174話 宝石集め
猿を倒してからドロップ率は以前のものに戻ってくれた。
もしかすると猿に逃げられたことが原因なのかもしれないが、判断材料が少ない。
気にしないで戦闘を続けていくことにした。
途中、視聴者が魔法を使って倒してほしいなどと言ってくれるが、無視して石投げを続ける。
聖剣が使う魔法は俺の魔力を対価にして発生させているはずなのだが、あまり多用しすぎると亜空間に仕舞ってある魔石を食べ尽くしてしまうのだ。
普段、魔法の力を借りるのは必要最低限にとどめ、身体強化で戦っているのはそれが理由でもある。
だから巨大ネズミさえ出てこない限り、聖剣の魔法は移動に使う程度だろう。
あらかたモンスターを倒し終えると、次の階層でコボルトも同じように戦っていく。
変わらぬ映像に視聴者も飽きてきたのだろう。
ダンジョンに関係のない話ばかり増えていく。
【勇者様の写真集求む】
【筋肉フェチの私大歓喜】
【筋肉フェチのワイも大歓喜】
【勇者は探索者以外で金稼がないの?】
「別の仕事をするとかはあんまり興味ないな。俺には戦って金を稼ぐのが性に合ってる。やってみてもいい仕事は……グラディエーターかな?」
限られた範囲の中で戦って勝敗を決める催しはエアリアルでも存在していた。
エアリアルでは奴隷が主な出場者で、相手が魔物だったり、命の危険があったりと少し違うが俺も小金を稼ぐくらいのことはできるだろう。
そしてなにより戦うだけなので気が楽だ。
オファーが来れば挑戦してみてもいいと思っている。
【……おい、誰か教えてやれよ】
【言えるわけねえだろこの話の流れで】
【グラディエーター出れたらいいですね】
【逃げやがった】
【ちなみに出るとしたら、何の部で出る予定? 前衛と魔法使いの部があるけど】
出場者の立場で分かれているのか。
身体強化の魔法が浸透していない今の状況では、あまり興味がそそられない。
だがしかし、魔法の使えない俺が魔法使いの部で出るのはな……。
「身体強化の力は魔法に分類されないか? 戦ってみたいのは魔法使いなんだが」
【それはいい考え。風の力もあるし魔法使いの部に出るの賛成!】
【絶対に前衛の部に出ようとは思わないでください。これで嫁、子供に飯食わしてるんです】
【本職の援護を得た。これなら嘆願書が取り下げられる日も近いか?】
【身体強化は前衛も使えるから魔法にあらず。風の力を封印すれば前衛の部にも出られるね】
【押し付け合い始まった】
【……やっぱり駄目そう】
理紗たちが俺と合流して今日の探索は一時終了となった。
初めてで勝手が分からず、視聴者のコメントに出来るだけ返答しようとした結果、遅々として探索が進まない。
今日の宝石の収穫は、理紗たちが二つで俺が一つだけだった。
これは俺が仕事をしていないわけではなく、新規の人間と、繰り返し潜っている人間とではドロップ率が変わってくるらしい。
人を増やせばその分宝石が集まるが、必要量も増えてしまう。
痛し痒しといったところだ。
そして現在手に入れた宝石は、俺が最初から持っているものと合わせて合計六個。
当然店へと移動出来るベルは出現しているが、今日のところは一旦お預けに……。
理由は宝石を集めた量によって、作れる性能に幅があるといった情報が入ってきたからだ。
ドヴェルらしきドワーフも言っていたように、必要な数の宝石を集めれば理沙の前世、魔王の肉体で何か作れるようになるのかもしれない。
自分で討伐した強力な魔物の素材を使って着飾るのは、戦士としてこれ以上ないほど嬉しいものである。
尤も、それを聞いた理紗はあまり嬉しそうではなかったが……。
理紗たちもしばらく探索に集中することができ、俺も休みなど必要ない。
一週間くらい繰り返せばかなりの数の宝石を入手出来るはず。
だが再開されたダンジョンは、またしても一時封鎖されることになる。
きっかけはダンジョン前の爆破事件が原因だった。
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