表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/15

8.錆びつく【鎧】と【首無】

【デュラハン】


それが奴の名前だ。

幾多もの伝説に登場する凶悪な魔物。

数々の英雄と戦ってきたその強さは、一説では【ドラゴン】に匹敵するといわれている。

そんな僕では到底かなわない相手が、今目の前にいた。


なんで、なんでこんなところに。

このダンジョンにこんな【魔物】がいるだなんて聞いたことがない。


見ているだけで強烈な威圧に思わず過呼吸になってしまう。

息を荒げながら、奴の姿を眺めていた時、突然【デュラハン】の姿が消えた


消え......後ろ!?


目を見開き驚いていた彼女だったが、背後に気配を感じ、とっさに振り返る。そこにいたのは奴そして、奴が手に持った剣を振り下ろす瞬間。


しまった......避けられない。


とっさに横に飛んで避ける。

地面をゴロゴロと床を転がり、立ち上がろうと体を上げた瞬間腹部に走る強い刺激。


「......かはっ」


血痰を吐き吹き飛ぶ。


なんだ、一体。


腹を押さえながら薄目を開けるとそこには何かを蹴ったようなポーズで固まっている【デュラハン】の姿が見える。


そうか、今僕は蹴られたのか。くそっ。


「はぁ......はぁ......はぁ」


僕、ここで死んじゃうのかな?


思わず、弱気な妄想に支配されそうになったシェリーの目からぼろぼろと涙がこぼれてくる。

怖い、怖い、死ぬのがどうしようもなく怖い。

殺されるのが......怖い。


父さんもきっとこんな感じだったのかな?怖いって思いながら、死んで......違う。

あの時、父さんは。僕を守るために、そうだ。

怖い、怖い......どうしようもなく怖い。だけど、今僕は死ぬわけにはいかない。

お父さんが守ってくれたこの命。尽き果てるまで、生きないと。


立たないと、立たないとだめだ。生きることをあきらめちゃだめだ!

そうだよ、このままこんな場所で死んだら、父さんが浮かばれない。

あいつらに『復讐しないと』。


険しい顔をして、顔を起き上がらせたシェリーは血走った瞳で【デュラハン】を睨みつける。


「はぁ......はぁ」


来る!

起き上がった瞬間【デュラハン】の姿が消えた......ように見えた。


「ん......うまくいったみたいだね」

『⁉』


剣を構え、【デュラハン】の攻撃をそらしたシェリーは、懐に飛び込む。

咄嗟のことに今度は【デュラハン】の反応が遅れる。


そこ!


一気にしゃがみこんだシェリーは、がら空きになった奴のすねに向けて剣をふるう。


相手との対格差、そして鎧の隙間を狙うには絶好のポイントだから。


だが、やっぱり咄嗟の行動を起こすとうまくいかないようで固い鎧部分に剣がぶつかりはじき返されてしまった。


何⁉


ぎょっとしつつも、次の行動に転じる。

右手で地面をはじき、体制を整えながら左腕で思い切り突き刺す。。


次の狙いは、腰。

バキン、という音がし腰に剣先が突き刺さった。


入った!あとはこれを......


腰の隙間に突き刺すだけ。

【デュラハン】の核は、胸部にある。だからこれを突き刺せば倒すことができる。仮に当たらなかったとしても、多少はダメージを与えられるはずだ。

そう思いながら、剣を押し込もうとした瞬間、デュラハンが殴りかかってきた。


「うっ......」


とっさの判断で守りの構えをとったシェリーはバウンドしながら吹き飛んでしまう。


くそ、ダメージを最小限にできたけど......右腕が。


痛む右腕を押さえながら歯を食いしばって耐えるシェリー。

ジンジンと痛む右腕。もしかしたら骨が折れてしまったかもしれない。


腰に剣を差し込めたけど、利き腕がこれじゃ。それに、【デュラハン】だって腰に剣が刺さってたらさすがに引き抜くとおもうけど


【デュラハン】は腰に刺さった剣を抜くことなくこちらへと近づいてきている。


気づいていないのだろうか?


そう思った時、奴は腰から剣を引き抜き、こちらへ投げてきた。

「え?」と驚くシェリーに向け、拾えとでもいうように見つめてくる。


いったい、どういうことだ?

そう思って剣を引き抜くと【デュラハン】は待ってましたとばかりに剣を構える。


これはいったいどういう?


嫌な予感を感じとっさにシェリーは後ろに飛ぶ。

その瞬間彼の目の前を風圧が、通り過ぎていく。

じっとりと、ほほを伝う血を撫でシェリーはゆっくりと【デュラハン】の方を向く。


まさか、太刀筋を飛ばして切り裂いたってこと?


思わず目を見開き固まってしまうシェリー。

この世界では太刀筋を飛ばして攻撃するような剣士が存在するが、でもそういう剣士は技術を持った達人級の人物だけ。

だが、いくら達人級の人物が【アンデット】になったって、生前のように剣をふるえるわけがない。なぜならば、【アンデット】になった瞬間、その体は【魔物】となり、生前覚えていた記憶、体に染みついた技。そのすべてが失われる......そのはずだからだ。

だから、生前よりつたないものになっているのが普通なのだが。


もう一度剣を振り上げ、構えをとる【デュラハン】。


...いったい、どうなってるの?


そう思いながら、一気に前へと跳び転がった彼の後ろを風圧がなでる。

危なかった、と安心している場合じゃない。

【デュラハン】はすでに構えをとっているからだ。


とりあえず、考えている暇はない。今は逃げなければ。

足を動かし必死に逃げる。


だが、どうする?ここは平坦な広場。隠れる場所なんかない。

っち。とりあえず、必死に逃げなら、対策を考え......。


心の中で舌打ちを打ち、対抗策を考えようとした時、突然地面が揺れ、シェリーは転んでしまう。


「いてて......いったいなに?」


尻もちつき、自然に上を向いた彼の目に落ちてくる大量の岩が見えた。


ブクマ登録、感想は作者の力になりますのでよろしくお願いします。

あと、下の★マークをポチポチしていただいたっていいんだからね!チラッチラッ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ