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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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225話 回復薬の力


「どうした? お前も俺を殺しにきたのか?」


「勘弁してくれよ。俺はただ助言を言いにきたんだ」


 マスターの声に気がついたレオは、獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべて問いかける。

 マスターは両手を上げて否定すると、樹に向かって指を鳴らす。

 樹はマスターの行動に警戒するように結界を強化するが、ふっと意識を失って倒れた。

 それにより展開されていた結界が消滅していく。


「言ってることとやってることが違うな……」


「ちびっちまうから殺気を送るのは止めてくれ。あんな結界で防げる相手じゃねえんだよ。にいちゃんもそのままでは満足に戦えねえだろう?」


「今から本気で戦おうとしてたところなんだが?」


「全員死ぬわ馬鹿野郎。ひとまずあいつらを地上に送るから俺っちを信じてくれるか?」


「……分かった」


 マスターが何故ここにいるか分からないが、最後の言葉はどこか懇願しているように感じられるほど、切羽詰まったものだった。

 レオは念の為樹の体の周りに風の力を貼り付けて、位置を把握できるようにして許可を出すと、マスターが樹たちの元へ駆け寄っていく。


「こいつらは近くにある建物に移動させる。それでこの建物には誰もいないってことになるから――」


「部屋から出て行った奴らはどうした?」


「そいつらはとっくに送ってあるよ」


 マスターは胸ポケットから水晶で出来た矢を取り出すと、素手で地面に投擲した。

 矢が地面に触れる側から消えていき、大きな魔法陣を形成する。

 魔法陣が発光を終えた時、倒れ伏していた者たちの姿はどこにもなかった。


「……これでよしと」


「お前は一緒に行かなかったんだな」


「俺が一緒に行けば、にいちゃんは警戒するだろ? だからこれでいいんだよ」


「そうか。お前がそう思うのであれば好きにしたらいいが……いつまでモンスターを拘束しているんだ?」


「……やっぱばれちまうか」


 マスターの声が一瞬低くなる。


「今の俺は多少鼻が効くんだよ。モンスターからお前の魔力が漏れているのはわかってる。だが知らなかったよ。この世界にも精霊憑きはいたんだな」


 聖剣のブーストに頼った力だが、レオの力は正確にマスターの魔法を感知していた。

 以前レオがマスターの魔法を察知出来なかったのは、エアリアルのヴィーネと同じ、マスターに宿る精霊の力によって隠蔽されていたからだ。

 一般的な戦闘力はレオに分があるが、魔力の運用に関して言えば精霊は遥か高みの次元に存在している。

 大精霊の手を借りている状態でなければ、あの時のように、レオは何も気がつくことは出来なかったであろう。


 レオの言葉を受けて、マスターは苦笑いを浮かべながら訂正する。


「俺の力に関しては悪いが答えられないんだよ。それとモンスターの拘束も精々後数分が限界、倒し切る魔力なんて残ってねえよ」


「お前の目的は何だ?」


「ただの恩返しさ」


「樹の知り合いか?」


「さて……どうだろうな」


 マスターは軽い口調ではぐらかす。

 一瞬の沈黙の後、マスターから驚きの言葉が送られる。


「お前さん、体調悪そうだが手持ちの薬は使ったのか?」


「手持ち? 俺は薬なんて……そういや持ってたな」


 市販の魔法薬は購入していないが、最近手に入れた回復薬の存在を思い出した。

 デスパレードでモンスターからドロップしたものと、金閣寺ダンジョンで悟と同じ姿をした者に渡された謎の薬。


「それ、飲んでみたらどうだ? 多少は楽になるかもしらねえぞ」


「……こいつを渡してきた奴はお前の手の者なのか?」


 取り出した薬を飲むように促してくるマスターに、レオは警戒して聞き返すが答えが返ってくることはなかった。

 レオは舌打ちを放ちながら、モンスターからドロップした回復薬を飲み干すが……特に効果なし。


 逡巡しつつ残る回復薬――ダンジョンで人工の回復薬だと鑑定されたものを一息に飲み干すと。


「効き目があって何よりだ」


 どこか嬉しげに話すマスターにレオは()()()()()

 マスターは乱入者の存在を知っていたのだろうか?

 謎の男から渡された薬は効果覿面(こうかてきめん)だった。

 霧が晴れるように視界がクリアになっていき、気だるさはまだ残っているものの、魔力操作は格段に楽になった。


「お前の目的が分からん。何でこんなまどろっこしい真似をした?」


 敵であればこちらを助けるような言葉を送る必要はないし、味方なのであればそもそも会合前に声をかけていればよかった話だ。

 マスターはレオの問いに答えることなく、這いつくばっているモンスターを指差す。

 モンスターは上から押し潰されたように体勢を崩していたが、徐々に立ち上がっていき――レオに飛びかかる。


「まるで相手になってねえな」


「……聖剣の加護は解いておくんだった」


 マスターがバラバラに分断されたモンスターを見て顔を引き攣らせている。

 レオの弱体化によって拮抗していた天秤は、魔力圧縮の復活によって大きく傾いたのだった。

 反射的にモンスターを仕留めてしまったレオは、呆気ない幕開けに眉をしかめる。


「まだだぞ兄ちゃん。ちゃんと仕留めねえと復活しちまう」


 マスターの注意にレオがモンスターへ顔を戻すと、切り別れた肉片が芋虫のように動きだす。


 異質な光景にレオは魔力探知を強める。

 肉片の中から漂ってくる気配はモンスターのものではなく、高位の精霊と思わしきものだった。


 

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