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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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38話 幸運の証


 

【強がりじゃないよな?】

【勇者ってこんな感じだったっけ?】

【画面越しに見て鳥肌たった】

【ここにきて喜んでるのはイカれてる】


『調べたら次の移動は一時間くらいでいけるみたい。だから残り三十分くらいかな?』


 ……そんなに時間があるのか。

 俺自身ほとんど消耗してないから休む意味もあまりない。

 それよりもガントレットの性能が気になるところだ。

 聖剣は俺が他の武器を使用すれば機嫌が悪くなる。

 だがこいつはどうだ。防具だと言い張れないか?

 少しの願望を込めつつガントレットに手を入れる。

 ガントレットの幅はブカブカで到底使えるような大きさではない。

 だが手を入れるとするりと大きさが変化し、ちょうどいい大きさに変化した。

 試しに魔力を流してみるが……受け取ってくれない。不良品か?

 今度は理紗達と探索していた時に手に入れた小ぶりの魔石を近づけると音もなく吸収された。

 これを見ているであろう理紗に届くように、ダンジョンカメラに向かって報告する。


「これは自分の魔力で使うことは出来ないみたいだ。土人形は魔力で代用できたんだけどな」


『条件武具のようね。かなり強そうだから捨てずに持ってた方がいいわよ』


 己の余った魔力で即席の投擲物を作り出せる土人形と、金になる魔石を消費することでしか力を使うことができないガントレット。

 どちらが有用かなんて火を見るより明らかだった。

 これは売ってもいいが、どこぞの馬の骨に買われて死蔵されてしまうのも忍びない。

 せめて大切に使ってくれる人がいればと考えていた時、一人の女性が頭に浮かんだ。


 鏡花なら買ってくれるか? 獣王は素晴らしい徒手空拳の使い手だったし、今世でも素手で戦うことが多いと言っていた。

 壊れずにまともに使える武具がないとぼやいていたから、彼女が気に入ったのならいい値段で買ってくれるだろう。

 これがダンジョンカメラの購入資金の足しになるのであればこちらとしても助かるが……。


「しばらくこれはお休みだな」


 売ると決まったのなら壊すわけにもいかない。


 ガントレットを亜空間に収容すると次の階層への移動が始まった。

 次はどんな相手に出会えるのか、次はどんな不思議な道具が手に入るのか、気にならないといえば嘘になる。

 だがそれでも心のどこかには帰らなくてはいけないといった気持ちがあるのも確かだった。

 久しぶりに人とまともに会話をした。

 久しぶりに同じ人間として接してくれた。

 それが何と心地よかったことか……。


 彼女達に騙されている可能性もないわけではない。利用するだけ利用して命を狙われる。

 こんなこといくらでもあった。

 騙されてもいい。裏切られてもいい。

 ただもう少しだけこの夢のような時間を……。




 光が晴れると深い霧が立ち込める森の中に立っていた。

 霧自体に魔力が込められていて、自然発生したものではないようだ。

 どこかにこの霧を発生させている者がいる。


【静かだな】

【不意打ちに気をつけて】

【勇者がここクリアしたら世界一でOK?】

【海外勢がガヤガヤ行ってきそう】


『頑張って』


 今のは理紗だろうか? 二人の交代のタイミングが近いからどちらの言葉か分からない、が。


「大丈夫。なんとかなるさ。俺は運だけは良い方なんだ」


 死にかけたことは数多くあれど、今日まで生き延びてきたことからの自負。

 それだけは誰にも負けないつもりだった。


【デスパレードに巻き込まれて運がいいもないだろ】

【今まで運が良かったとしても、それだけでひっくり返るレベルだしな】

【あんたは強さが異常なんだよ】


 聖剣を手に警戒しながらゆっくりと進んでいく。

 不揃いに切り落とされた大木や、腐敗しているのかどこか酸っぱい香りを漂わせた倒木がちらほら見受けられる。


 ここに出てくる階層主の仕業だろうか……。

 考えを巡らしながら探索を進める。……一本の倒木を踏んづけた時だった。


「──ピギぃ!」


 足元の倒木から変な物音聞こえた。

 靴を上げて確認するも何も付着していない。何かが樹皮の内側にいたのだろう。

 聖剣で倒木を切り割くと、一匹の芋虫が体の半分以上潰れて息絶えていた。


 芋虫は食べられる。

 こいつも消えていないってことは持ち帰れるはずだ。

 芋虫を取ろうと手を伸ばすが、遠くから大きな羽音が聞こえて腕が止まる。

 音のする方に目を向けていると、突如霧が晴れていき、一匹の魔物が姿を現した。

 紫と緑の光沢のある二対の鮮やかな羽。

 体は細長く頭にはこれまた二対の触角を持っている。

 目の前に現れた巨大な蛾の魔物。それが複眼で俺と息絶えた幼虫を交互に見る。

 ……なぜだろうか。申し訳なさを感じてしまうのは。魔物に責められている気がして思わず言い訳を重ねてしまう。


「もしかしてお前の子供だったのか? これはわざとじゃ──」


 巨大な蛾の魔物が悲鳴に似た甲高い咆哮を上げる。どうやら俺の弁解は聞くつもりがないようだ。


【運がいいね。一匹魔物仕留められたよ】

【なんだろうか。この地雷踏んでしまった感】

【フロアボス激おこじゃん】

【幸先悪いな。運が良いって言葉撤回しろ】



お読みいただきありがとうございます。


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