108話 魔石爆弾
相手はイレギュラーモンスター。
三人はそう認識する。
不意のトラブルに対して最大限の警戒を送るのは、探索者のセオリーだ、油断はしない。
イレギュラーが杖を地面に下ろすと、地面がせり上がり、足元からドラゴンを模した巨大な物体が生まれた。
長さ十メートルはあろうかというほどの大きさのドラゴンは上体を上げ、透たちを睥睨する。
「透! どうする?」
剛志から質問が飛ぶが透はすぐには答えなかった。
透自身決めあぐねていたからだ。
撤退するか、戦うか。
相手が直接戦闘型であれば撤退も容易に出来るであろう。
それを得意とするダンジョン武具を持っているから。
だが魔法型なら話は変わる。
拘束しても後ろから追撃される可能性もあるから、逃げるより相手を倒した方が安全に切り抜けれる可能性が高い。
もちろん倒せなければ意味がない。
だが自分たちのこの階層のモンスターを蹂躙出来るほどの強さへの自負……いや資金力がその考えを否定する。
「こいつが召喚したドラゴンを破壊する! 僕たちの足では逃げても追いつかれるからな」
「了解! ストックはいくつある?」
「先週補充したばっかりだ。在庫は気にせず好きに使え」
剛志は透の言葉にありがてえ、と笑みをこぼしながら土で作られた鳥をドラゴンの元へ向かわせる。
剛志が生み出した鳥は、ドラゴンと比べたら矮小な存在だ。
だがその行動に彼らは絶大な信頼を置いていた。
ドラゴンが飛来する鳥に対して、長大な尻尾で薙ぎ払って対応する。
尻尾が鳥を蹂躙する瞬間、鳥が激しい爆発を起こした。
土煙が開けるとドラゴンの尻尾は半壊しており、イレギュラーモンスターも及び腰なのか、少し離れた位置からこちらを観察している。
それを見て魔石爆弾様々だな、と透は安堵の息を吐いた。
鳥を作り出す時に中に内蔵していた魔石爆弾は、スイッチを押すことで爆発する。
だから剛志の魔法により、遠隔で起動出来るようにして、離れた位置にモンスターを拘束して討伐する。
費用対効果など糞食らえと言わんばかりの、採算度外視の戦術。
これが透たちのパーティーを支える戦法で、常勝の秘訣だった。
『中々やりおる。これは厄介じゃな』
「余裕があるのは今だけだぞ」
イレギュラーから、上から目線の賛辞が送られる。
それに対し、透も挑発を返した。
イレギュラーが作り出す魔法の強度はこれで把握した。
魔石爆弾による爆撃を何度か繰り返せば破壊しきれる。
爆弾の数も補充したばかりで潤沢な量があり、先程まで休んでいたため、誰も魔力を消耗していない。
それを踏まえて透が出した結論は、イレギュラーの討伐だった。
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