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6.奥へ続く【闇】と【紫炎】

「うーん、暗い」


先ほどより歩きやすくはあるが暗い洞窟内を手さぐりに進みながら彼は思わずそうつぶやいた。

まさに一寸先は闇と呼べる状況で頼りになるのは触角と聴覚くらい。

人間の最大の情報源、資格が封印された状況。


慎重に進まないと。


ごくりとつばを飲み込み、耳に全神経を集中させる。

ここでは何が起こるか分からない。

危険に気付けるのはこれしかないのだから。


......

............

..................


何事もなく歩を進めていたシェリーだったのだが、突然異音が聞こえ思わず足を止めた。


なんだ?この音は。


壁から手を放し、音に全力で集中してみるとそれは、ガシャン.......ガシャンという何か、鉄製の鎧のような足音。

そしてさらにジャラジャラ......ジャラジャラと、何か金属を引きずるような音も聞こえてくる。


鉄?冒険者か何かなのかな?


そう思ったが、それにしてはどこか違和感を覚える。

そこにある違和感は確かに重圧としてシェリーにのしかかる。


何はともあれ、今は身をひそめてた方が......まずい!


音の主に耳を傾けていたシェリーは急いで手さぐりで物陰らしき場所に隠れる。

音の主が近づいてきているのだ。


無音の空間。

遠くからかすかに聞こえる金属音は徐々に大きくなってくる。

震える右手を左手で抑え込んだ。


なに怯えてるの......大丈夫。大丈夫だ。


隠れてしばらくすると、金属質の音とともに光が近づいてきているのが見えた。

だが、その様子はいつも目にする光とは違う。なんというか、おどおどしいとか、寂しいとか。そんな雰囲気を醸し出している。


待て、光?


なんだ、そう思ってゆっくりと隠れ場所から顔を出す。


紫....の、炎?


そこにあったのは人玉のように揺らめく一つの紫の人玉だった。

ちらちらと揺れる炎がほんのりと周りを照らす。


あれはいったい、なんだ?


紫の炎が周囲を照らしてはいるが、弱弱しく、あまりよく見えない。

目を細めて観察を続けてみると、やがてそれが何か固そうな物質。

動物の骨のような、そんな体を持っていることが分かった。


あれは?なんだ?固そうな材質だけど。


不思議に思いながら見ていたシェリー。だったが、その背中に突然寒気が走った。

まるで氷の凶器を押し当てられたような、そんな感じ。


......いま、目があった?


顔は見えない。

だが、確かにそう感じた。

急いで物陰に隠れなおし、息を殺す。


やばいっ


ガシャン、ガシャンという金属性の足音がだんだんと近づいてくる。


どうする?どうする?逃げるか?


必死に考えを巡らせるが、うまく考えがまとまらない。

シェリーの生命としての警鐘が悲鳴を上げている。()()()()()()()()()


ドクン、ドクン、ドクン......


静かなのも相まって自分の心臓の音がよく聞こえる。

そして、それがまた焦りを呼び寄せる。


!?......早く、早く、どこかへ行ってくれ。


シェリーの隠れ場所までやってきたということに気が付き、瞳をつむりながら神に願う。

必死に、必死に。

一分とも、永遠ともとれる、『はぁ、はぁ』というと息の音すら轟音に聞こえる時間が過ぎていく。


早く、早く、早く、早く、早く!


ドクンドクンとはねる心臓の鼓動が早くなっていく。

口元を押さえ、声を出さないようにする。


やがて、金属音の主はどこかへと去っていく。

ガシャン、ガシャンという音が一歩ずつ小さくなっていき、やがて完全に聞こえなくなったのを確認すると、シェリーはその場にへなへなと崩れ落ちた。


「はぁ......はぁ......」


思わず額をぬぐうと、汗でびちゃびちゃになっている。

いや、額だけじゃない。体中が汗で濡れている。


こ、怖かった。


あの時見つかってたら、きっと殺されただろう。いや殺されていた。

がくがくと震える手をシェリーはゆっくり握りしめる。

本当に生きた心地がしなかった。生命としての本能がそう告げている。


さすがにじっくり見るのはこっちが危険になってしまう。

次からは気を付けよう......

でも、それにしてもアレはいったい何だったんだ。いや、今は考えないでいい。先へ進もう。


いまだ震える足でシェリーは立ち上がると、ゆっくりでも確かに進んでいく。

そんな彼女の様子を【紫の炎】が見ていた。


……

…………

………………


「ふぅ...ようやく抜けた」


松明の明かりを見つけほっと一息ついたシェリー。


ここから先は先ほどまでと違って比較的楽だ。

なぜなら松明があるということは、冒険者が探索終了しているエリアの証でもあるからだ。

松明が広がっている場所、そこから外れずに探索すれば再火葬まで行ける。


「よし、あとひと踏ん張りだ」


よいしょと立ち上がる。

壁に手をかけ、重心を預けながら一歩一歩確かに踏み出す。

もうすでに足は棒のようになってしまい、目は重くなってしまっている。

気を抜いたら意識を手放し、眠りに落ちてしまいそうだ。


とんだ、ダンジョン探索だった。

父さんがしんで、死に物狂いで逃げて、川に飛び込んで、そして【ドラゴン】の骨を見て......


「......たどり着いたら、しばらく休んでもいいよね」


『いずれは敵を討つ』けど今は少し休みたい。

ま、まだついてないから油断はできないけど。


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