表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

187/257

187話 ご使用は計画的に

 

 ダンジョンの境目、破壊された門の向こう側で足を止めたモンスターに首を傾げる。

 顔はさっき仕留めたモンスターと一緒だが、こいつは黒色のローブを身に纏っており、大きさは比べものにならないほどの巨大だった。


「あいつはなかなか食べ応えがありそうだ。さっきの肉は俺がもらったことだし、次はお前たちが仕留めるか?」


 その提案に二人はびくりと肩を揺らし、俺の背後に移動する。

 首を回して確認すると、二人は背筋を丸めて何か揉めているようだった。


「……ちょっと狭いです。ここは一人分ですので離れてもらえますか?」


「無茶言うなって! モノホンの死神が来ちゃったじゃないかよ……」


 こいつが例の死神か。

 大層な二つ名の割にそんな雰囲気は感じられなかった。

 格の高さで言うと、エアリアルの進化種とどっこいどっこいといったところか。

 悟の方は逃げようとする体を無理矢理押しとどめているような状態で、別にここにいる必要はないと告げたのだが、頑なに離れようとしない。


「念のためスイッチを準備しておきます。効くか分かりませんが、援護にはなりそうですか──」


 モンスターをダンジョンの外に引っ張り出してこようかと考えていると、後ろから何か黒い携帯のようなものが転がってきた。

 手を伸ばす咲の代わりに拾いあげると、彼女に差し出す。

 だが咲は受け取ることなく、ぱくぱくと口を開けて黒い物体を見ている。


「捨てただけなのか? ポイ捨ては駄目だと聞いたぞ。お行儀が悪いんだそうだ」


「違っ! 押し……押してます」


 拾った時に何かカチッと音がしたが、手を離せば元に戻った。

 壊れてなさそうなので安心してほしい。

 それを聞いた悟も慌てた様子でダンジョンの方を指差した。


「勇者! あそこの爆弾、あんたが起爆させちまった!」


 確かにダンジョン前には何か置いてあるな。

 何かしらの魔道具だと思ったが、まさか爆弾だったとは。

 探索者が魔物を倒す時に使っているらしいが初めて見た。

 それを俺が起爆さしてしまったのか…………まさか罪に問われない、よな?


 ……爆発、破壊、弁償。脳裏に言葉が浮かび上がって消えていく。

 モンスターを倒すために使ったのならば、多少は誤魔化せるだろうが、ただ何もない時に勝手に操作して爆発さしてしまったとすれば、どれほどの被害額を請求されるだろうか。


 短い機械音を発し始めた爆弾に向かって駆け出した。

 後ろで二人の悲鳴が聞こえてくるが、今は無視。


「弁償は嫌だ!」


 長方形型の箱のようなものを纏めて掴むと、一歩後ろに下がったモンスター目掛けて投擲した。

 爆弾はモンスターの顔近くに飛んでいき、爆発を起こす。

 どちらにせよスタンピードは起きているんだ、多少ダンジョンが壊れたとしても問題ないだろう。


「危ない危ない。街を壊すところだった。だがこれで爆弾の影響は……」


 振り返りながら二人に声をかけるが、目に入ってきた光景に固まる。

 尻もちをついている二人の前には、さっきまで無かった窪みが出来ていて、近くに置いてあった古びた灯篭も軒並み倒れてしまっている。

 あれ? これって爆発させるよりも被害が大きい……嫌な考えを振り払うと、二人に向かって笑顔を送る。


「これは死神とやらの攻撃で壊れた。そうだったよな?」


「いや、これはあんたの移動で──痛っ」


「ええそうです。レオさんが踏み抜いて破壊したなんてあるはずないです。地震が起きたと錯覚するほどの衝撃を、人間が起こせるはずありません」


 咲は悟の足を踏んづけると、俺の言葉に肯定してくれる。

 二人のぎこちない笑い声は、死神が再び動き出すまで続いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] レオ…被害を抑えようと別の被害を発生させるなんてベタな… そして正直な悟と迎合する咲に笑う [一言] 人間焦るとちょっと想定外のこと起こしたり普段しないミスを連発したりするよね… 更新あり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ