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110話 卑怯者の末路

 

 イレギュラーがいた場所から無数のモンスターが溢れ出す。

 金属製のゴーレムや冷気を漂わせている狼。

 統一性のないモンスターの召喚に、三人はごくりと息をのんだ。


「何で……どうしてこんなモンスターが?」


「イレギュラーの魔法を壊し続けたことが原因だろう。土系統の魔法はダンジョンを素材にすることはない。だが奴の魔法を破壊するたびに、地面が削れていっていた。僕たちはダンジョンの禁忌を破ったんだ」


 舞が震えた声で吐き出された呟きに、透が答える。

 短時間の迷宮破壊。

 それを意図してやらされた。

 発生した現象を止めることは不可能。

 剛志が土鳥を生産しながら、透に声をかける。


「どうするよ? イレギュラーを倒すどころじゃなくなったぞ?」


「……逃げよう。イレギュラーは放置するしかない。三人で転移罠を踏んで離脱するんだ」


 そうなればダンジョン武具も、魔石爆弾も失ってしまう。

 だがそれに賭けるしかなかった。

 召喚されたモンスターは透たちがいなくなると地上へと進んで行くだろう。

 三人はそのモンスターが処理されることを祈るしかない。

 飛ばされた先で安全地帯を見つけることが出来れば、生きながらえることができるかも……。


 透は亜空間からダンジョンカメラを取り出す。

 そしてギルドに状況を伝えるためにカメラに向かって大声で叫んだ。


「スタンピード発生。至急、対処求む!」



 ダンジョンカメラが起動して周囲を飛び回る。

 カメラは透を無視して、溢れ出すモンスターの映像をカメラに収めた。


『状況が逆転したようじゃのう。どうする? お前らも壁に篭ってみるか?』


 ガラガラと崩れ落ちた壁からイレギュラーが姿を現す。

 溢れ出した他のモンスターは、お預けを食らった犬のように動かず、こちらを威嚇している。


 透はアイテムボックスから持ってる中でも最大の魔石を取り出した。

 五十五階のフロアボスの魔石。それをダンジョン武具に握らせて拘束用の蔦を生み出す。

 対象は足の早い動物型。

 一瞬足を止められたらそれでいい。

 合わせるように剛志も残った鳥を放出する。

 鳥は金属製のゴーレムの足を一本破壊することに成功し、機動力を削いだ。



 脱兎の如く駆け出す三人。

 ……最初に捕まったのはヒーラーである舞だった。

 身体能力が一番低かったことによる遅れ。

 鎧を着たオーガにローブを掴まれ、地面に押し倒される。


「待って! 待ってよ透! 私、逃げれてないから! 剛志の魔法ぐぇっ──」


 枯れ木を砕いたような音の後に、バケツの水をぶちまけたような音が続いた。

 舞の悲鳴に満ちた懇願が止まる。

 残された二人は振り返ることなく走り続けた。


 剛志と透、横並びで走る二人。

 目的地まで後少し。だが背後から迫る足音が聞こえた。

 剛志は更にスピードを上げて振り切ろうとする。

 徐々に離される二人、透の目に剛志の背中が映った。


「──テメェ、透! このクソ野郎が!」


 透のダンジョン武具から生まれた蔦が剛志を拘束する。

 剛志は透を攻撃しようとしたが、追手の存在により断念。

 馬に乗った骸骨騎士に向かって爆弾付きの鳥を放つ。


「時間稼ぎを頼むよ、相棒。今までありがとうな」


 その言葉とは裏腹に、剛志が使っているものとは別の時限式の魔石爆弾を取り出して起動させる。

 ボタンを押して五秒後に起動する仕様であるこの爆弾は、追手をしばらく足止めしてくれることだろう。


「待って、待ってくれ! イレギュラー! こいつらを止めてくれ! 俺はあんたの役にた──」


 剛志の命乞いが止まり、立て続けに残してきた爆弾が爆発する。

 ちらりと後ろを確認するが、土煙で追手の姿は見えなかった。

 透は上手くいったとほくそ笑む。

 後は転移罠に入るだけ。

 拘束されたドラゴンの横を通り抜けると──透の視界が黒に包まれた。


「へ?」


 透の上半身は拘束されていたはずのドラゴンに咥えられている。

 残る下半身は少し離れた位置で転がっていた。

 血飛沫が舞い上がる。

 耐え難い激痛、だが探索者として強化された生命力が、すぐに死ぬことを許さない。

 徐々に意識が遠のく中、透の元にイレギュラーの声が届いた。



『モンスターとして振る舞うのも一興。楽しませてもらうとするかの……』


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