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186話 報酬の山分け


 男が物陰に入っていくのを見送った後、俺は咲にここは何処なのか、どうやったら帰れるのかを聞いてみる。

 そこで分かったことは、俺がいる場所は東京から遠く、今すぐに帰ることは出来ないということだった。

 スタンピードが発生したことにより、最寄りの駅に電車が来ることはなく、離れた場所にあるものも今頃避難民が殺到しているはずだと咲は語る。


 不思議なことにモンスターを排出したであろうダンジョン周りは綺麗なもので、さっき俺が仕留めたモンスターと同じ種類の死骸が転がっているだけ。


「あれは魔力切れか?」


「……分からないんです」


 倒れ伏している探索者であろう者たちに指差して問うが、咲は眉尻を下げて答える。

 彼女がモンスターに追われてここに到着した時にはこの状態だったらしく、どういった影響で倒れているのか判断できていないようだ。

 分かっているのは彼らの中に死者はおらず、声をかけても起きる様子のないことだけだ。


 回復魔法を使う者はここにはおらず、外部との連絡が途絶えているらしく、応援を呼ぼうにもギルドはここから少し離れた位置にある。

 ひとっ走りして見てきてやろうかと、咲に伝えたのだが彼女は首を横に降る。

 すぐ避難出来るように、近くにあるトラックに倒れている探索者を運び入れたいのだそうだ。

 俺も理紗と連絡がつかない状況で暇なので手伝ってやることにした。

 足を引き摺りながら探索者の元に歩みよる咲を静止させると、変装を解いて魔法の絨毯を取り出した。


「運ぶのは俺がやるから、お前は休んでろ。報酬の肉も貰ったところだしな、ある程度は俺も働かせてもらうさ」


「あれは貴方のものなので気にしないでください。ですが本当にいいのですか、あの大鎌を貰っても……」


 結果的に獲物を横取りした形になってしまったので、あいつらが持っていた大鎌をあげる代わりに肉を貰うように話を通した。

 男の持つアイテムボックスは、容量が狭いらしく全て収納するのは無理だと言っていたのだが、試してみると問題なく入れることができた。


 そして俺は咲たちが仕留めたモンスター合わせて、六体分の肉が手に入れることができた。

 理紗たちの魔力強化を考えるとモンスターの肉はいくらあってもいい。

 二人の苦手な虫ではないし、喜んで食べてくれるだろう。


 探索者の体を一纏めに縛っていると、パンツを履き替えた男が近づいてくる。


「ありがとう、助かったよ。俺の名前は桐生悟きりゅうさとる。咲の恋人だ」


 偽名じゃないぞと、悟は続ける。

 悟はパンツを履き替えるついでに、服も着替えたようで美しい装飾が施された服を身に纏っていた。

 黒地の生地に色んな花を模した絵柄が入っており、腕や足周りはゆったりとした作りになっている。


「動き辛くないかそれ? 着替えが必要なら用意できるぞ?」


「これはダンジョン武具なんだ。京都のダンジョンはこういった和風のものが出る確率が多くてね」


 これもダンジョン武具なのか。

 咲が使ったという魔道具の影響からか、周囲には妙な魔力が渦巻いているため、ダンジョン武具のような微量な魔力は感知しにくい環境になっている。

 だからもう少し離れた位置に飛ばされていれば、咲の魔法を気取ることすら出来なかっただろう。


 悟と二人で探索者を魔法の絨毯に乗せていく。

 怪我をしている咲は白色の絨毯に乗って休ませているため、回復にはそう時間はかからないはずだ。


「……本当に何から何まですまないな。あの大鎌も後で君に返すよ」


 トラックへと向かう最中、悟が声をかけてくるが、その言葉に要らないと告げる。

 変装している時に使う武器として考えるのなら、十分すぎるほどの性能がありそうだが拒否する。

 それは相棒を失った男への親切心からくるものではなく、大鎌に対する嫌悪感から出た言葉だった。


 エアリアルで大鎌を武器としていた一匹の魔物が、脳裏に焼き付いて離れない。


 そいつは俺が初めて討伐した魔王の幹部の一匹であり、攫った女子供を拷問して楽しむような趣味の悪い奴だった。

 討伐後金目のものを物色していた時に拷問部屋に入ってしまい、その日は食事が喉を通らなかった記憶がある。


 武器に罪はないのは分かっているが、それからどうにも鎌という武器には抵抗がある。

 悟は俺の言葉にもう一度お礼を言うと、一台の大きなトラックを指差した。





 無事に運び終えた俺たちはダンジョンの前で話をしていた。

 今からの予定を話しているのだが、咲と悟の意見が分かれて揉めている。


 悟の案はみんなでギルドに向かうこと、咲の案は悟一人がギルドに向かって確認してくることだ。

 咲に話を聞くとどうやらあのモンスターは彼女を追ってきていたようで、無関係な人を巻きこんでしまわないかと怖がっているみたいだ。

 説得しても折れない彼女に、悟は俺に意見を求める。


「あんたはどうするんだ?」


「俺か? もう少しここで楽しんでいくよ」


「楽しむ? どう言うことだ?」


 訝しんでいるような視線を送ってくる悟。

 俺は金閣寺ダンジョンに体を向けると……。


「おかわりが来たようなんでな。折角のスタンピードだ。無駄にするのは勿体無い」


 金閣寺ダンジョンの中から、さっきのモンスターが成長したような姿のモンスターが現れ……俺を視界にいれた瞬間、足を止めてしまった。


お陰様で総合一万ポイント到達しました。

本当に嬉しいです。

応援していただけた方に心からの感謝申し上げます。


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