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169話 一人のドワーフ

 

「念のためここから見ててくれ。それならば問題ないだろ?」


 案内人の彼女にそう伝えると、かしこまりましたと素直に残ってくれた。

 俺はそのままドワーフが立つ場所まで向かう。

 ドワーフの近くに建っている家は平屋で、屋根はなく、長方形の箱の頂上から煙突が飛び出ているような作りになっている。


 家の外壁は骨を切り取ったように真っ白で、ドワーフが入れるくらいの大きさの扉が一つあり、今は閉ざされている。


 ドヴェルと思わしきドワーフの前に立つと、相手は生気のない瞳でこちらを一瞥すると口を開く。


「用件は?」


「あ、いや、俺のことを覚えているか?」


「注文しに来たんじゃないのか? ならとっとと帰れ。わしはお前に興味はない」


 ドワーフが本心で言っているのか俺には判断がつかなかった。

 手を払い、帰還を促すドワーフに最後にもう一度質問をする。


「俺の名はレオ、エアリアルで勇者をしていた。この名に聞き覚えは?」


「注文しに来たんじゃないのか? ならとっとと帰れ。わしはお前に興味はない」


 先程と同じ言葉を返してくるドワーフに大きくため息を吐く。


 どうしようか悩んでいると、案内人が駆け寄ってきた。


「お客様、言い忘れておりました。店に関係のない話は、滞在時間を縮めますのでお気をつけてください」


「店、と言ったな? ここでは何が出来るんだ?」


 取り敢えず殺し合いになることはなかったと、切り替えて案内人に聞き返す。

 案内人は柔らかな笑みを浮かべながら説明を始めた。


 ここは武器や鎧といったものを製作、強化出来るようになり、強化にはダンジョン武具も含まれる。

 それぞれ素材にダンジョンのドロップ品を必要とし、用意した素材の相性が悪ければ最悪、役に立たないものが出来上がる恐れがあるらしい

 低品質の防具には、上層のドロップ品を、高品質の防具には、より深い層のドロップ品の方が相性が良いらしい。


 俺の持つダンジョン武具はガントレットだけだ。

 以前のダンジョン探索で手に入れたドロップ品は既に売り払っているし、今回は急いでいたので回収していない。

 可能性があるのはデスパレードで倒した謎の瓶のみ。

 亜空間に仕舞ったまま、今の今まで存在を忘れたそれを取り出してドワーフに見せると。


「これは分からん。俺の専門外だ。薬屋に聞け」


 瓶を開け、臭いを嗅いだドワーフは、こちらに突き返してくる。

 受け取った瓶を亜空間に仕舞うと、案内人に質問する。


「薬屋とは誰だ? どうやったら会える?」


「お客様を案内するには通行料が足りません」


 それならば何もできないな。

 俺の所持品の中でドワーフに渡せるものがあるとすれば……。


「こいつで何か作ることが出来るか?」


 前世の理紗の身体。

 魔王の前足を一本取り出して聞いてみる。

 それに対してのドワーフの答えは否だった。


「この程度の通行料じゃそれは扱うことは出来ん。出直してこい」


 気のせいか? 一瞬ドワーフの瞳が揺れたような気がしたが……。

 ドワーフはそれだけ告げると振り返り家の方に歩いて行く。


「お客様、時間切れです。またのご来店をお待ちしております」


 案内人のその言葉に慌てて魔王の右腕を回収すると、景色が変わる。

 どうやらダンジョンの一階に戻ってきたようだ。


 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


 レオが飛ばされた後、案内人の獣人は頭をかきながら家の前に視線を送る。

 ドワーフは扉の前で立ち止まり、レオがいた場所をずっと見つめていた。


「どうして()()()()()()()()ドヴェル爺、念願の相手なんでしょ? それに嘘までついて、また怒られちゃうよ」


「……嘘などついとらん」


「どんな素材でも通行料に応じて製作はすることが出来るが、通行料に応じて品質を落とさなければならない。そんなルールだったはずだけど?」


 案内人の問いかけにドワーフは答えることはなかった。


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