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124話 話し合い

 

 一通りの流れを説明し終えると、理紗は大きくため息をつき、ソファーの背もたれにもたれかかる。


「……紬、コーヒー頂戴。砂糖マシマシで」


「了解! お茶菓子も持ってくるね」


 一緒に話を聞いていた紬が部屋を出ていく。

 天井を見て何も喋らない鏡花に、理紗が声をかけた。


「どうすんです? 上に報告あげないといけないんですよね?」


「あげれるわけないってこんな情報。レオが迷宮と深い関係があるなんて変に勘ぐられでもしたら、国を跨いでトラブルが降りかかってくるよ」


 迷宮の情報を知りたいのは日本だけではないからな、と鏡花が呟く。

 その言葉に理紗も頷き、どこかほっとしたような表情を見せると俺を見る。


「私といい、鏡花さんといい、薄々思っていたことだけど、やっぱりダンジョンはエアリアルと関係しているんですかね?」


「そうだと思うよ。レオが創造神に送られた場所もダンジョンだ。少なくとも、創造神の手が届く範囲にはあるんだろうさ」


 俺がダンジョンに送られた理由は、魔王の転生者である理紗との再会を望んだからだ。

 理紗がダンジョンの外にいれば、また違った結果になっていたのだろうが……。


「異世界の痕跡は過去にあったんだろ? 初めて会った時に見せてくれたあの印……」


「太陽の教会……だったか? 少なくともそこでエアリアルとの関係はあるのかもって考えがあったんだけど……」


 鏡花がガシガシと頭を掻きながら言葉を止める。

 話についていけない俺は、二人にバレないように亜空間からこっそりとたこ焼きを取り出して摘む。


「うちも一つ欲しい」


「私も欲しいな。小腹空いちゃった」


 すぐにバレることになった俺は、二人にたこ焼きとお好み焼きを提供した。

 三人でつまみながら、疑問に思ったことを質問する。


「この世界にモンスターの存在が生まれたのは、最近なんだろ? ならエアリアルの仕業だと考えるのが自然なんじゃないか?」


 それまで魔石を宿す生き物が存在していないのであれば、どこか他の場所から影響を受けた可能性が高い。

 エアリアルの存在を知っている二人は、その考えに行きつくはずだが……。


「エアリアルとはモンスターの仕組みも、魔法の法則も全然違うのよ。エアリアルでは地球みたいに優しくはないでしょ?」


「それも……そうだな」


 理紗の言葉に肯定する。

 この世界で魔法を得ることは運こそ必要とされるが、それほど難易度が高いものではない。

 エアリアルでは、血の滲むような研鑽を積み、その中でも才能のある者だけが、魔法を使用することができた。


 それに比べてダンジョンに入り、弱いモンスターを討伐しただけで魔法を得ることが出来るなんて、どれほど楽なことか……。



「だからこそあの印も似たようなだけなんだなって考えれていたんだけどね。レオと出会った時も一か八か反応してくれたらいいなって感じで持って行っただけだし……」


 鏡花は魔物であり、太陽の教会からは遠い存在だった。

 それなのに何故あの印を知っていたのか……。

 それは魔物である鏡花を討伐に来た集団の一部に、同じ装備をした人間がいたらしい。

 ギルドはダンジョンについて研究を日夜続けている。

 ギルドの幹部である鏡花も、うろ覚え程度であったあの印を保管しておいたのだそうだ。


「あっ! 人にコーヒー持って来させて、自分たちは美味しそうなご飯食べてる!」


 たこ焼きとお好み焼きを食べ終えた頃、戻ってきた紬がテーブルに並ぶ料理の入れ物を見て、声を上げる。


「悪かったって。まだレオが余ってるらしいからそれ貰って……」


「はい、レオさん。コーヒーあげる。砂糖いっぱい入ってるから、レオさんも飲めると思うよ」


「ありがとう」


 紬はアイテムボックスからコーヒーを取り出し、俺の前に置くと、理紗の前にも同じようにコーヒーを置いた。


「りっちゃんはブラックで良かったよね?」


「ありがと、紬。そのお茶菓子私の好きなやつだ」


 紬はクッキーが入っている缶を机の端……鏡花から離れた位置に置くと、鏡花の前にペットボトルに入った飲み物を置く。


「あの、紬? うちのコーヒーは?」


「レオさんにあげたから、師匠は水でも飲んでて」


 その言葉に何も言えない鏡花は、渋々ペットボトルを取り口にする。

 そして思い出したかのように俺を見て。


「レオ、明日から少しの間、新宿ダンジョンは閉鎖されるから」


「まあ……そうですよね。ダンジョンの内装にも変化があったし、ダンジョンの難易度も変わっている可能性もあるか……」


 理紗が俺に分かるように説明をする。

 どうやら数日時間をおいて、ギルドから先遣隊を派遣して確かめるらしい。

 調査を終え次第、一般人にも解放されることになるらしい。


「それは構わないが……しばらく暇になるな」


「その間僕たちは学校かな。レオさんは街に出て美味しいものでも食べ歩いてみるといいよ」


「それなんだけどさ、レオ……ギルドからひとつ依頼受けてみない?」


 紬の提案の後、鏡花が一枚の書類をテーブルの上に置く。

 クッキーをつまんでいた理紗が布巾で手を拭い、置かれた書類を手に取ると……。


「特別講師依頼って、レオが先生になるってこと?」


 鏡花が親指を立てて頷いた。

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