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121話 巨大な魔力


「レオが破壊衝動に身を任せてとは考えていないわ。事故だったんでしょ? だから情状酌量の余地はある。罪を償って、綺麗な身になって探索を再開しましょう」


「事故は事故なんだが……」


 理紗のその言葉に何があったのか説明しようとするが、俺自身何が起きたのかまるで分からない。

 あんぐりと口を開け、ダンジョンの中を眺めていた紬がおずおずと問いかける。


「これって時間が経てば直らないのかな? スタンピードが終わってるし、そこまで被害無さそうだと思うんだけど……」


「それは……そうだけど、その分ダンジョンから出る収益が下がるのは事実だし、何よりダンジョン破壊は重罪よ。言い逃れは出来ないわよ」


「イレギュラーの仕業にしても?」


「こんな攻撃してくるイレギュラーがいたら、先遣隊は全滅してるわよ」


 紬は大きく肩を落とす。

 そして慰めるように俺の肩に手を乗せると……。


「いっぱい面会に行くから心配しないでレオさん! レオさんをこの世界でひとりぼっちにはさせないから」


 紬は俺の目を見つめながら真摯に伝えてくる。

 その様子に俺の言い訳を挟む余地はなく……俺は犯罪者として収監されることになるようだ。


 幸いにもすぐに首を切られて処断されることはなく、何年かすれば出て来れるくらいの刑期にはなるはずだと、理紗が必死に伝えてくる。

 俺がやけになって力で解決するかもと、思われているのだろう。

 そんなことをすれば理紗や紬に迷惑がかかるため、やる予定はない。

 仮に逃げるとすれば……。

 ダンジョンの中に目を向ける。


「レオ、私との約束はまだ有効よ。レオが私の元から離れたくなったら、レオの口から言うこと。黙って抜けるのは許さないから……」 


「そうだよ! 僕もまだレオさんと一緒にいたいな。出来るだけ罪が軽くなるように、二人でギルドに掛け合うから!」


「分かってる。理紗から逃げるような真似はしない。金で解決できればそれが一番いいんだが……」


 意図せぬダンジョン破壊は以前俺もやったことがある。

 理紗と初めて出会った時、イレギュラーと一緒に次の階層への扉をぶち抜いた。

 あの時はダンジョンの禁忌も知らなかったため、口頭で軽い注意を受けただけ。


 それは理紗たちが危機的な状況にあったからではなく、攻撃を一撃に止めていたことが大きい。

 あわよくばと言う願望も込めて理紗に説明をする。


「理紗、信じてほしいんだが俺の……攻撃がダンジョンに入ったのは一度だけだ。それ以外は周囲に被害が及ばないように努力はした」


 聖剣の攻撃は俺を助けるものだった。

 なら俺の仕業も同然。

 二人は俺の言葉にきょとんとした顔でお互いを見やり……。


「これが一撃?」


「レオさんが中で暴れ回ったんじゃないの?」


「一撃だ。不慮の事故だった。イレギュラーが中々強くてな……」


 申し訳ないがイレギュラーには犠牲になってもらおう。

 敵がいないのに俺がダンジョン破壊したのも問題だし、存在が分からない魔力を説明したところで、納得してもらえるかは分からない。

 理紗は俺の目をじっと見つめると……。


「嘘を言ってるわね。本当のことを言って」


「いや……嘘なんて何も……」


「私もレオのことを信じたいの。レオは私のことを信じてはくれないの?」


 悲しそうな目で伝えてくる理紗に、俺は大きく息を吐き白状した。

 イレギュラーと戦闘中、謎の魔力がダンジョンに出現したと。

 戦闘終了後、不用心にも触れてしまい謎の魔力に襲われることになってしまった。

 そんな俺を聖剣が助けてくれたと伝えたが、二人は難しい顔をして首を傾げる。


「証拠は……出せないわよね。謎の魔力か……映像に残っていないのなら厳しいわね」


「レオさんをどうにか出来そうな存在ってなんなんだろう……。魔王よりも強いってことだよね?」


 それは……そうなるかもしれんな。

 あれがもし毒なら、次は防げるようになっているかもしれんが、それだけではない気がする。

 相手の姿が分からない以上、説明することも難しい。




 俺が収監されるまで残り少ない時間を噛み締めるように、ああでもないと三人で話していると、ダンジョンの中に再び巨大な魔力が出現した。


 その圧により紬は息が出来ないほど動揺し、理紗はがくりと膝をつく。


「こいつだ! どこか気配が違う気もするが、それでも俺を襲った魔力に近しい存在だと思う」


「なん……で、あなたは平気……そうな顔……してん、のよ……」


「苦しそうだな二人とも。大丈夫か?」


 理紗はまだしも紬がこのままだとやばそうだ。

 上手く息が出来ず、窒息死しかねない。

 効果があるか分からないが、イレギュラーがやっていたように全力で魔力を展開する。

 圧縮を重ねた上で展開した魔力は、二人の体を包み込み……。


「楽になったか?」


「大丈夫。鳥肌が止まらないけど……」


「死んじゃうかと思った……。レオさん、ちょっと引っ付いてていい?」


 紬が震える手で俺にしがみつく。

 呼吸も戻っており一安心だと思っていたら、ダンジョンの入り口に変化が。


 巨大な魔力が人の姿に変化していく。

 身長は理紗より小さく、太く短い手足。

 その割には顔の幅が広く、大きな鼻と、豊かな髭をたくわえている。

 突然現れた一人の男。

 俺はこいつに見覚えがあった。


「おい! お前ドヴェルか? なんでお前がここにいる?」


 俺は数少ない顔馴染みであったドワーフの姿を見つけ、大きく声を上げるのだった。


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