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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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228話 一人の探索


 会合が終わり二日経過した

 現場を見て困惑するギルド関係者に連れられて新宿ギルドに移動し、そこで俺は待機していた鏡花としばらく後に現れた紬と、回復効果のある魔法の絨毯の合わせ技で治療を行われながら、軽い事情聴取を受けた。


 俺自身何が起きたのかわかっていないが、ギルドの幹部である樹がマスターが到着するところまで見ていたこともあり、話はすんなりと終わった。


 事の発端の犯人は死亡。マスターに関しても、周辺を監視していたカメラでは捉えられなかったらしい。

 姿を隠す魔道具を使っていたのではないかと話していたが、変に共犯を疑われることはなかったのでよしとしよう。


 そして犯人たちが俺を狙っていたことは伏せて、護衛依頼で負傷したとだけ話す。

 レオに傷つけれる人がいるの? と信じられないような顔をしていた理沙も、実際の怪我をみて納得したようだ。


 勇者の特性上、人から受けた傷の回復は遅々として進まない。

 いつもは聖剣の力によって縫合し、数ヶ月我慢する必要があるのだが、今回は日を跨ぐ前に完治してしまった。

 

 これは魔道具の力でも、ギルドの幹部である鏡花の魔法の力ではなく、後から治療に加わった紬の回復魔法によるものだ。

 彼女が治療に入った途端、修復されていく傷跡に他でもない俺が一番驚いた。


 紬より遥か高みにいる鏡花を凌駕する回復効果。鏡花いわく回復魔法特化型の紬と、器用貧乏タイプの鏡花の魔法では当然の結果らしいが……どうも腑に落ちない。


 エアリアルで他の勇者が持っていた性能のいい魔法薬も、これだけの効果を発揮することはなかった。


 検証出来ればいいがそう簡単にはできないだろう。

 なぜなら回復が終わった時、紬は倒れ伏してしまったからだ。

 診断の結果は、急激な魔力消費と、身の丈に合わない魔法を使ったことへの反動が大きすぎたためらしい。


 


『こっちは任せといて。紬は私が看病するから、一人だからってあんまり無理しないでね』


 電話口から理沙が心配そうに話す。


『迷惑かけてすまん』


『何言ってるのよ。あなたはただの被害者でしょ? 配信は見てるから、変なことをしようものならすぐに自動音声で突っ込むわよ』


 揶揄うような理沙の言葉に俺は何も返せなかった。

 紬は無理して俺を治療したせいで、学校までも休むことになってしまった。

 

 理沙は紬が回復するまで彼女のアパートに通うらしく、その間は俺が一人でダンジョンに潜ることになる。

 

 本来ならば俺が看病しなければいけない立場だと思うのだが、二人が住んでいる学校指定の寮は基本的に部外者の立ち入りは禁止らしい。

 

 紬の家に訪問するのは理沙からも強く拒否されたこともあり、俺は少しでもダンジョンの階層更新を優先し、紬のためになるような回復アイテムを入手しようと思う。



 ――――――――――――――――――


 前回の探索で到達した階層は四十階。

 ランドマークのモンスターを全て討伐してきているので、道中の道は短縮されているので、移動にはそこまで時間はかからないはずだ。


 ダンジョンカメラを取り出して起動させると、俺を映すように向きが変わる。


【あれ? 炎姫たちはどうしたの?】

【もしかして振られた?】

【ザマァ! 今日は飯が美味いでちゅ】

【一つの失恋くらいどうってことないでござるよ。男は失恋を乗り越えて大きくなるでござる】

【もう少しで魔法使いの称号を得る男の言葉は深みが違えぜ】

『今日は二人休養日よ。私は家でゲームしながら配信見てるから、言葉には気をつけてね』


「こっちは心配しなくても大丈夫だぞ」


 どうやら俺が護衛依頼で負傷したことにより、理沙は過剰に俺を心配しているふしがある。

 護衛依頼は一応完遂。だが理沙は犯人の仲間が他にいる可能性を考えているようだ。

 

 探索外では寝る時間以外は二時間単位で連絡がくるし、極力部屋から出る必要がないように、生活必需品の買い物はなぜか理沙がネットで注文までする始末。


 俺に恨みを持つ人間が他にもいて、理沙たちに危害を加える可能性もゼロではないので、安全確認は甘んじて続けてはいくが、せめて一人でもまともに探索できるところを見せて安心させてあげようと思う。


 そう心に決めて探索を再開した。



 道中のモンスターを処理しつつ、階層を進んでいく。

 扉の位置はうろ覚えで、思い出しながら移動する予定だったのだが、前回探索を共にした魔法の絨毯が道を覚えていたらしく、手間取ることなく前回の更新階層四十階まで戻ってきた。


 【マジックアイテムに引率される探索者って……】

 【あれ? まじで勇者のチーム、シーフいらなくね?】

 【彼はソロになったんですか? なら私たちのパーティー夜明けを探す者たちのチームに入りませんか?】

 【だせえチーム名】

 【海外勢じゃん。結構大手】

 【勇者は拙者のパーティー、運命の相手を探す者たちに加入しているから無理でござるよ】

 【死ぬまでに見つかるといいね……】


 四十一階は廃墟の街が広がっていた。

 夜の階層のようで月明かりすら見えない闇の中を、点々と置かれている燭台が照している。

 この世界の建物に詳しいわけではないので正確にはわからないが、俺の見る限りエアリアルの住居に近い印象を受ける。


 魔力強化で見つけたのは、廃墟の住民のように振る舞うアンデットたち。

 その中でも一際目を引くのは、瘴気を垂れ流しながら絶えず井戸水を汲んでいる一匹のモンスターだった。

   

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