ヲタッキーズ91 ヲタク解放軍
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第91話「ヲタク解放軍」さて、今回は富豪令嬢が誘拐され環境テロリストが巨額の身代金を要求w
直ちに身代金の支払いを決意する富豪でしたが、解放を待つばかりの令嬢が次々と不可解な行動に出て…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 パーティガールは泣かない
彼女はパリピ。
東秋葉原の流行りのクラブ。バリーライトの海に揺れる女。
「何?聞こえない」
「お引っ越し?」
「ママの形見ょ。ハルル、時々デリカシーなくね?」
確かに白いドレスはハズしてる。彼女は、フロアへ降りる。
歓迎するかのように長い手を上げて迎える女。アジア系だ。
「誰、あの子?」
「知らない」
「口説いてるの?」
髪の毛を撫で、踊るパリピの股間に顔を埋めるアジア系←
DJがスクラッチした瞬間にフロアに閃光が走り大音響が…
「動かないで」
いつの間にかサングラスをかけてる女が拳銃をつきつける。
悲鳴と怒号が飛び交う混乱の中、外に連れ出されるパリピ。
「乗って」
急ブレーキで停車したSUVに押し込まれ、秒で誘拐されるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
宇宙から戻った僕は、ソファに倒れ込んで寝ている←
「はい、ミユリです。テリィ様?熟睡中ょ…わかったわ。直ぐ逝きます」
音波銃を片手に…急いでメイド服を着るミユリさんw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数分後。現場には万世橋の全パトカーが殺到してるw
「遺留品は?」
「めぼしいモノは…ありません。軍用の音響弾とか」
「犯人の顔は?」
パリピに険しい顔で尋ねる万世橋のラギィ警部。
「突然だったから…見てないわ」
「誘拐されたエリザさんのコト、誰かが見てなかった?」
「だってエリザょ?みんなが見てたわ」
「…ご協力ありがとう」
頭の軽そうなパリピをパトカーに押し込むラギィ。
「誘拐の手口は?」
「音響閃光弾と短機関銃で威嚇しただけです。死者ゼロ。負傷者すらおりません」
「どんな奴なの?」
"舞い降りた"ムーンライトセレナーダーが尋ねる。
「あ、ムーンライトセレナーダー。ソレが誰も見てないの。誘拐されたのは、エリザ・ピアズ」
「あのセレブ資産家の娘?」
「あら。スーパーヒロインもゴシップサイトとか見るのねw」
意外そうなリアクションのラギィ警部。
「父親はウォレ・ピアス。総資産は2020億円。異次元人を最低賃金のない"次元断層"で働かせる搾取工場を展開して大儲けしてるらしいわ」
「連絡は?」
「電話したら自家用飛行艇のキャビンに繋がった。今、東シナ海上空ですって。2時間後に神田リバーに着水予定」
ココでもう1人、翠のレオタードにキャミソールみたいなコスプレのスーパーヒロインが登場。
あ、因みにムーンライトセレナーダーはメイド服にスク水。僕の推しミユリさんが変身してる←
「次元事故対応班のジェリ・ジェネょ」
「所轄のラギィ。スーパーヒロインなら、ムーンライトセレナーダーが来たから間に合ってるけど」
「そのようね。私も次元断層に跳ぶ直前に呼ばれちゃって…専門家は私だけって聞いたけど」
逝く先々の塩対応には慣れてる?ジェリは平然。
「…貴女は、何の専門家なの?」
「異次元人絡みの誘拐事件。私は、秋葉原の外で起こる、全ての異次元人絡みの事件を扱ってる。それぞれ相違点がアルわ」
「今回の特徴は何かしら」
「未だ良くわからないけど…恐らく金目当てでしょ。プロみたいだから、考えながら動く。予想利益。交渉戦術。変数は色々ね」
ココでラギィのタブレットから話に割り込む声。
「不完全情報ゲームの話かしら」
車椅子の超天才ルイナがラボからアプリで参戦。
「首相官邸最年少アドバイザーのルイナね?"ルイナ分散"の論文を読んだわ。貴女の知性は"秋葉原918"の奇跡だわ」
「ん?メタバース?とにかく、よろしくね。さっきの話はゲーム理論?」
「YES」
「ねぇ誘拐犯がプロか、プロの犯行を真似た場合、タブーサーチという最適化メソッドが使えるわ。不良データを排除スルの。誘拐犯が行きそうもナイ場所のコト」
「だからタブーなのね」
「犯人をハイカーとスルわね。ハイカーは地図を精査し、最適のルートを選択スル。その際に障害になるのは、深い森や谷、熊や川ょ。ソレらを経験と地図を頼りに踏破スル。タブーサーチを行うコトにより、ハイカーが選ぶルートを特定出来るの。誘拐犯の目的が身代金なら、その方法を解明して、行動まで予測出来るわ」
ジッと聞いていたラギィが割り込む。
「ルイナ。ソレ、いつ出来るの?」
「未だデータ不足だから、あくまで一般論での予測になるけど…」
「データ次第で変数精度も高まるワケ?」
答えを待つ間にも警部のスマホが鳴る。
「はい。ラギィです」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田練塀町に全ドア開放のSUVが乗り捨てられてるw
「キーは挿したママです」
「待って。何かアルわ…金髪のカツラ?」
「コッチもです。CD-R」
警官が差し出すCD-Rには"play me"の殴り描き。
再生画像は泣いて怯えるエリザを覆面男が羽交締め←
「ウォレ・ピアズは犯罪者だ。次元断層の搾取工場で労働者を搾取し、彼等の生き血を吸って生きている。しかし、ついにリアルへの借りを返す時が来た。さもないと…」
すすり泣くエリザの白い首にナイフが近づく。
「"人民ヲタク解放軍が娘の血で代償を払わせる。PWLAは、今日の正午、ウォレ・ピアズに要求を伝える」
第2章 娘の値段
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「PWLAは"リアルの裂け目"のコッチ側とアッチ側で行動スル反企業、反自由貿易の非公然テロ組織です」
「ソレに"反ピアズ"ね?」
「サイト運営者の名前はサティと名乗ってるけど、桜田門のテロ対策ユニットは顔すら把握してナイわ。1人じゃない可能性もある。メンバーさえハッキリしない謎のテロ組織ょ」
「主な活動歴は?」
「次元を超えた反グローバル化デモでバナーを上げたり、建設現場でのサボタージュに絡んでるようだけど、どうも組織的な活動では無いみたい」
翠レオタードにキャミソールのジェリがレクする。
モニターにはPWLAと落描きされたブルドーザーw
「単に誘拐犯が隠れ蓑に使ってるだけでは?」
「警部。誘拐に使われたSUVは、先週盗まれたレンタカーだと判明しました」
「…計画的犯行ね?今週の彼女の行動を知ってた者は?」
「秋葉原の住民の半数です」
「つまりヲタクの半分ってコト?」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
続いて富豪ウォレ・ピアズを彼のオフィスに訪ねる。
「先ほど神田リバーに着水したばかりだ。娘がパーティガールとしてメディアで騒がれ出した頃から、いつか、こうなると心配していた」
「なぜ警護をつけなかったんです?」
「娘が拒否した。私なら誘拐されても誘拐犯が手を焼いて直ぐ解放するわって…」
ラギィ警部は呆れる。
「そんな冗談を真に受けたんですか?」
「そうじゃないさ。娘の頼みなら何でも喜んで聞いてる」
「ウォレさん。あのね、身代金誘拐はビジネスなんです」
「何だって?」
ジェリの言葉に、今度はウォレ・ピアズが驚く。
「交渉では、常に交渉相手が優位に立ちます。しかも、貴方は命令されるのには慣れてない。大物だから」
「私に謙虚になれと?」
「冷静になれと申し上げてます」
電話が鳴る。同行した電話班が追跡装置をチェック。
「PWLAからです。予告通りだわ。落ち着いて。出来るだけ会話を長く延ばしてください。準備は?」
「OKです。警部」
「ウォレさん、電話に出てください」
深呼吸してから富豪は電話に出るが、いきなり…
「お前がウォレ・ピアズでなければ、娘は殺す」
「私は、モノホンのウォレだ。君は?」
「関係ない。要求通りにしろ」
「娘の声を聞かせろ。生きてるのか?」
遠く"パパ助けて"と泣き叫ぶ声w
「エリザ!」
「要求1。次元断層にある全搾取工場を閉鎖しろ」
「私が憎いのなら…」
「要求2。不当に搾取した4000万ダルーを疲弊した全ての次元労働者に返金せょ」
富豪ウォレは、意外にも素早く反応←
「君に1000万ダルーやろう。安全な東秋葉原レタス銀行の口座に送金スルが」
いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ電話は切れるw
「警部、衛星回線にスクランブルをかけてる。電話追跡は失敗です!」
「ソンなコトより…ウォレさん!今のは何ですか?」
「カウンターオファだ。ビジネスだと言ったのは君だろう?」
「貴方は、娘さんの命を値切ったンですょ?」
「ビジネストークだ」
「PWLAは電話を切った。娘さんの命は、今や危険に晒されている」
「いいや、大丈夫だ。奴は、再び電話して来る。ソレがビジネスと言うモノだ。失礼して、私は金の用意をして来よう」
スタスタ歩き去る富豪ウォレ。溜め息をつくラギィ警部。
「お金とパワーが全てなのね。"リアルの裂け目"のアッチでもコッチでも」
「ある意味、教科書通りカモ。早々に妥協の姿勢を見せれば相手は要求を釣り上げて来るわ」
「ジェリ。ホントにそーかしら?」
「違うとでも?」
ラギィは、スーパーヒロインに問いかける。
「教科書には、娘の身代金を値切れと描いてある?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃"居眠り"から醒めた僕はルイナのラボへ。
「テリィたん!いつ宇宙から戻ったの?ってかお坊さんのトコロに行かなくても良いの?」
僕は、第3新東京電力初の宇宙発電所長をやっている。
地球に帰る度に、会社は僕に禅寺での坐禅を求めるw
宇宙勤務者への"心のケア"らしい←
「ルイナは、僕が衛星軌道を回ってる間に、フラスコやガラス管で大要塞を築き、時空を揺るがす実験を始めたワケ?」
「"ヘロンの噴水"ょ。アレクサンドリアのヘロン。ギリシア人の数学者、天文学者、哲学者。大気圧が適切だと、水が吹き出すンだけど…」
「コレは、ルイナの坐禅みたいなモン?」
車椅子にゴスロリの超天才ルイナは愉快そうに笑う。
「全然違う。でも、アインシュタイン曰く。宗教は経験から生じる。自然と精神の一体化に意味を知る経験だって。過去の私の分身が作った噴水は、私の肉体と精神の統合を完璧に幽幻化したモノなのカモしれない」←
何を逝ってるのか全くワカラナイw
「ラギィは、何やら面倒な誘拐事件で大変みたいだね」
「被害者からの変数データが途絶したから、タブーサーチは見直そうと思ってるの。ベイズの事前確率で検討してみるわ」
ますます何を逝ってるのかワカラナイ←
「誘拐って、犯罪としては最低だけど、概念としては興味深いな。だって、人間の命に値段をつけるビジネスだぜ?…わわっ水が上がって来たw何で?」
「水は、新たなレベルに上ったのね。私もこうなりたいわ…テリィたんと」
「え。」
ウットリ僕を見るヤバい展開、と思ったらルイナの方から…
「あ。私、行かなきゃ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
国宝級の超天才ルイナの移動には首相官邸の許可が必要で、実際の外出には戦闘ヘリと特殊部隊の護衛がつくのだが…
「"ヘロンの噴水"を見てヒラメいたの!」
「え。何?戦闘ヘリの爆音がスゴくて良く聞こえないwヘロンって何?美味しいの?」
「実際は"ヘロンの噴水"だけど、話すと長いからハイカーの例えに戻るわ。ハイキングの行き先で土砂崩れがあれば、ハイカーはコースを変えるでしょ?PWLAの取る戦略も、富豪ウォレのカウンターオファで遮断されたから、別の戦略を探す必要がある。ウォレは、交渉の再開を待ってるみたいだけど、PWLAはサッサと最初の戦略を捨て、別の戦略に取り掛かるハズ」
ラギィ警部は、戦闘ヘリの爆音に負けない大声を出すw
「別の戦略?娘のエリザを殺して地下に潜るとか?」
「アリ得ない。それじゃ断念して敗北を認めるコトになる。PWLAのサイト情報を基に、彼等の行動傾向を解析してみた。その結果、連中ならブルドーザーで土砂を取り除き強引に進むと予測出来た。より過激な戦略に出るハズょ。予測もしなかった戦略にね」
「予測もしなかった戦略?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、神田練塀町にあるウォレのオフィスでは、全身黒装束に黒覆面の男女5人が短機関銃を振り回して乱射してるw
「全員、床に伏せて!」
「金庫を開けて!」
「早く!」
黒覆面の集団の中で、ただ1人顔を出してるのは…エリザ?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「ピアズ産業のオフィスがPWLAに襲われました。金庫には毎日、現金輸送車から3000万ダルーが運ばれるけど、この時は銀行に預けた後で7000ダルーしかなかったそうです」
「アテがハズレたワケね?」
「ソレにしては、逃走スルまで、統制のとれた、規律ある動きをしてるわ」
本部の全員で監視ビデオの画像を見ている。
エリザが顔出しで現れたトコロで画像停止←
「短機関銃の持ち方が不自然ね。弾が入ってないンじゃナイの?」
「銃で脅されれてるのょ。彼女の背後にピッタリ男がついてるし」
「エリザの顔を見て。怯えてるわ」
次々とエリザに同情的な見解が集まる。
「でも、ピアズ産業を襲うのに、なぜ娘を連れ回すの?」
「盾にスルつもりでしょ。ワザと彼女をカメラに写る場所に立たせてる。富豪ウォレに切り札を握ってるコトを見せつけてるのょ」
「主犯は、指図をしてるコイツね。PWLAの謎のリーダー、サティだっけ…あら?はい、もしもし。ラギィ…何ですって?ウォレがPWLAに身代金を払わないと言い出した?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「身代金は払わない。"リアルの裂け目"のアチラとコチラで、数々のならず者国家やゲリラやギャングどもと渡り合って来た。だが、その全部が私のルールを理解した。しかし、あのケダモノ達には私の言葉が通じない…」
「通訳は、私の仕事です。やりますょ」
「異次元ビジネスでは、甘く出たら骨の髄まで搾り取られるだけだ」
ピアズ産業のオフィス。ウォレをナダめるラギィとジェリ。
「ソレでは、お嬢さんも戻らない。危険は常にあります」
「他に選択肢があるのか?」
「我々に断りなく交渉したのは大失敗でした」
「今から撤回して支払え、と言うのか?ムダにデーハーなスーパーヒロインの言うコトは信じられんな。ソッチの警部さんは、どう思う?」
「コロコロ変えれば相手を動揺させるだけです。PWLAがどう出るか見ましょう」
「お嬢さんが殺されなければ良いけど」
「おい!ずいぶんな慰め方だな」
「だから、ヒロインは誰からもパーティに呼ばれない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
引き続きルイナのラボ。ルイナの相棒スピアが顔を出す。
「あ。テリィたん、秋葉原に来てたの?エリザのメールアカウントだけど、暗号化されてロックがかかってる。ソレも大企業のプログラマーが使うような、かなり高度で…高額のソフトを使ってる」
「なぜ彼女がそこまで?」
「メールを盗まれるのを恐れてるのね。セレブのメールは、ダークウェブで高額取引されてるから」
ソコへ"外出"を終えたルイナが戻る。
「全く娘の命の値段を出し渋るなんて!え。テリィたん、何?」
「お怒りはごもっともだけど、富豪ウォレの行動が余りに常軌を逸してるのは、親としての苦悩の深さ故カモね」
「あら。テリィたんに親の性格がわかるの?」
「いや、別に…」
ルイナは車椅子に座ったママ、小さく咳払い。
「あのね、テリィたん。富豪ウォレは、自分のゲーム理論を放棄スル行動に出たの。ミニマックス法。綱引きをイメージして。綱を引っ張り合い、中央のシルシをどっちが引っ張り込むかで勝負が決まる。でも、相手に恥をかかせるために途中で手を離すのも一興ょ。でも、気分は良くても勝負は負け。富豪ウォレは、綱を離して、勝つチャンスを自ら手放した。良い結果の出ない手段で反撃に出てるワケ」
「成功スル選択とは、正反対の振る舞いか。悲しみで判断が鈍ってしまったのかな」
「昔からょ。娘に手紙を描く時も、手書きでなく秘書に口述筆記させてる。秘書の名前がCCされてたわwそんな親、あり得ない…とにかく、集中させて!PWLAの精神分析は私がヤリます!」
スゴい集中力で演算を始め、僕とスピアはギャレーに退散w
「ルイナ、現場から戻ったら、ラギィが乗り移ったみたいだね。理由わかる?」
「うーんシン・ムーンライトセレナーダーのコスプレに刺激されたのかしら。前々話ではヤタラと気にしてたけど」←
「あのメイド服と水着の合体バージョンの奴?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻の捜査本部。
「警部!10分前にこんな画像がUPされました!」
「メインスクリーンに出して」
「…PWLAを甘く見るな。父の会社を襲撃したのは、ほんの序の口だ。父がPWLAの要求に応じるまで襲撃は続く。直ちに次元断層の工場を閉鎖し、身代金を払え…」
エリザのUP画像が淡々と"声明文"を読み上げる。
ヤタラと胸の谷間を強調した花柄のワンピースだw
何処か違和感のアル画像←
「報道機関にも送ってる。"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"は、今宵のニュースショーで放送予定」
「目には目を、ね」
「エリザの背後で短機関銃を構える覆面男は、きっとリーダーのサティょ。反グローバル化の闘士。顔認証ソフトで2ヶ月前の銃器店強盗がヒット」
「呆れたわ」
「環境問題を卒業して、犯罪の道に手を染めた最初の事件がソレ?お陰で全員がイングラムで武装してる理由がわかった。素人が乱射スルにはうってつけの銃ね」
「でも、問題はサティに関する情報が一切ないコト。少なくともペーパー上は、前科も何も見当たらない」
「20代。ソレだけw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラボのギャレーでスピアと"読み上げ画像"を見る。
「…父の会社を…」
「解像度から見て、衛星電話からの映像ね。久しぶりにDIMFデコーダでも作ってみようかな」
「何ソレ?美味しいの?」
ルイナからお暇をいただき中の僕とスピア。
「トーン信号のデコーダょ」
「ナーンだ先にソレを逝え…って未だワカラナイんですけど」
「DIMFデコーダはプリズムと同じ。プリズムが光を屈折させて分解するように、電気信号をトーンや数値に分解して行くの。ソレで相手の電話番号がわかる」
ソレを早く逝えw
「恐ろしいメカだな。ソレはどこで手に入る?」
「PWLAが無線やスマホを使ってるなら、デコーダも電器店で買える奴でOK」
「ダメだ。今回は全部衛星通話みたいだょ」
「衛星信号のハッキングは少し複雑だから、私が自分で作るわ」
僕は、のけ反る。
「あら。私、13才でパソコンを組み立てたのょ?回路基板系は任せて。パーツも南秋葉原条約機構の電子工兵から分けてもらうわ」
SATOは"リアルの裂け目"からアキバを護る防衛組織だ。
「でも、電話番号がわかったとして、その先は?」
「電話番号は有力な追加情報だから、ルイナお得意のタブーサーチでPWLAの現在地やら、次の出現場所やらが演算出来るカモょ」
「ダミーサーチ、ヤバいな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
エアリとマリレは、ミユリさん率いるスーパーヒロイン集団ヲタッキーズの精鋭…だが、平時はふたりともメイド服だ。
「ふたりとも張り込み中もメイド服なの?目立たない?」
「大丈夫ょ秋葉原だから。ソレより、貴女のキャミソールだけど」
「イケてナイ?」
「ってか、私達この前、キャミソールの姉妹強盗団を挙げたばかりなのょね。前話だっけ?…前々話?」
翠のレオタードのスーパーヒロインとメイド服がふたり、万世橋の覆面パトカーにギュウ詰めになってるアキバ的風景←
「会社の次は自宅が狙われるって、ホントなの?」
「ルイナの予測はカン以上ょ」
「らしいわね…マリレ、貴女のコトも聞いてるわ」
ジェリの持って回った物言い←
「私のコト?何?」
「いつも突入班と一緒に踏み込む。勇ましいカウガールだって評判ょ」
「ま、まぁ色々とアルのょ」
「ドアを蹴破る時にスッキリする?その気持ち、わかるわ。私も、今の部署に誘われた時、嬉しくて跳ね回ったモノ。貴女も暴れ回ってみない?次元を超えた旅が出来るわ。デスクワークは他人任せ。例えば、超天才サンに」
その時、警察無線!
「万世橋警察署から全ユニット!神田練塀町7626で警報作動!コード5!」
「2ブロック先だわw」
「ハルルの家ょ。エリザの親友の家が襲われた!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パトカーがハデな回転灯にサイレンで現場に駆けつけると、強盗は停車中のSUVに乗り込み今まさに逃亡するトコロw
「ヲタッキーズょ!全員動くな!両手を挙げろ!車の中のアンタ達、早く出て!両手は見えるトコロに!」
突如現れたパトカーに度肝を抜かれ全員がホールドアップw
ところが、最後の1人は人質を取り、ハルル宅から現れる。
「ソッチこそ手を上げろ!エリザの頭を蜂の巣にしたいの?」
「武器を捨てなさい!抵抗は無駄ょ!観念して!」
「助けて!パパ、助けてぇ!」
人質はエリザ・ピアズだ!頭に短機関銃を当てられてるw
瞬間ヒルむ隙に、エリザは隠し持ってた短機関銃を出す!
弾倉がカラになるまで連射←
「え。何?何で?」
「伏せて!」
「…カイ・カン」
1弾倉連射したエリザは、昭和な映画のセリフを口にスル。
走り始めたSUVに飛び乗り行き掛けの駄賃にもう1連射w
覆面パトカーは既に穴だらけ←
「借り物の覆面PCが蜂の巣だわwラギィに怒られそう」
「しかし…いったいどーなってんの?」
「どーやら、エリザは無理に救出しなくても良さそうね」
第3章 セレブお嬢と機関銃
負傷したパーティガールから現場で事情聴取。
「ハルル。落ち着いて。見たコトを話して」
「エリザが壊れた!何ゴトか大声で叫びながら、機関銃を振り回して乱射した!死ぬかと思った」
「エリザ本人が?」
ココでハルルは興奮して泣き出す。マリレが肩を抱く。
「テロリストに場所を教えてた。現金やママの宝石や隠し金庫の場所。ワガママで嫌な女だったけど、今宵は銃まで持ってた。ソレと、あのステフもいたわ。サティとか呼ばれてたけど」
「え。サティがいたの?」
「本名はステフ・カバー。高校時代は、ダサくて地味なヲタクだったのに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
大モニターに覆面PCのドライブレコーダー画像が流れる。
フロントガラスが見る見るヒビ割れ砕け散る。凄い迫力←
「あらあら。ヲタッキーズに覆面PCを貸すのは考えモノね…ところで、エリザは人質じゃなかったの?どー見ても一味だけどw」
「彼女は未だ若く、人生の経験値も低い。無垢だし誘拐されて外部との接触がナイとなると…」
「アッサリ洗脳されちゃったの?」
オシャカにしたPCから話題がソレて喜ぶヲタッキーズw
「そうょラギィ警部!被害者が誘拐犯に感情移入して、行動を共にする例は後を絶たないわ!」
「でも、マリレ。まだ1日半ょ?」
「甘いわ!ラギィ、若者が壊れるには十分な時間ょ」
ココで富豪ウォレが捜査本部に入って来る。
大モニターの娘の乱射画像を見て絶句スルw
「犯人からの連絡は無かった。今、この瞬間から警察の捜査に全面的に協力スル。娘を早く逮捕してくれ。弁護団はコチラで用意スル」
「ねぇ先ずは"何かの間違いだ!"とか"ウチの娘に限って"とか言うのが普通の親でしょ?」
「君は親か?」
今度はジェリが絶句する番だ。
「え。…で、でも、貴方も親と言える?調べたら、娘さんは奥さんの死後、遺産を受け取ってから、父親から過剰な束縛を受けているとして、裁判所に自立を訴えてるのね」
「ぐ。…妻の死後、娘は荒れて反抗的になったのだ」
「だから、弁護団を雇って彼女を監視下に置いたの?」
「16才は多感多情な頃だ。父親が監督するのは当然だろう」
ヤタラとムキになって反論するジェリ。
「あのね。監督と束縛は違うのょ。エリザが誘拐犯人に感情移入スルのも無理ナイわ。彼女は、そーゆー愛情しか知らないのだから」
「どーゆー意味だ?!」
「ヤメて!私の捜査本部を荒らさないでw」
ラギィ警部が止めに入る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ラボではスピアが電子工作中。
「デコーダの調子はどう?」
「テリィたん!電話番号を追跡してたらマニキュアがボロボロょ…え。なぁに?」
「スク水にゴーグルとゴム手のスピアは萌えるって変態全開だょヲレw」
「あ。もう!」
スピアが回線をショートさせ薄い煙がたなびく。
彼女は、ジャージの下はいつでもスク水なのだ。
「大丈夫?」
「今日は、コレで3度目。スペアをとって来るわ」
「ギャレーにいるょ」
僕は、ギャレーのパーコレーターの薄いコーヒーが好きだ。
先客がいて、車椅子のルイナとジェリがブレイクしている。
因みにゴスロリとスーパーヒロインというアキバ的な風景←
「ルイナ。ケーキ分割問題の論文、読んだわ」
「確かにケーキを使ってアルゴリズムを考えてみたけど…食べるのも好きなのょ。あら、テリィたん」
「ルイナのタブーサーチだけど、敵の戦略変更が役立つンじゃナイかな」
ジェリが身を乗り出す。
「同感ょ。ソレにしてもハルルの家を襲撃スル理由がない。
まるでハイキングをヤメて、蝶々を追いかけるコトにしたみたい」
「ソレは、素晴らしい例えね。ハイカーが蝶々の通り道を人の目に見えるようにしてる。ハイカーの足跡や、折れた小枝が蝶々の通り道ょ。私も決定解析でハイカーの戦略を分析してみるわ。つまり、意思決定分析ょ!」
「つまり、蝶々を見つければ良いのね?」
手を取り喜ぶ2人の横でワカッタようなワカラナイようなw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その間にも捜査本部には続々と情報が集まる。
「ステフ・カバーは、エリザ・ピアズの県立高校時代の同級生。進学した国立大学を1学期で素行不良で退学処分」
「エリザのプライベートメールを調べたら、ステフと約1年間、親密なヤリトリをしています」
「何ょその"親密なヤリトリ"って?」
若い刑事が読み上げる。
「"私ったら、高校の時に今のステフを知ってたら、きっと夢中になってたわ。ひたむきに信念を貫く姿勢に共鳴。そして、貴方にも…はぁと!"」
「う。アンタが読むと…気持ち悪いわ」
「警部、他もホボ同じ調子です!」
全く意に介さない若い刑事。
「そして、セレブお嬢のエリザは、ヲタクに入れ込んでるコトはパリピのハルルにはヒタ隠してたのね」
「ステフは、エリザのセレブゆえの悩みにつけ込み、罪悪感を植え付けたのに違いありません。お前の金持ちパパは、不当な搾取してるんだぞって」
「プロファイリング?ジェリの専門だわ…あら?ジェリは何処?」
「ムーンライトセレナーダーとランチミーティング中」
おや?ミユリさんも捜査本部に来てるのか。
「ハルル宅前の銃撃戦で先方を1名射殺。レルジ・ウッザ。25才。渋谷で反グローバリゼーション集会に参加、治安紊乱罪で逮捕歴アリ。ん?他にも何回かデモでパクられてますね。去年もパトカーを壊して服役。その時の共犯は、ステフの従兄弟のルカス・カバー。現住所は…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナが"蝶々"を探しに逝き、ギャレーには僕とジェリ。
「エリザは、スイスやNYの全寮制の学校を何れも退学になってる。依存症の治療を受けに帰国したらしいょ」
「問題を起こして父親を振り向かせたい、っていう歪んだ愛情の帰結ね。困ったちゃんの典型的な行動パターンだわ」
「僕達は…みんな過去の自分の残り滓に相応しい場所を探して生きてルンだね」
溜め息ばかりついてた翠レオタードのスーパーヒロインは、ふと顔を上げて…僕のコトを真っ正面から見る。少し萌え←
「私、エリザに自分を重ね過ぎかな?」
「意見は控える。君が"秋葉原918"で築いた貴重な友情を壊したくナイから」
「犯罪捜査で"リアルの裂け目"を何度か行き来スル内に、自分の次元がどれだかわからなくなった。どの次元の世界が、家族が、自分自身がモノホンなのか。友情ナンかどーでも良い。ねぇテリィたん、真実だけを語って」
メタバースを行き来するスーパーヒロインの悩みは深刻だ。
「ジェリは、特にパパのコトには触れないようにしてるね。どーやら傷は深そうだ」
「この"秋葉原918"で受けた最大のトラウマだモノ」
「でもさ。ヲタクってスゴいと思わないか?萌えを素直に受け入れるコトが出来る。アキバの外では、みんな宇宙はリアルを中心に回っていると思い込みたがるのにね」
「萌えが宇宙の統一理論なの?」
「ジェリのパパは、必ずいる。この果てのないメタバースの何処かに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルカス!ヲタッキーズよっ!」
「ダマされないょ新電力。電気代なら明日払うから」
「ウクライダで経営が火の車!今、払って!」
ハデな音を立て、薄い木製ドアが蹴り開けられる!
「おいおいおい!何だ?メイド?デリヘルの誤配?」
「"変態腐女子クラブ"の宅配3Pサービスでーす、なワケ無いでしょ!両手を上げろ!壁の前に立って!…あとパンツも履いて」
「立てるな!」←
メイド2名の乱入で突然のハーレム状態だが…
「従兄弟のレルジ、死んだわ。アタシ達に銃を向けたから」
「レルジが?ちくしょう!あんな女と付き合ってるからだ。人生が壊れちまった!」
「あんな女?エリザ・ピアズ?」
エアリが画像を見せる。うなずくルカス。みるみる萎む←
「高校のクイーンだった高嶺の花が突然手に入ってスッカリ舞い上がっちまった。国際環境テロリストと言えばカッコ良いが、彼女のテロ思想は度を越してた。だから、俺は距離をおいた。彼女の共犯じゃナイ。つるんでもイナイ」
「今、連中は何処にいるの?」
「奴等のアジトは東秋葉原にある。何ヶ月も前だが、首都高上野フリーウェイの高架下だ」
ルカスを放り出すヲタッキーズ。去り際に釘を刺す。
「コレからは、環境運動はリサイクル止まりょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地が良くなって、常連達が居座って実は困っている。
「あら。おかえりなさいませ、お嬢様…貴女がジェリ・ジェネ?オフでも翠のレオタードなのね」
カウンターの中からミユリさんが挨拶。彼女はメイド長だ。
「ミユリさん。貴女もスーパーヒロインでしょ?最近コスチュームを変えたとか。何かあった?」
「実は…テリィ様の元カノに敗北しちゃって」
「え。ソレは辛いね」
「しかも、彼女も変身スル前はメイドなのょ」
「全く。この"秋葉原918"では、スーパーヒロインも危険手当をもらうべきだわ」
カウンターを挟み溜め息をつく2人のスーパーヒロイン。
「そー言えば例の事件、メールを見るとエリザの方から口説いてルンだって?高校時代はバカにしてたヲタクのサティを褒めちぎってたそうね」
「その気になったサティは、早速セックス目当てに彼女の言いなり。ホント男って」
「それにしても、リッチでセレブな彼女が、何でサエないヲタクに振り向いたのかしら」
"高根の花"体験が豊富そうな彼女達は、容易に考えつく。
「こーゆー場合"高根の花"の方から仕掛ければ、恋は簡単に成就スル。腐ったドアを蹴破るよーに」
「つまり、エリザはサティと会って、パパに怒りをぶつける完璧な道具を見つけたワケね」
「わかったわ!コレは、最初から彼女の計画なのょ!」
で、後はひたすら恋バナだ←
「で。同じスーパーヒロインの元カノに敗北しちゃってからテリィたんとは、どーなの?」
「まぁ最初はね…でも、ゆっくりと。何とか元の軌道に戻れたみたいょ。彼、シン・コスチュームも気にしてるみたいだし。萌えつきちゃうカモ」
「あらあら。ソレは"秋葉原918"に独特の言い回し?ズバリ、仲直りの秘訣は何?」
「…」
「え。履き慣れた靴は脚にピッタリ?」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「意思決定モデルでパラメーターをリセットしてみた!決定要素に"衝動"を組み入れたの!」
「(わぁ何言ってんのか理解不能だわw)で、ルイナ。結局"蝶々"は?」
「ふふふ。ソレはね…」
いきなり捜査本部の全モニターにルイナの画像。
ほとんどハッキングだがラギィは忍耐強く対応←
「依然としてウォレ・ピアズょ」
「(何ょ前と変わらないじゃないw)じゃPWLAがハルルの家を襲った理由は?」
「内部知識があり、狙い易かったから。エリザにとり既知の場所ばかりが襲撃されてる」
「PWLAの次の標的は?」
「ソンなのワカラナイ。変数が不足」←
今回のルイナは…実に大したコトがナイw
「タイヘンです!見てください!ネットに10分前にアップされた画像です」
本部のオペレーターがモニターの画像を切り替える。
何と…頭に短機関銃を突き付けられた富豪のウォレw
「…私のピアズ産業は、次元断層では時間の進行速度が10.314倍になるコトを利用し、通常の1/10.314の時間で製品を大量生産スルことで、莫大な利益を生み出して来た。その結果、断層工場では主に異次元人の労働者が、時間進行速度の差異から来る身体的変調を来たし、苦しんで来た。この事実をPWLAから知らされた今、私はピアズ産業の取締役会を招集し、直ちに断層工場を閉鎖、東秋葉原レタス銀行に預けた全資産を、病める異次元人労働者に還元するコトを決定した。私は、次元断層における全投資を引き上げ、利益を手放し、全額を救済機関に寄付スル。明日限りで、私のピアズ産業は解散スル」
画面はウォレの頭に短機関銃を突きつけるエリザに変わる。
「PWLAは、この約束の実行に24時間の猶予を与える。コレは正義の戦いだ。我が父とはいえ特別な配慮は与えない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部は騒然となるw
「ウォレ・ピアズの身辺警護はどうした?」
「エリザが誘拐ではないと判断された時点で、警護解除になってます。私設のボディーガードがいたし」
「どこに?どこにボディガードがいるの!」
「全員、射殺されました」
沈痛な空気が流れる。
「しかし、会社の解散など、重役会が許すハズがナイ」
「娘は、身代金の支払いを拒否され、父親に見放されたと感じたのね」
「そして…父親を殺すしかないと考えた」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「スピア!進展は?」
「あら、マリレにエアリ?DIMFデコーダなら出来たけど?」
「急いで解析して!今すぐ!」
ラボに駆け込んだ来たヲタッキーズの勢いにタジタジだw
「はいはい。えっとPWLAの映像を傍受、と。今、デコーダで解析開始。CDMAコードを特定して、画像情報を分離したわ」
「ホントに信号の出所…ってかPWLAの現在位置が、コレでわかるの?」
「ショートしなければな」
余計な口を挟んだ僕は、ヲタッキーズ+スピアに睨まれる。
「失礼ね!電話番号で追跡中…緯度35.7006。経度139.7733。標高もわかるけど?」
「標高、絶対要らない。電気街に坂ないし」
「確か首都高上野フリーウェイの高架下とか言ってたな。"シドレ"画像が出る?」
"シドレ"はSATOの量子コンピュータ衛星。アキバ上空3万6000kmの衛星軌道にいるが…ハッキングしちゃダメだw
「こちらコンピュータ衛星"シドレ"です。ターゲットの画像はコチラ。ブルーのレッドの3」
「何ょガード下の"スク水洗車"がある辺りじゃない!まさかPWLAの隠れ家兼活動資金源になってたとは!」
「引きずり出してやる!そのドアをカウガールが蹴破って…あ・げ・る・わ!」
第4章 メタバースの彼方
首都高上野フリーウェイの高架下へ警官が続々集結。
近隣のタワービル屋上に配置したスナイパーと通話。
「"神田明神"から"亀住町02"。見えるか?」
「"亀住町02"。室内のターゲットは5人です。男3人女2人。エリザ・ピアズもいます。今なら全員を狙撃可能」
「了解。別命あるまで待機。"神田明神"から"栄町12"」
今度はドア近くまで忍び寄った突入班だ。
「"栄町12"。ムーンライトセレナーダーょ。ドアまで3m。これ以上は気づかれます」
「装備は?」
「おまわりさん達は全員、M-10に撃ち負けないPDWにしたんですって。念のために対スーパーヒロイン用の音波銃とナトリウム弾頭のロケットランチャーも持って来たわ」
やり過ぎょ突入班長…溜め息をつくラギィ警部。
「で、いよいよラストチャンスだけど、どう?スピア」
「PWLAのPCにハッキング中。凝ったアルゴリズムでショートキーを生成してるけど、ISPごと破った」
「後は私に任せて」
狭い移動指揮車の中で翠のレオタードのジェリが逝う。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。アジトの中。
「ピアズ産業から連絡は?」
「ナイわ」
「時間切れだ。何か次の手を考えないと」
サティは、狼狽えてエリザに泣きつくが、彼女は突き放す。
「パパのバラバラ死体を送りつけてやりましょ。ソレとも、何処か1部を切り取って身代金を吊り上げる?」
「私のカラダを切り刻むだと?エリザ、よくもパパにこんなコトが出来るな!」
「自業自得でしょ!私の人生を、お金で縛ろうとした報いだわ!」
後ろ手に縛られ床に転がされてる富豪が叫ぶ。その時…
「ステフ、大変ょ!私のPCに警察がハッキング…」
「コチラは、警視庁次元事故対応班のジェリ・ジェネ。このPCは乗っ取ったわ。建物も完全に包囲した」
「何?全員、配置につけ!」
一斉に、短機関銃を手に窓際へ駆け寄るテロリスト達。
「サティ!裏口にも警察。確かに包囲されてる!」
「落ち着け!今、警察と話をつける…警察と話すコトは何もナイ」
「人質を解放しなさい」
テロリストとのタフなネゴシエーションが始まる。
「黙れ。その後で俺達を全員殺す気だ。製鉄所を出た連隊みたいに」
「今なら罪は軽いわ。まだ間に合う。貴方は、エリザに丸め込まれただけナンだから」
「何の話だ?」
ジェリの懸命のネゴが始まる。
「エリザは、既に莫大な資産を相続してるの。その気なら、救済機関に4000万ダルーの寄付だって出来る。彼女がホンキで断層工場の労働者を護ろうとしてると思う?彼女はね。搾取なんて興味がナイの。毎晩、東秋葉原で高級車を乗り回し、クラブ通いをしてたのょ?」
「ステフ、気をつけて!私達を動揺させる作戦だわ!」
「エリザは、パパに反抗したいだけ。貴方をセックスで釣ったのは、単に利用するためょ!」
エリザがPCを閉じる!
「ステフ…ダーリン。話は終わりょ」
「どーする?エリザ」
「やっちまえ!」
窓ガラスを叩き割り、短機関銃を乱射!全員が続く。
「犯人は、一斉射撃を開始」
「応射を許可。ただし、上を狙え。殺さないで」
「了解。全力射撃!」
たちまち倍以上の弾丸が打ち込まれ、ガード下にある"スク水洗車"のオフィスは蜂の巣だw
「"神田明神"から"亀住町02"?」
「狙撃で1名射殺。後は狙えません」
「"神田明神"、了解」
一方、富豪の眼前に狙撃されたテロリストの死体が転がるw
「エリザ!全員、殺されるぞ?」
「構わないわ、パパ。私は、生まれた時から死んだも同然だった。きっとママもガンで死んで喜んでる」
「ママは生きたがってた。そのママに、私はお前の面倒を見ると約束したんだ」
「ウソょ。私を利用したくせに。娘がゴシップクイーンで話題になれば、お洋服が売れるモノね。でもね。今度はパパがネタになる番ょ!」
「ヤメろ、エリザ!」
半狂乱になって短機関銃を乱射するエリザ!
「"神田明神"!ラギィ、聞いてる?エリザは、パニクって行動が支離滅裂だわ。人質を殺す恐れがアル。生身のおまわりさん達には待機してもらって、スーパーヒロインだけで突入スルけど?」
「ムーンライトセレナーダー、待って。も少しウチにやらせてょ。所轄の意地。"元佐久間町34"、催涙弾!」
「了解!」
激しく短機関銃が火を噴く窓の下に忍び寄った警官が、小屋の中に催涙弾を投擲!たちまち室内は催涙ガスが充満スルw
「ゲホッゴホッ!もうダメだ!エリザ、諦めよう!」
「今さら何を…もう口先だけの約束にはウンザリだわ。男はみんな、私のカラダが目的だった」
「いや。今でも結婚はしても良いと思ってる」←
その間にも、催涙弾はジャンジャン投げ込まれるw
「ゲホッゴホッ!撃たないで!ギブアップ!」
「俺もだ!今から出て行く!撃つな!」
「2人出て来る!コッチょ!来て!」
突入班長のムーンライトセレナーダーが遮蔽物から飛び出し、テロリストの男女の首根っこを掴んで物陰に引き込む。
「"神田明神"、2名確保」
「了解。スピーカーをオンにして」
「警部、どーぞ」
激しい銃撃戦が続く中、ワーンと大きくてアナログな音←
「コチラは万世橋警察署のラギィ警部。15秒以内に出て来なさい。両手を上げて」
今やアジトの中はサティとエリザ、そしてウォレだけだ。
「エリザ、もう何もかも終わりだゲホッゴホッ」
「ゲホッゴホッ何するのょヤメて!」
「もうタクアン…じゃなかったタクサンだ!」
サティは、ウォレの縄を解き、彼を盾にして外へ出て逝く。
「私を見捨てるの?許せない!」
ドアから催涙ガスと共にウォレ、続いてサティが姿を現す。
「撃つな!俺はサティ!人質を解放スル!」
「私は、人質のウォレだ!撃つな!」
「"神田明神"から全ユニット!エリザを確認して!エリザは見える?」
ふと気づくとサティの白いシャツに赤い丸が出来、その赤いシミはドンドン広がって…無言で前のめりに倒れるサティ。
「サティが撃たれた!」
「私が撃った!私のカラダを弄んだから!私は、男にまたがるカウガール!次にマトにスルのは…」
「待て!エリザ!」
激しく咳き込みながら出で来た娘は、四つん這いになって逃げる富豪の尻を狙い…次の瞬間、肩を撃ち抜かれて倒れる。
「命中」
「腕を撃ったの?最近のカウガールは甘いのね」
「違うわ。私はヲタッキーズ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
硝煙と催涙ガスがたなびく中、連行されて逝くエリザ。
「パパ、パパ!私、パパを撃てなかった!」
「何も言うな。良い弁護士をつけてやるから…」
「パパ、私も愛してる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。僕とジェリ。
「"リアルの裂け目"を何度も行き来スル内に、私はメタバースの何処にも居場所の無い、次元ジプシーになってしまった…実は、コレが私のトラウマ」
「このアキバで良ければ"リアルの裂け目"を見つめに、好きな時に来れば良いょ。"ヘロンの噴水"もアル」
「実は、私にもパパがいて…とっくの昔に決別したつもりだったけど。何だか今回の件で考え直しちゃった。少し、胸苦しいけど」
ジェリのパパ。どんな人だろう。
「時には苦しみだって役に立つ。太陽風を形成スル荷電粒子は、トンでもナイ爆発力と高温があって、初めて太陽の引力を振り切れる。リアルから逃れて、ヲタクになるにもエネルギーは必要だ。全ては、混乱から自由を生むために」
「次元ジプシーという私の小さなトラウマが、宇宙的スケールに思えて来た。実は、私のパパは"秋葉原10587"にいるの。久しぶりに会いに行って来るわ。メタバースの彼方を逝く時空の旅。予約したら、もう払い戻しは出来ない…ねぇ一緒に来る?テリィたん」
「僕も?ジェリのパパに会いに?ホンキ?」
「どうかしら。ナーンとなく口から出てしまったの。良くわからないわ」
ジェリ・ジェネは、ケロッとしてるw
「奇遇だね。宇宙発電所で星の海に抱かれて仕事をしていると、果てしない時空を超えた旅に出たくなる時がアル。でも、ソロソロお寺に電話スル時間だ。お坊さんの瞑想中は、僕がウサギのお世話係ナンで」
「…私、ウサギになりたいわ」
翠のレオタードにキャミソール。その笑顔を僕は忘れない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同じく"潜り酒場"。ミユリさんとジェリ。
「ジェリ・ジェネ。どーしても逝くの」
「うん、ムーンライトセレナーダー。でも、コレは貴女じゃなくて私の問題。貴女やテリィたんと話したら…心のダムが決壊しちゃった。だから、もう行くわ」
「止めても無駄みたいね」
「このメタバースの何処かに私の居場所がアル。でも、私にだって確証はナイ。コレは私のセオリーょ」
「早く自分のアキバを見つけて」
「任せて。こー見えても私、秋葉原は大好きだから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
メタバースの彼方。
「何てコト?こんなコトってアリ?」
「何処かでお会いしましたか?私、テリィと申します」
「ねぇありったけのお酒を出して!」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"令嬢誘拐"をテーマに、誘拐される富豪令嬢、悩める父としての富豪、誘拐犯を追うトラウマを抱えたスーパーヒロイン、令嬢友人のパリピ、環境テロリスト達、彼等を追う超天才やハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。
さらに、父と娘の確執、前話で積み残したメタバース論などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、コロナ第7波真っ最中の秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




