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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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251話 伝播する呪い


 遠くの方で、一体のスケルトンが何やら細長い木の棒を、上下に揺らしながら踊り狂っていた。

 理沙から魔道具を受け取った紬も、スケルトンの奇行を見て、乾いた笑いを漏らす。


【ズーム機能は偉大】

【テンションダダ下がりじゃん】

【出たのが安全地帯のある階層で良かったね】

【カースドモンスター「祭りだ祭りだ〜」】

【やっぱアンデット階層は多いな】


「さてと……後々面倒くさそうだからあれ、倒した方がいいわよね」


「僕が戦うより、りっちゃんの魔法で倒すのが一番安全なんだけど……」


 そこまで言うと紬は俺の方を見てくる。


「別に俺が倒してもいいぞ」


「いや、違うの。この前と同じことをしたら、また何かアイテムをドロップするのかなって気になって」


【水責めしてくれ】

【おあつらえ向きに階層も同じだしね】

【私は今回の相手の方が好きだな。なんか馬鹿っぽい】

【酷い】

【聖女が使ってるのも性能良さそうだからな。同じ条件で手に入るなら不人気ダンジョンにも人集まりそう】


 同じ方法でアイテムが手に入るのならば、試してみる価値はありそうだ。

 別にドロップアイテムが同じでも、困ることはないし、前衛用の防具が出たらこっちのものである。


「じゃあ試してくる。二人はそこで待っててくれ」


「ちょっと待ってレオさん」


 紬の呼びかけに振り返れば、彼女は翼を展開していた。

 彼女は親指と人差し指で円を作り、顔の前に持ってくる。

 円の中心に口を持ってくると、ふっと息を吹きかけた。

 指の間から柔らかな光が漏れ出し、俺の近くを飛ぶダンジョンカメラに向かって移動していく。

 光はダンジョンカメラを覆うと、カメラの動きに合わせるようについてくる。


「瘴気に触れたらダンジョンカメラ傷んじゃうからね。お守りだよ」


「ありがとう紬」


 お礼を言うと、紬は嬉しそうに笑い返す。


【当たり前のように勇者には付与しないんだな】

【無機物にも魔法付与できんの反則だろ】

【人以外に付与できる人ってほとんどいないよね】

【一回じゃあ壊れないだろうけど、確実に中の回路にダメージいくからな】

【何よりポーズがいい。本っ当にポーズがいい。他のヒーラーも見習おう】

【俺が使っても可愛いって言ってくれる?】

【やるなら来世で頼むわ】


 スケルトンのところまで近寄っていくが、またしても反応なし。

 どうやら自分の世界に入っているようだ。

 スケルトンは腰を捻ったり、リズムよく首を動かしたり様々な踊りのようなものを披露している。


「戦う気は……なさそうだな。大丈夫。聞いただけだ」

 

 水壺の魔道具を取り出してスケルトンにかけてみる。

 前回はここでスケルトンが消滅してしまったが、今回は違った。

 スケルトンは嫌そうに水を振り払い、俺から距離をとる。

 スケルトンは手に持っていた(かい)のようなものを、ごんごんと地面に打ちつけると、周囲にスケルトンが召喚されていく。

 

 呼び出されたスケルトンの見た目は同じ。

 しかし、召喚されたスケルトンが持つ獲物は、他のスケルトンが持つものと比べて、数段いいものを持っていた。


 綺麗な細工が施されていたり、美しい宝石が取り付けられている。

 あの武器がドロップしたら、結構いい値段で売れるのではなかろうか。



「失敗、か? 敵が増えたのなら成功とも言えるが」


【何食べたらそんな発想になんだよ】

【失敗に決まってるだろ】

【フロアボスならまだしもこんな階層でサモナータイプのモンスター出るんだな】


 カースドモンスターの行動はここで終わらなかった。

 手に持っていた木製の櫂をへし折ると、体から発せられているものよりも濃い瘴気が広がっていく。


 薄暗い闇のような瘴気が召喚したスケルトンを包むと、眼窩(がんか)に入っていた赤い魔石が浅黒く染まる。

 瞬く間に他のスケルトンも、カースドモンスターへと変異していった。


【勇者が何か地雷踏んだってこと?】

【えげつねえな。こんなのヒーラーいなかったら全滅もあり得るんじゃね】

【やっぱりカースドモンスターには近寄るべきじゃないね】

【おい馬鹿。この状況でおもちゃの剣取り出すんじゃないよ】

【勇者は今日も平常運転】


 ガクガクと震えていたスケルトンが一斉に飛び込んでくる。

 そこに連携はなく、技術もない。

 だがスピードは明らかに上がっていた。


 一歩後ろに退がる。顎スレスレに通っていった槍の穂先に練習用の剣を振るうと、スケルトンが体勢を崩した。

 そのまま胴体を砕き割り、両手にナイフを持った次の個体を相手取る。

 流れるように処理していく……。


 

 戦闘自体は呆気なく終わった。

 力が多少増えたとて、それでも遥かに格下。

 勇者の肉体にこの程度の瘴気は効かず、持っている獲物の性能では、埋められないほどの壁があった。


 地面にはバラバラになったスケルトンの残骸が転がっているが、他のモンスターのように消滅する様子はない。

 持って帰れるなら回収しようと手を伸ばしたところで、地面に散らばる穢れた魔石が光を放った。


 光がおさまると、魔石は各々が持っていた武器に変化していた。

 周囲に停滞していた瘴気も同時に消滅する。


「お! 運がいいな。なんか色々手に入ったぞ」


【全部カースドウエポンじゃん。勇者早まるな。絶対拾うなよ】

【フラグ立てんなし】

【早速拾ってやがる。こいつってやつは……】

【まあヒーラーいるんだから大丈夫でしょ】


 理沙たちがこちらに駆け寄ってくる。

 魔法の絨毯に乗ればいいものを、何やら焦っているようだった。


「レオ! ストップ! タイム!」


「レオさん、そればっちいから触らないで!」


「汚いのなら後で洗うよ。どうだ、結構高値で売れそうじゃないか?」


 両手にナイフを持ってアピールすると、紬ががっくしと肩を落とす。


「……もしかしてレオには効かないのかしら? 別にそれなら大丈夫なんだけど」


「何の話をしてるんだ?」


 理沙が俺のナイフを見ながら考え込んでいる。

 毒でもついていたのかもしれないが、今のところ特に感じるものはない。


「レオさん、一つ聞きたいんだけど……武器から手を離せる?」


「手を離す? 何おかしなことを言って……」


「やっぱり呪われてるよね」


 紬の言葉を聞いて手のひらを開こうとするが、何らかの力でピッタリとひっついてしまっている。

 二人はこれを危惧していたのだろう。


「……ふむ」


 力だけでは外れないが、そんなに絶望的な拘束ではない気がする。

 身体強化を施して無理矢理手を開いていくと、ナイフはバラバラに砕け散ってしまった。


【おい勇者よ。カースドウエポンの取扱説明書読んだか?】

【もう何でもいいや】

【やけになるな。もう少し勇者の行動みて一喜一憂しよう】

【カースドウエポンの対処法→手をパーにします。一件落着】

【こんなやつが講師として学校に来たら、人間は何を学べばいいんだよ】


「……カースドモンスターなんて嫌いだ」


 折角武器を入手したのにまともに扱えないし、持って帰れない。

 俺の不満を聞いた二人は、苦笑いを浮かべるだけだった。

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