ずっとぬくぬく!
霜月透子事務長のひだまり童話館「ぬくぬくな話」に参加しています。
僕は、これまでいつもぬくぬくだった。
生まれた時から、ずっとお母さんと兄弟と一緒だったから。
僕は、4兄弟の末っ子だ。
1番目の大きなお姉ちゃんは、ミケで気が強い。
2番目の大きなお兄ちゃんは、チャトラだ。いつも、家から出て行っては、お母さんに咥えられて帰ってきている。
3番目の少し大きなお姉ちゃんは、白が多いチャトラだ。
そして4番目の僕。ハチワレのチャトラだけど、小さい。
「この子は育たないかもしれないね」
お母さんに餌をくれる人が、そう話していた。
他の兄弟は、お母さんのオッパイを吸って大きくなっていくのに、僕はチビのままだ。
でも、すぐにお腹がいっぱいになって眠たくなるから、オッパイを飲めないんだ。
ぬくぬく、他の兄弟達と固まって眠る。
他の兄弟達は、もうほとんど家にはいない。
僕だけが、ダンボールで作られた家の中にいる。
お母さんは、初めは兄弟達が外に出たら、連れて帰っていたけど、今は知らんぷりをしている。
兄弟と固まっていないと、少し寒い。
お母さんが家にいる時は、ぬくぬくだけど、だんだん、いる時間が少なくなっている。
時々、僕はこのままダンボールの家から出ないままなのかもと思う。
他の兄弟は、あの高い壁をよじ登って出て行ったのだ。
ある夜、お母さんも兄弟達もダンボールの家に戻ってこなかった。
これまで、夜には戻ってきたから、ぬくぬくだったのだ。
それに、お腹が空いている。
「ミュー! ミュー!」
お母さんを呼んで、鳴き続けた。
「ミャン!」
お母さんがダンボールの家の中に来て、僕の首を咥えて外に飛び出した。
家の外では、他の兄弟がふかふかの毛布の上で眠っていた。
僕はお母さんのオッパイを飲んで、眠った。
それから、ミケのお姉ちゃんがいなくなり、チャトラのお兄ちゃんがいなくなった。
残ったのは、白が多いチャトラのお姉ちゃんと僕だけだ。
前よりはオッパイをいっぱい飲めるようになったので、少しずつ大きくなっている。
それに、夜はお姉ちゃんと一緒に眠るから、ぬくぬくだ。
ある日、白の多いチャトラのお姉ちゃんがいなくなった。
それでも、夜にはお母さんがいるから、ぬくぬくだ。
そして、僕も知らない人に抱き上げられて、連れて行かれた。
もう、ぬくぬくではないのだ! そう思うと悲しくなった。
「ミュー! ミュー!」
でも、知らない人は、僕に「ルーちゃん」と呼びかけ、暖かなベッドに寝かせてくれた。
もうお母さんのオッパイはいらない。知らない人は、僕に餌をくれる人になった。
それに夜には帰ってきて、一緒のベッドでぬくぬくと眠る。
「ルーちゃん、ずっと一緒だよ」
そうか、ずっとぬくぬくなんだね! 安心したら、眠くなった。
おしまい