1.始まりの【楽】と【死神】
4時頃もう一話上がります
「おお!ここが冒険者の町【ソルディオ】!」
「おいこら、あんまりはしゃぐな」
「にゃー-!」
窓から顔を出してはしゃぐ少年の首根っこを丸太のように太い腕がつかむ。
そして今日。ここに、今二人の人間がやってきた。
一人は明日、15歳になる少年。もう一人はもう40は超えるだろういかつい風貌の男。
冒険者の町【ソルディオ】
この町では数々の歴史に名を残す冒険者が生まれた。
魔王を倒した勇者に竜を倒した英雄に、大秘宝を持ち帰り貴族へ成り上がったものなんかもいる。
やがて何時しかここで冒険者となったものは大成する。そんな噂が流れ、この町で冒険者を始める者が増え、そして冒険者の町と呼ばれるようになった。
「そしてこの僕、シェリーの伝説が始まる街なのだ」
ドーンと胸を張り宣言する少年を見て男はあきれたような目を向ける。
それに気がついた少年は男へとジト目を向けた。
「むぅ、なんか文句ある?」
「何でもないさ。お、あれ旨そうだ食おうぜ」
「ちょっとー!父さん!」
へらへらと笑いながらおちょくる男をぽこぽことかわいらしく殴る少年。
父さんと呼ばれた男、セージはそんな彼を撫でながら笑う。
まさに、幸せな家族。そんな景色がそこにあった。
「おおーここがソルディオの冒険者ギルド。さすがにぎわってるねー」
「そうだな。明日、ここでお前は正式に冒険者になる。試験は、まあ大丈夫だよな?」
「もちろん!この僕を誰だとおもってるのさ?」
「ポンコツ」
「そうそうポンコツ....ってうおぃ!?」
彼の返しに思わずズッコケる
そんなシェリーを笑いながら見ていたセージだったが、急に真面目な顔になった。
「にしても本当に大丈夫か?お前はただでさえハンデがある....」
「それ以上言わないで」
「ああ、すまない。気にしてることだったな。悪かった。」
今までのお茶ら桁態度から一変本気の怒りを見せた彼女にセージは思わずたじたじになってしまう。
「あの、すみません」
「にょ!?びっくりして変な声でちゃった」
「はは、すまないね」
突然声をかけられ驚くシェリー
「実は今一緒にクエストを受けてくれるパーティーを誘っておりまして...」
「なんだ?つまり共同クエストの誘いってことか?」
「はい、そうです」
共同クエスト。
それはギルドで発布されるクエスト。それを冒険者同士が手を組んで一緒に攻略しようという。簡単にいえばそういう事だ。
「それで報酬の取り分は半々という事で...」
「まあいいが、とりあえず話だけ聞かせてくれないか?」
まあ、大体この手のクエストは面倒ごとや危険なものが殆どだ。
というかそれしかない。
セージが慎重になるのはもっともなことだった。
「まあ、それもそうですね。ですが簡単な話です。実は今回の依頼は冒険者ギルドがだしている物でして....冒険者墓場と言ったらBランク冒険者の貴方ならわかるでしょう?」
「ん?ん?」
「なるほどな...だが、それならお前たちくらいで相当できないか?
「万全を期したいのですよ。命が無くなっては仕方ないですから」
そう真面目な顔をして言う冒険者の男
「なるほど...」そう静かに言うと、セージはうーんしばらく思考しする。
そしてゆっくりとうなずいた。
「まあ、いいぞ。準備してくるからちょっと待ってな」
「おお!面白そう!」
「おい、何ついてこようとしてるんだ。お前は留守番だっつうの」
「ええー!」
あからさまに残念そうな声をあげるシェリー
しかしそんな彼に救いの手が差し伸べられた。
「そちらのお子さんも一緒に来たらどうでしょうか?人手があったほうがいいでしょうし....見た限りゾンビくらいなら倒せるでしょう?」
「ほらほら!」
「こいつかぁ?だがなぁ....」
「お父さん。僕はもう成人だよ。問題ないよ!」
そういって胸を張る。
「明日からだろ」
「うぐっ...でも、でも一日くらい変わらないよ!
「まあ、そうだな...わーったついてこい。がきんちょ」
「やったー!....ってガキンチョぉ⁉」
父親の言葉に喜ぶ彼女だったが、次に続いた言葉に思わず声が裏返る。
「よし、それじゃ行こうぜ。えっとどっちだったかな」
「ちょっとまてぇ!僕はもう大人だってばぁ!」
この時、彼らは思ってもみなかった。これが二人幸せの最後の瞬間になるなんて。
死神の手が既に彼らの手を取っていることをまだ知らない。
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