7.広い部屋【閉】る【鉄扉】
先へ進んでいくと、僕の目の前に一つの岩壁が立ちふさがっていた。
先ほどから数えてこれで12個目。
さすがに上手くいかないか。
「....こっちもダメだった。ということはあっち?」
シェリーが呟きながら引き返そうとしたときだった。
彼の足になにかがコツンとぶつかった。
「ん?何だろ?」
足元に目をやるとそれは正に宝箱と言うような箱だった。
そういえば、ダンジョンにはたまに宝箱が沸くって聞いたことがある。
一説ではダンジョンの妖精さんの仕業とか、ダンジョンがいらないものを外へ出そうとしてるとか、そんなうわさ話があるらしいけど......本来のことは分からずじまい。
たいていはガラクタが主だけど、たまに伝説級の魔剣や、盾なんかが出ることがあるらしいけど。
「......とりあえず開けてみるか」
宝箱という割には鍵がかかってない。
ん....よいしょ。
錆びついたようにぎこちなく宝箱を開くと、そこには一枚のケープが入っていた。
材質は何かの動物の皮だろうか?
そう思いながら持ち上げてみると、軽い。まるで布の服を持ち上げているかのようだ。
防御力に関しては問題なさそうだね。
軽いわりにしっかりしており、柔軟性を持たせながら、しっかりとした防御性能が期待できるような作りだ。
詳しくは【鑑定】スキルを持っていたり、そういう魔道具を持ってるわけじゃないからわからないのだが、とりあえずある程度の防御力が期待できそう。
もう一度目の前でケープを広げ眺めたシェリーがふっと笑った。
デザインも、結構僕好み、性能もよさげ......いい拾い物したな。
よし、ちょっと着てみるか。
うん。と大きくうなずき、ケープを羽織ろうとはためかせたその時、彼の足元に一枚の紙が落ちた。
ケープに挟まっていたのだろうか?
なんだと思い拾い上げてみる。
触った感じ、結構古い感じだ。
中折になっていたため、ゆっくりと開いていく。
「ん?これって......地図?」
ガサガサというふるい乾いた紙の音を立てて開ききるとそこには、このダンジョンの物と思われる洞窟の地図が書かれてあった。
古びた紙に真っ黒いはっきりしたインクで描かれたその地図を手にしシェリーは少しの間思考する。
......地図ってことはこれに沿って歩いていけばいいんだろうけど。
そこまで考え顔をしかめる。
その理由は大きく分けて二つ。
一つ目が、この地図が本当に正しいのか、もし正しかったとしてもこれはだいぶ古そうだ。
だから、どこまで正しいのかはわからないということ。
ダンジョンの壁は壊れたりすることが少ないとは聞いたことがあるが、もしかしたら何かの拍子に崩れ、道がなくなってたりする可能性もある。
そして、もう一つの問題。それは、今いる場所がわからないということ。
もちろん地図には今自分がいる場所にご丁寧に丸などの図形が描かれているわけじゃない。
そのため、地図があったからと言って、シェリーは浮かれることができていないのだ。
「でも、それでも地図を手に入れたのは大きな進歩だね」
闇雲に情報がないまま歩くより、ちょっとした情報があった方が今はいい。
それに、......ダンジョンの地形が変わることは、めったに起こりえないことだし。
今いる位置に関しては、一応大体の予想はついてはいるし。
「まあ、何とかなりそうかな」
そういってシェリーははにかんだのだった。
......
............
..................
ケープを羽織り地図を手に進んでいくとシェリーはやがて一枚の大きな鉄扉の前にたどり着いた。
ここが、この扉の向こうこそがダンジョンの最下層にして、他のダンジョンとのクロスポイント。
「よし......うん、しょ」
力を込めて押すとギギギという重厚感のある音を立てて開く。
結構あっさりと開いた扉に驚きつつも中へと足を踏み入れたシェリーだったが、中に踏み入れた時謎の重圧を感じ足を止めてしまう。
なんだろうか?
「......なに?あれ?」
原因を探ろうと首を動かしたとき、初めに目についたのは、独特な装飾のされた鉄の扉だった。
はるか昔からこの場所を守ってきたともいわんばかりの重厚な扉には、鳥、巨大な猫、亀と蛇の彫像が彫ってある。
「いったいなんだ?」
ふと上を見上げる。
なに、あれ......
そこにはある【魔物】が描かれていた。
いや、違う。
あれは【魔物】じゃない。
顔は龍に似て、牛の尾と馬の蹄をもち、麒角、中の一角生肉。背毛は五色に彩られ、毛は黄色く、身体には鱗がある。黄金の獣。
「【神】」
その絵を見上げ彼は知らず知らずのうちに、そうつぶやいていたのだった。
彼が思わず魅入ってしまっていた時。
いきなり扉が閉まった。
ばたんと大きな音がしてしまった扉に駆け寄る。
「まずい!」
くそ!あかない!
取っ手に手をかけ引っ張るがびくともしない。
しまった、と冷や汗を彼が流し、焦りに顔をしかめていた時だった。
『神、か』
え?
突然何者かのくぐもったように反響する声が聞こえ思わず振り向く。
『確かにあれは神だ』
シェリーは、奴を見て思わず目を見開いた。
そう、その【魔物】を彼は知っていた。
伝説では勇者と呼ばれた皇子が倒したとされている。正真正銘伝説の【魔物】。
その危険度は【ドラゴン】に並ぶとされる【アンデット】。
骨の馬を連れ、黒い鎧を着こみ。
手には、はんばからへし折れたボロボロな大剣。
そして、首の代わりにあったのは、【紫の炎】だった。
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