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異世界勇者は常識知らず〜魔王を討伐した勇者が、地球で魔王とダンジョン配信始めました  作者: 冬狐あかつき


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200話 ぬいぐるみの性能と鑑定結果

 

 三人の怒りは収まることをしらず、自信満々にぬいぐるみを見せびらかしてくる鬼族によって更に燃料をくべられていった。

 鬼族は俺たちの怒りに気がついてないのか、私の才能が恐ろしいわなどと煽ってきている。

 詐欺の才能のことを言っているのかもしれないが、そうだとすれば大した奴だ。

 こんな店なのであれば客足も遠のいて、閑古鳥と厚い友誼を結べるに違いない。

 そんなことを考えながら鬼族の謝罪を待った。


 一言失敗したと述べてくれれば、この固く握った拳を一発顔面に叩き込む程度で許すのに、鬼族の口はフォルムの美しさから始まり、ベロを付け足したことによる革新的なデザインの進化とまで発展していき……。


『早う性能を説明してやれ。無駄に不興を買いおってからに……』


 呆れたように言葉を遮る老婆の声に、鬼族はもうっと不満そうな声を上げる。

 だが私の腕の良さをこんな青臭い子供たちに理解出来ないわね、なんて火種をまたひとつ生み出しながら話をやめると、ミミックのぬいぐるみを理紗の前に放った。

 物言わぬミミックのぬいぐるみは、雑な扱いに怒り出すことなく理紗をじっと見ている。


「ちょっと可愛いかも」と鬼族の仕事を認めるような言葉が隣から聞こえてきたが、理紗の咳払いで背筋をピンと伸ばし、「依頼の品とは違うから怒らないとだね」と改心した。

 ただで貰えるのなら不満などないが、ここに来るまでに面白くもない戦闘を繰り返す苦行を乗り越えてきているのだ。

 その苦労が泡になって消えるのであれば、最後まで強く言い返さなくてはならない。

 そしてあわよくばもう一度迷惑料を……。


『お嬢ちゃん、ミミちゃんを抱っこしてくれる?』


「抱っこですか? 別にいいですけど、私たちはぬいぐるみが欲しかったわけじゃなくて──舐めっ! 舐めたわよこの変態人形!」


 理紗が一抱えほどの大きさのミミックのぬいぐるみを持ち上げると、宝箱から出ている真っ黒な舌が伸びて、理紗の身体を舐めとるような動作をみせる。

 生物的な作りではないにしろ、舌を模したもの舐められたのが不快だったのか、理紗は前方に投げ捨てた。

 ミミックのぬいぐるみは地面に数回バウンドをして、こてんと横になる。


「ミミちゃん可哀想」と心揺れる紬に理紗はきっと睨みつける。

 鬼族は顔布の下から笑い声を漏らしながら、うぶな女は嫌われるわよと冗談めかして言いながら、ぬいぐるみを拾い上げた。


『ミミちゃんお願いするわ』


 鬼族がミミックのぬいぐるみの頭を優しく撫でてお願いすると、ミミックの舌が伸びて鬼族の体に巻き付いた。

 顔を残してミミックの舌でぐるぐる巻きにされた鬼族にギョッとする俺たち。

 そしてぬいぐるみであるはずの、ミミックの体がドロリと溶け出していくと……。


『どう? 私の美しさに声も出ないのかしら?』


 自由になった鬼族が一回転すれば、理紗と瓜二つの黒いドレスがふわりと揺れる。

 思わず理紗の姿を確認してしまうが、理紗の使ってるダンジョン武具が脱がされたわけではなく、鬼族が着ているものは見た目では違いが分からないほど精巧な偽物であった。

 違うところはやけに胸元がやけに窮屈そうなことくらいか。

 筋肉の形が分かるように密着しており、お世辞にも似合っているとは言えない。

 だが鬼族は満足そうに頷くと、両手を広げてこちらにアピールしてくる。


「凄いよ! これがミミックの宝石の力なの?」


『いや、私の美しさについて……』


「──これは使えるわね。実力を疑ってごめんなさい」


 二人の歓声が鬼族の言葉を飲み込んでいく。

 紬はそのまま鬼族に駆け寄ってドレスに触れ、触り心地も一緒と、喜んでいる。

 鬼族は自身の美しさをアピールしたかったようだが、興奮気味の二人に諦めて使い方の説明をしていった。


 やり方は簡単で人形にあらかじめ服を認識させておけば、いつでも着替えれるという優れもの。

 理紗のドレスのような魔力が上がる付加効果は真似することは出来ないが、属性種や下層クラスのモンスターを素材にしたことによってそれなりの強度があるらしい。


『魔力を通せばどこかのジジイが作る手抜き鎧よりは強度が出るわ。大切につかいなさいね』


「感謝する」


 ぬいぐるみを受け取って亜空間に収納する。

 まだ少しばかり宝石のリソースは残っているようで、すぐに帰還というわけではなさそうだった。

 余裕があるのならと、俺は薬屋の老婆に向き直る。


「婆さん、薬の鑑定をしてもらいたいんだが、頼めるか?」


『安っぽい仕事だね。別に構わないよ』


 とっとと出しなと手を差し出す老婆に、二つの小瓶を渡した。

 一つはデスパレードで蛾のモンスターからドロップしたもので親指程度の大きさをしている。

 もう片方は悟と同じ姿をした別人から渡されたもので、ギルドの連中が持っていた回復薬の瓶と似た形のものだ。

 悟の姿をした誰かからもらった薬が毒であるならば、こちらとしてもそれなりの認識を持っていなくてはいけなくなるからな。


『まずはこの小さい方、これは万能薬だね。飲めば一定時間毒耐性も付与できる力もある』


 老婆は蛾のドロップアイテムである小瓶のコルクを開けて鼻を近づけると、すぐさま性能を言い放つ。

 そして悟の偽物が渡してくれた薬も同様に解毒薬であった。


『……これはさっきの薬のように毒耐性が付与されない代わりに、解毒能力は格段に上がっている。そして……』


 これはダンジョンドロップの薬ではなく、人が作った薬だよと付け足した。


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