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買い物イベント

「体育で使う靴下はこの店で購入ですね。最後に小物類は隣の店です」


「ありがとうございます」


 わたしは生粋のお嬢様なので自分で買いに出かけることはないのでここは春名主導で進めている。七宮家の車に乗って店を教えているが、編入初日からただの一般人の主人公が大金を持っているわけがないのでそのくらいしかやれる事がない。けれど。


「今日は手持ちが心許ないけれど、小物類は買って帰ろうと思います」


「では買いに行きましょうか。お嬢様はお車でお待ちください」


 お嬢様に気安く近寄るな、と副音声が聞こえた気がするが、春名の言う通りに車で待つことにする。2人は車から出て、店に入っていく。きっと今、春名との会話イベントが発生しているはず。自身が変なトリガーになる必要はない。


 しばらく待っていると2人が店から出てきた。主人公の手には紙袋2つ。それを見て笑みを浮かべ、上手くいったと思う。門矢がわたしの右側、春名が左側に乗り込んでくると、門矢は2つの紙袋のうち1つを差し出した。


「今日は本当にありがとう。今日のお礼によければ…」


 中身を見ると、シンプルだが可愛らしいポーチがあった。優樹菜の好みだなぁと思いながら手に取る。


「ありがとうございます。とても可愛らしいポーチですね、大切に使わせてもらいます」


 主人公に興味がないので、棒読みになっていないかとても不安だが、お礼の言葉を何とか述べることができた。その言葉を聞いて主人公はホッとした表情をしていた。


 主人公のこのプレゼントのチョイスは春名のものだ。今さっき店の中で春名に「今日のお礼がしたいけど…」と持ちかけたことによる結果だ。このおかげで優樹菜に危害を加える、または取り入ろうとする存在ではないことが伝わり、春名の警戒心はほぼなくなるので大切なイベントではある。これからの優樹菜攻略のためには必須のイベントである。隣の春名を見ると、ぴりぴりと張り詰めた気配はなくなっているように感じた。


 …ここまでは本当にゲーム通りだ。でもこれじゃダメだ。


 わたしは主人公の耳元にぐいっと体を乗り出した。主人公は驚いているようだが、気にしない。そして、こう囁いた。


「ですが、案内をしたのは春名ですよ?春名にもお礼をした方がよいのではないですか?」


「…あ」


 門矢がバッとわたしの方を見ると、しまったという顔をしていた。春名のことも気にしているようなので安心する。もしかして優樹菜の好感度を気にしたものかもしれないが。わたしはにこりと目で笑うと、すぐに春名の方を見た。


「春名、わたし、買いたい物があったのを忘れてました。買いに行ってもよろしくて?」


「お嬢様、それなら私が買ってきます。何をお求めになられてますか?」


「いいえ、自分の目で見て選びたいのです」


「ですが…」


「いいでしょう?少しの間だけですから」


「…かしこまりました」


 わたしはもう一度、門矢の方を見てぱちんとウィンクをした。機会をつくったのだから、ちゃんとしてね、と。門矢にそれが伝わったのか「俺も付いて行きます」と言って車から降りたので、わたしもその後に続いた。その後ろからは春名が付いて来ている。

 店に入るとシンプルだが使いやすそうな小物類が並んでいる。その辺に置いてあるペン類を見ながら、主人公に耳打ちする。「春名は仕事柄ペンを携帯しているからその辺りがいいかも」と。主人公はわたしを見て「ありがとう」と小声で言うと、ペンのコーナーをじっくりと見始めた。その間、わたし自身も適当にペンを選ぶ。


 …あー、この黒のやつでいいか。学校で使えるし。


 少し考えてから、目の前にある真っ黒で細身のボールペンを手に取った。すると隣の主人公も決めたようで、紺色と銀色でまとめられた細めのペンを選んでいた。作っているメーカーも良さげなので春名も気に入るだろう。

 門矢を誘ってレジに向かい、会計をする。その時に「渡すときはわたしが車から降りてからの方が渡しやすいですよ」と助言をしておく。


 これでさらに好感を持ってもらえるんじゃない?


 その後、わたしの予想通り少し機嫌の良さそうな笑みを浮かべた春名を見ることができた。すっごい予想通りで楽しい。眼福眼福。



キリがいいのでここで続きます。

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