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112話 部外者一名入ります

 

 ダンジョンが見えてくると黒色の魔法の絨毯を取り出して乗り込む。

 今のところ俺は部外者で邪魔者だ。

 見つかれば帰れと言われかねないし、モンスターを殺してから持ち帰り不可だったら来た意味がない。

 鏡花あたりにお願いして参加させてもらおう。



 人通りはほとんどなく、武装した人間が走りまわっている。

 幸いにも隠蔽の力を看破出来る人はいなかったが、鏡花が見当たらない。

 恐らくダンジョンの中でモンスターを処理しているのだろう。



 ダンジョン前は血の香りが充満していた。

 無造作に転がるモンスターの死体。

 負傷した探索者が担架に乗せられて運ばれていく。


「おい、(さとし)! 気をしっかり持てよ! 後は治療班のところでしっかり休んでろ」


「なあ、もし俺が死んだら……」


「──大丈夫だ、安心しろ! お前の娘の面倒はちゃんとみてやるよ。言ってなかったが、妙子(たえこ)ちゃんとうちの息子、最近よろしくやってるようなんだ。結婚したら俺の娘同然だからな。お前は安心してくたばってくれ!」


「何? 妙子のやつ俺には一言も……。くそっ!  このままじゃ死にきれん! 殺さなければいけないやつが一人増えちまった!」


「とっととくたばれ駄目親父! そんなんだから娘に嫌われんだよ!」


「うっせえ! てめえのとこのバカ息子と一緒にさせられっかよ! 地獄からでも蘇ってきてやるからな!」


 案外余裕あるのか?

 我慢しきれなかったのか、担架に付き添う女性が起きあがろうとした男の耳元に口を近づける。


「五体満足で復帰したければ大人しくしてください。医療事故って怖いですよね? ……ええ、本当に」


 男は仲間との言い合いを止めて、大人しく運ばれていく。

 周りを見渡しても人の死体は見当たらない。

 悲観するほどの状況ではないのだろうが、これでは俺の取り分はなさそうだ……。




 しばらく様子を見るが、ダンジョンの中からモンスターが出てくる気配はない。

 怪我人が自力で出てくることもあるが見る限り軽傷、命に関わるような怪我を負っている者は一人もいない。

 これは帰った方がいいか? そう考え始めていた時だった。

 ダンジョンの入り口の扉が開かれると、防衛にあたっていたと思われる人たちが、一斉に抜け出してくる。


「イレギュラーを抑えきれん! ヒーラーは一旦離れてくれ、一斉放火で仕留める」


 その声に応じて怪我人を運び入れていた巨大な車が走り去っていく。

 近場で待機していた魔法使いも動揺を見せることなく、半円の形になるようにしてギルドの入り口を取り囲む。


 だが半開きの扉からモンスターが出てくることはなかった。

 杖を構えていた一人の男が声を上げる。


「鏡花さん、出てきたか?」


「もしかして中で残って……」


「嘘だろ! まさか俺たちを逃すために?」


 中から吹き飛ばされるようにして、鏡花が飛び出してくる。

 意識がないのか、ぐったりとしたその様子に、思わず絨毯から飛び出してしまった。

 空中で鏡花を抱きとめて着地する。

 外傷はない。恐らくはただの魔力切れだ。


「大丈夫か鏡花?」


 声をかけると同時、横抱きにした鏡花から、俺の首に手が伸びる。

 半ば無意識に魔力強化で防御力を高めるが……鏡花は俺の首に手を回し、抱きついてきた。

 鏡花はそのまま俺の首元に顔を埋め、荒い呼吸を繰り返す。


「おい。お前! 鏡花さんを離せ!」


「離せって言われても、捕まっているのは俺の方なんだが?」


 長髪の男が声を張り上げて言い放つ。

 俺は鏡花を拘束してはいないから、離れようと思えばいつでも離れられるはず。

 だが周囲の男連中はその言葉では納得してくれないようで、目尻を吊り上げて、こちらを睨みつける。


「──心配して来てみたら……こんな状況で遊ばない!」


 俺を囲む集団の外側から一人の女性が駆け寄ってきた。

 確かギルドの受付で理紗の知り合い……名前は如月だったか?


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