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第72話:Sランクパーティ、脱獄を企てる③

 ◇


 こうした生活を続けること約二週間。


 ようやく監視体制が緩くなった頃だった。


 この日の昼休み——


「ゼネストの兄貴、調子はどうっすか?」


「ああ、快調だよ。もういつでも大丈夫だぜ」


「そうっすか。なら、もう頃合いっすね」


 二人は不敵な笑みを浮かべた。


 少ない言葉数かつはっきりとしないやりとりだが、お互いに何を指しているかは正確に理解できている。


 鉄格子はすでにいつでも取り外せる状態であり、ゼネスト以外も準備ができていた。


「今日は良い夜っすね。満月とか触りに行きたいっすねぇ」


「ああ、満月か。みんな見たいだろうな。看守の最後の見回り……その後なんかは落ち着いて見られるだろうよ」


 どこで看守が聞いているかわからない中、このように工夫して外に出た後の集合場所と時間を取り決めた。


「幸運を祈るっす。じゃあ、俺は他のやつらと話してくるんで……」


「ああ、頼んだぞ」


 ◇


 いつものように昼の作業が終わり、いつものように夕食を食べ、夜になった。


 看守は深夜二時ごろを最後に三時間ほど間隔を空けて再度やってくる。


 この間に抜け出してしまえば、発見を遅らせることができた。


 多数の独房が並ぶ中心は看守の見張り塔があるが、夜は視界が悪いため問題なくクリアできるだろう。


 コツコツコツコツ……。


 ゆっくりと、光源魔法で照らしながらやってくる看守の足音が鳴る。


 心臓をドクドクと鳴らしながら、ゼネストは看守が過ぎるのを待った。


「おい、八九九番」


 ……っ!


 房の前から看守に名前を呼ばれた。


 まさか、誰かがしくじって脱獄計画がバレたのだろうか……?


 さすがのゼネストでも焦ってしまう。


 だが、まだバレていたとしてもゼネスト自身は何もしていないのだから、シラを切り通せばどうにでもなる。


 そう判断した。


「へ、へい」


「今日は冷えるから、ちゃんと寝巻きを着て寝ろよ? いつもみたいに上半身裸で寝てると風邪ひくから気をつけろよ」


「りょ、了解っす……」


「うむ」


 看守が去った後、ゼネストは一気にふぅ……と息を吐いた。


 柄にもなく、かなり緊張してしまったゼネストだが、計画通り鉄格子を取り外し、外へ出た。


 壁伝いに降りて行き、満月の方角を目指す。


 既にゼネスト以外の全員が集合していた。


 無言だが、既に完璧に作戦は立てられている。あとは実行するのみだった。


 魔法師にせよ、剣士にせよ、強力な攻撃を放つには魔力が必要である。


 冒険者なども収容するこの監獄から囚人が逃れられないのは、独房内に魔力の使用を封じる魔道具が設置されていることが大きい。


 かといって独房にいない間は常に見張られ、おかしなことをしようとすれば集中砲火を食らってしまう。そのため手詰まりだったのだが、一度外に出てしまえば、もうこっちのものだった。


 パーティメンバーである魔法士クレイが、外と中を隔てる壁に魔法を放った。


 音を出さず、壁を燃やすかの如く穴が開いていく。


 『デスフラッグ』はSランクパーティ——ほどとまではいかないが、最低でもBランク程度の実力はある。


 Bランクパーティの魔法士にとって、壁を静かに壊すことくらいは雑作もないことだった。


 五人は一言も話さず、アイコンタクトだけでやりとりをする。


 ゼネストが先頭になり、最後尾はアルクという形で脱出をした。


 こうして、しばしの間『デスフラッグ』の脱走はバレぬまま、五人は夜の闇に消えていったのだった。

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