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考案と懸念

「では、作戦を練って後日、お嬢様に提案させていただきます」


 諒から、「今後の作戦は考えていらっしゃいますか」と聞かれ、正直考えてなかったので素直にないことを伝えると、そう言い、部屋から出ていった。

 諒の作戦って何だろう…。ちょっと、気になるかも。

 顔は笑顔で女の子にはきっと人気なのだろうと思うけど、言うことなすことは冷酷というか頑固というか、ギャップがすんごいので、どんな提案をしてくるのかは気になるところである。中身を知っているから、恋とか愛とか分かっているのだろうか、と心配になるところだが、考えさせておこう。

 わたしはわたしで、きちんと考えておきたいなあ…。


「…様、お嬢様!!」


「え?」


 はっと我に返ると目の前に春名がいた。春名はとても心配そうな表情をしている。

 そうか、諒が出ていったから入ってきたのか。

 理由をすぐに理解して納得する。というか、心配している顔も可愛いな。瞳がうるうる潤んで小動物のようだ。こんな顔が見られてラッキーと思っていると、春名は両手を胸の前で握りしめて、わたしに顔を近づけて言った。わー、まつ毛もながーい。


「兄様に何かされたのですか? 何か悩まれている様子なので…」


 あなたと主人公をどうくっつけようか、あなたの兄と画策してるのですよ、なんて言えるはずもなく、わたしは首を横に振った。


「特にわたしが困るようなことを言われたり、されたりしていませんよ」


「でも、兄様はお嬢様に対する気持ちは人一倍強いのです」


 春名が真剣な顔をして言う。諒の気持ちはそれは当たり前だ。だって、


「諒はわたしを七宮家の一部と考えていますから、七宮家のためならそう思うのでしょうね」


 なのだから。それを言うと、春名が一瞬固まった気がしたが、すぐに笑みを浮かべ、少し楽しそうに手を口にあてた。まるでいたずらを思いついた子どものようだ。わたしは首を傾げていると、春名は「お嬢様は気にしなくても良いのです」と言ってきた。

 ますます訳がわからない…。けど、春名が気にしなくていいというなら気にしないでおこう。


「さて、お嬢様。この後は夕食でございます。奥様がお待ちですので、ご準備を」


 諒が絡んでくるあたりで面倒くさいので、臭いものに蓋をするように考えることを放棄すると、春名が次の予定を急かしてきた。

 …確かに、そろそろ時間なので準備をするか。母様を待たせるのも悪いし。寝る前に少し考えておきましょう。

 そう考えて、まずは次の予定に集中することにした。





「お嬢様、兄様がお嬢様にこれを…と」


 夕食を恙なく終え、風呂に入り、「さあ、考えるぞ」と思った時に、春名が手紙を差し出した。染み一つない真っ白な封筒の中心に「お嬢様 至急確認ください」と達筆に書かれた文字が目に入る。

 諒が手紙を送る理由なんて、ラブレターとかじゃないよね。やっぱり、あれよね?

 そう思いながら、レターカッターで封を開け、手紙を確認すると、案の定、諒が考えた作戦が事細かに書かれていた。


 ちょっと早くない!? もう考えたの!? どんだけノリノリなの!?


 手紙をそっと閉じて、とりあえず春名を下がらせた。間違っても見られたら、大変だ。

 春名が下がり、また手紙を開き、内容を改めて見直す。

 内容を整理すると、明日、門矢の授業で使う辞書がなくなること、おそらくギリギリで気が付くと思われるので、春名に借りさせること、そのお礼を春名へさせることが書かれていた。

 辞書がなくなるって、何してるのさ! と突っ込みを入れながら、まあ諒の考えは妥当な考えだと思う。二人にする機会を増やすことは大切だ。

 ただ、そろそろ告白のことを考えていかないといけないのだけど…。

 そう考えて、改めて『茜さすこの世界』のシナリオを思い起こす。

 優樹菜ルートも含め、すべてのルートでは、主人公から告白をするという形になっている。そして、好感度によって返事が変わるという仕組みというあるあるなラストである。そして、主人公から告白するタイミングはどのルートも同じタイミングだ。それは、年度末の主人公の誕生日。ギャルゲーの世界観を保ったままなら、主人公もここで告白をするだろう…たぶん、おそらく。

 ただ、ギャルゲーなので起承転結の「結」に行く前に「転」がある。優樹菜ルートでは、優樹菜の自分の家の跡取りとして相応しく完璧でなければならない苦悩、

父親とのすれ違いを一緒に悩み、解決していく。他のルートも何かしら問題があるのだが、春名はどうだろうか。

 あくまでも春名はモブ扱いである。どのような「転」があるのか、つかめない。

 でも、とりあえずは春名の好感度を上げておくことは大切だと思う。なので、今は諒の仕込んだ作戦に従うのが良いと判断し、明日に備えて休むことにした。


 わたしが知らない裏ではとんでもないことが起こっていた。ゲームをプレイしていた時では知りえないことを。

読んでいただき、ありがとうございます。

この後続けると長くなりそうなので、短いですが区切ります。


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本当にありがとうございます!

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