確定した。

 恐らく歴代の聖剣ネストの所有者の一人がモチーフになっているのだろうが……。

 歩みを進めていくと、美しいガラス窓が集まっている前に豪華絢爛な祭壇画のようなものが設置されてある。


 登場人物は同じ聖剣を持つ男。その人生の終わりを描いているようだった。

 魔物と戦っていたはずの男は、同じ人間によってたかって殺される。

 その人生にどこか親近感さえ感じてしまう。

 俺も一歩間違えたら男と同じ末路を辿ったのかもしれない。

 そっと祭壇画を撫でた時だった。



 祭壇画の背後にある美しい色合いのガラス窓から強い光が発生する。

 それに続くように周囲のガラス窓も輝きだした。

 それぞれのガラス窓から広間の中心に向かってひかりの筋が伸びていき、一つに集束する。

 恐らくこれは階層主の召喚……だが、感じ取れる魔力の濃さは今までとは桁違いだった。


 ガラス窓からの光が止まると広間の中央に集まった光が一匹の魔物を召喚する。


 右手はリザードマンのような爬虫類系の腕が生えており、左手は獣のような剛毛に覆われている。

 胴体は俺の体よりも二回りは大きく肥大しており、残る下半身は……ムカデのような体躯をしていた。

 強烈に漂う腐敗臭。小刻みに震えるその頭は絵画で見た男によく似ている。


 倫理観が定まっていない幼子が、遊びで作ったようなその体。

 生物としてのあり方が歪だった。


 絵画の絵が真実ならこの男はエアリアルで死んだはず。

 聖剣がエアリアルに残されていたことからもそれは間違いないだろう。

 それならば勇者もエアリアルで生まれ変わるものだと思っていたが……。


『もう魔王は生まれることはないのでな』


 こちらに送られる時の創造神の言葉を思い出す。

 理紗は生前の記憶を所持したまま、こちらに転生した。

 これは理紗が特別だと思っていたが違うのか?

 考えても答えは出ない。


 召喚された異形の魔物が襲ってくる気配はなかった。

 体はみじろぎもせず、口元だけがかすかに動いている。

 中空を見つめている目は元は黒目だったのだろうが今は白く濁っており、目が見えていない可能性があった。

 魔物の前に立つとようやくこちらに気がついたようで、緩慢な動きでこちらを一瞥する。


 異形の魔物は目を大きく見開くと、こちらに向かって赤褐色の右手を伸ばしてくる。


『がえせ! それは……ぼくの』


 しわがれた低い声色は人が出す声とは思えない。だがその口から発せられた言葉は紛れもない人の言語だった。


「お前は、何だ?」


 創造神による言語理解の加護が発動するのは今のところ人間だけ。

 それはダンジョンで出会った魔物や、外を歩いていた人以外の動物に話しかけて確認している。


『ぼく? イヒっ! なんだ、ぼくは……ぼくは……ユウシャ』




お読みいただきありがとうございます。


面白いと思われた方、お手数おかけして申し訳ございませんが、ブックマーク、下の⭐︎にて評価していただけると作者のモチベに繋がります。


お気軽に応援の程、何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ